3月25日(水) 2009 ヤマザキナビスコカップ
広島 1 - 0 浦和 (19:02/広島ビ/10,275人)
得点者:27' 佐藤寿人(広島)
★ヤマザキナビスコカップ特集|チケット情報
----------
アディショナル・タイムは4分。広島サポーターにとってのその4分は、全く浦和に勝てなかった10年分の重みがあった。
92分。浦和は左サイドでファウルを奪い、FKを獲得する。放り込む。クリア。CKだ。ショートコーナーを狙う。しかし、青山敏弘がそのボールを奪い、前へと持ち出す。
浦和のチャンスは、これが最後となった。そして広島は、歓喜の時を迎える。
たかが、1勝。確かにそのとおり。浦和は代表選手を含め、今季のレギュラーが5人もいなかった。それも、事実だ。
しかし、広島にとって、そんなことは関係ない。1999年3月27日以来、10年ぶりとなる公式戦での浦和戦勝利。ただただ、その事実が重要なのだ。
もちろん、勝因は一つではない。佐藤寿人の美しいドライブシュートが決まったこと。72分、ポンテのシュートを佐藤昭大がはじき出した素晴らしいセーブも、もちろん一因だろう。だが、そういうプレーを生みだしたベースは、広島の守備面における修正だった。
鹿島戦完敗の後、森崎和幸が動き、選手個々と話し合って一つの方向性を確認する。それは、ボールを持った選手に対して「いつ、誰がプレスに行くのか」ということ。
鹿島戦はそれがあいまいになったため、ラインはズルズルと下がり、鹿島に試合を支配された。広島の特徴である「攻守にわたる連動性」も、ボールに対するプレスという「スイッチ」が入らなければ、表現することができない。そこを攻守の要である森崎和が中心となって明確化し、前日練習でしっかりと確認する。「気持ちの入ったいい練習ができた」と森崎和は語っていたが、その自信がそのまま試合へと現れた。
立ちあがり、いい形でボールを奪った青山敏弘がスルーパス。服部公太がボールを受け、槙野智章がフォローする。クロスが佐藤寿人へ。シュートまでには至らなかったが、一つのボールに何人も選手が絡み、DFも攻撃参加する「広島サッカー」のエッセンスが、この場面でシンクロしていた。
浦和は、17歳のアタッカー・原口元気のドリブルを武器に、広島ゴールへと迫る。しかし、青山や高柳一誠、柏木陽介らのプレスにひっかかり、中盤でうまくパスがつながらない。一方の広島は選手間の距離もよく、ダイレクトパスが小気味良くつながり、浦和の守備陣を翻弄する。12分、森脇良太からの縦パスを柏木→高柳とつないでCKを奪ったシーンは、その象徴だ。
ただ、広島の武器は、ショートパスでの展開だけではない。佐藤寿人という稀代の裏取り名人と、青山敏弘というストロング・キッカーの間で生まれるホットラインがそれだ。
27分、ボールを持った青山は、ルックアップするやいなや、裏のスペースに縦パス。そのボールの先に走るのは、紫の背番号11だ。それまで中盤におりる動きを繰り返していた佐藤寿の変わり身に、浦和DF陣は虚をつかれる。
バウンドしてはねたボールに、広島のエースは左足で合わせる。「ストライカーなら、誰もがイメージするはず」(佐藤寿)というドライブシュートはループ状の軌跡を描き、飛びつく浦和GK山岸範宏をあざ笑うかのように、逆サイドのネットへと沈み込んだ。
後半、浦和は同点を狙い、アクセルを踏む。しかし連動性に乏しく、個々の突破頼みの攻撃となり、集中した広島の守備を崩せない。やがて浦和のゾーンは間延びし、スペースを自由に広島に使われ、チャンスを次々と創られてしまった。
だが、そのチャンスを広島がゴールにねじ込めない。広島の逸機の度に、流れはゆっくりと浦和へと流れる。赤星貴文、西澤代志也といった途中出場の若者が運動量を発揮し、ポンテがアタッキングエリアで自由に振る舞うようになると、広島は厳しい局面を迎える。原口はさらに躍動感を発揮し、今季初先発の山田直輝も積極的なプレーで広島ゴールへと迫った。
広島は盛田剛平・李漢宰といった経験のある選手を投入し、逃げ切りを図る。圧力を受けても決して慌てず、全員で集中し、浦和の攻撃を跳ね返した。そして、1万人を超えた広島ビッグアーチのサポーターと共に、歓喜の時を迎えたのである。
敗れたとはいえ、浦和の若者たちは無限の可能性を見せつけた。特に原口元気の破壊力は抜群で、浦和のジョーカーとしての存在感は十分。フィンケ監督が手応えを語るのも、当然の出来だった。
広島もまた、自分たちのパスサッカーに対する自信を取り戻した。だが、まだ広島は「巧いチーム」ではあっても、相手に恐怖を与えるまでには至っていない。その最大の要因は、チャンスをゴールに結びつける確率の低さ。決定機をしっかりとモノにするしたたかさを、J1での闘いの中で身にまとう必要がある。
以上
2009.03.26 Reported by 中野和也
J’s GOALニュース
一覧へ【ヤマザキナビスコカップ 広島 vs 浦和】レポート:広島、対浦和戦10年ぶりの勝利! 敗れたとはいえ、赤い新星たちの躍動も見事。(09.03.26)















