6月21日（日） 2009 J2リーグ戦 第22節
湘南 3 - 2 札幌　（16:03／平塚／9,374人）
得点者：10' 中村祐也（湘南）、48' クライトン（札幌）、57' 西大伍（札幌）、83' 阿部吉朗（湘南）、87' 猪狩佑貴（湘南）
スカパー！再放送 Ch182 6/22（月）12:00〜（解説：三浦俊也、実況：加藤暁、リポーター：安田美香）
☆勝敗予想ゲーム
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「いろんなひとたちに自分のプレーを見て欲しい」開幕前からそう意気を込めていた湘南の、平塚の叩き上げによる決勝弾に、チームメイトとスタッフ、そして「SANNOスペシャルデー」に集った9,000を超える観衆が沸いた。87分、ほんの1分前にも同様のシーンを作っていた猪狩佑貴が、アジエルの絶妙なスルーパスに再び抜け出し、チームを勝利へと導いたのである。湘南ユース時代に監督として指導していた曹貴裁コーチも目を細めた初得点は、平塚出身選手のゴールとしてもJリーグ初だという。

この日の湘南は、幸先のいい試合運びをしていた。1タッチを織り交ぜつつ小気味よくパスを繋いだ先で、中村祐也が巧みに決めたのは10分のことである。チームトップに踊り出る中村の3戦連続弾は、チームにとって第18節岡山戦以来となる久々の先制ゴールだった。

一方、早々にビハインドを背負った札幌も黙ってはいない。ブラジルから戻ったばかりのクライトンが前で起点をつくり、チャンスを演出する。前線から始まる敵の守備が機能しビルドアップに手を焼く時間帯も見られたが、クライトンが下がってボールを運びだすと、キリノが際どいシュートを放ち、42分のコーナーキックではGK野澤洋輔の好守に遭うも趙晟桓が惜しいヘディングシュートを見舞いもした。

「リスクをかけて後半立ち上がりからいった」と石崎信弘監督が振り返った通り、ハーフタイムを挟んで3-5-2へシステムを移行すると、さっそくゲームが動いた。中山元気が投入され、ボランチからポジションを上げた宮澤裕樹と2トップを組み、トップ下にクライトンが座る。その矢先、宮澤がペナルティエリアで仕掛けてファウルを誘い、クライトンが冷静にPKを沈めて同点とした。さらに57分には、藤田征也からの右クロスをファーに走りこんだ西大伍がヘッドで豪快に叩き込み、札幌が瞬く間に逆転に成功する。「両サイドからのボールに対する守備は修正すべきところ」と反町康治監督をして言わしめた、課題を突きつけるゴールだった。

第13節栃木戦以来の逆転劇を果たした札幌は、再び4バックに戻す。逆に動いたのが反町監督である。69分の島村毅投入を機に、3-5-2へと変更した。「目には目を」とは指揮官曰く。そして厳しい展開を打破する呼び水となったのは、交代で入った阿部吉朗による同点ゴールだった。村松大輔のロングフィードを契機に、ゴール前で競り合い左足を鮮やかに振り抜いた。猪狩の決勝ゴールは、指揮官が思わずガッツポーズをとったこのわずか4分後に生まれている。こうして、「終了間際に失点してしまう悪い癖がまた出てしまった」と敵将が肩を落とした再逆転劇により、湘南が熱闘を制したのだった。

反町監督のこの日の試合総括のなかで、「やるべきことをやり」という一節があった。ベンチワークについてのくだりで使われた言葉だが、「やるべきことをやる」その姿勢は、日々の徹底ぶりを抜きには語れない。疲労の色が隠せない終盤の両者の攻防に、不意に湘南のトレーニングがシンクロする。フリーマンを置くフルコートの8対8は攻守の切り替え鋭く、ボールを奪えば攻撃に、失えば守備へと即座に転じなければならない。いかに肉体が疲弊していようとも、時間を待つことは許されない。なぜなら、いずれかがゴールを決めないかぎりは終わらないからだ。ゴールネットを揺らして初めて、指揮官の青い笛が鳴る。交代で入った選手が結果を出したことは偶然ではないと、言い切れるだけの日々のトレーニングの積み重ねに、勝ちきる理由の一端が見える。

坂本紘司の出場停止を受け、今季2度目のスタメンを掴んだ永田亮太の試合後の表情が印象深い。
「チームが勝つことを大前提に目指してやっているので、結果が出てよかったです。――ただ、個人的にも結果を求めていたので、悔しい。スタメンで出るのは簡単ではないから」
序盤から積極的に攻撃に絡み、終盤は自陣ゴール前で守備に奮闘した。しかし、フル出場で攻守に汗を流した、それだけでは満足に程遠い。永田の厳しい表情に、勝点50を積み重ねた湘南の真が映し出されていた。

以上

2009.06.22 Reported by 隈元大吾