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【J1:第14節 広島 vs 神戸】レポート:逆転、そして再逆転。サッカーの神が創りたまいしドラマ、広島で創出。(09.06.22)

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6月21日(日) 2009 J1リーグ戦 第14節
広島 4 - 3 神戸 (13:04/広島ビ/14,514人)
得点者:1' 服部公太(広島)、44' 槙野智章(広島)、46' 大久保嘉人(神戸)、50' 石櫃洋祐(神戸)、66' 茂木弘人(神戸)、84' 柏木陽介(広島)、85' 佐藤寿人(広島)
スカパー!再放送 Ch185 6/22(月)16:00〜(解説:沖原謙、実況:君崎滋、リポーター:掛本智子)
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 この日の広島ビッグアーチ劇場は、開始1分に生まれた服部公太のゴールによって、幕を開けた。

 思いがけない先制弾を浴び、神戸はペースを見失う。7分・11分・30分と迎えた広島の決定機は、神戸・榎本達也がビッグセーブで弾き返した。しかし44分、高萩洋次郎が見事なボールコントロールから、槙野智章の強烈なゴールが生まれる。一方で、神戸の攻撃は広島の落ち着いた守備にさばかれ、ほとんど決定機を生むことなかった。

 しかしこの前半戦は、後半に生まれる壮絶なドラマの第一幕に過ぎなかった。
 ハーフタイム、「サポーターは我々の走る姿を見に来ている」というカイオ・ジュニオール監督の檄を受け、神戸は立ち上がった。
 後半開始から左MFに起用されたルーキー楠瀬章仁が、得意のドリブルでミキッチに1対1を挑み、FKを奪った。この瞬間、第2幕が開幕した。
 石櫃洋祐のキックをミキッチが故意に手に当てて防いだと判断した西村雄一主審は、PKスポットを右手で指し示した。思いがけない事態に呆然とする広島の選手たち。しかし、下った判定は覆らない。そのPKを、2008年12月6日対柏戦以来のJリーグ復帰となった大久保嘉人が、落ち着いてゴールゲット。大久保、ガッツポーズで「行くぞ」という闘志をサポーターに示す。
 50分、石櫃洋祐が右サイドでボールをキープし、右足を振った。ボールは美しい放物線を描き、GK中林洋次の動きの裏をついて逆サイドのネットに吸い込まれた。
 同点。ガックリと肩を落とす広島。歓喜に沸き立つ神戸。コントラストは明瞭だ。しかし、運命の神様は、さらに広島に試練を与える。
 66分、楠瀬のサイドチェンジ。クリアしようとした盛田剛平は足を滑らせ、ボールは茂木の足下へ。神戸の新エースは落ち着いてゴールに流し込み、古巣広島を奈落の底に叩き込んだ。

 「正直、気持ちがダウンしてしまった」と、青山敏弘はこの瞬間を振り返る。2年前の6月23日、広島は後半に失速し、神戸に逆転負けを喫した。その悪夢、再演か。
 しかしこの時、ドラマは暗転から第3幕へと、神様はシナリオを進めた。第2幕がカイオ・ジュニオール監督の檄とマルセウ→楠瀬という交代によって演出されたとすれば、第3幕は広島サポーターの声援から始まった。「サポーターの声援がなかったら、逆転できなかった」という高萩の言葉が、それを証明する。
 大音量化した声援が選手たちの背中を押す中で、広島・ペトロヴィッチ監督は決断した。

 「2人で守り、8人で攻めるんだ」
 彼は高柳一誠・平繁龍一ら攻撃のタレントを次々と投入し、槙野智章を右ウイングにあげ、総攻撃の指令を発した。もちろんリスクはある。実際、81分にはカウンターから楠瀬に抜け出されかけた。しかし、中島浩司が冷静に対処し破綻を許さない。
 そしてクライマックスは突然、やってくる。
 84分、ストヤノフのロングパス。佐藤寿人が神戸DFの間にもぐり込む。北本久仁衛が必死に身体を寄せ、クリア。しかしそのボールは、柏木陽介の足下へ。
 左足を振る!榎本が反応!
 しかし、弾道は彼の左手をかすめて、ネットの中へ。
 ビッグアーチが、揺れた。広島サポーター、歓喜。
 しかし、佐藤寿人主将はすぐにボールを拾い上げ、紫の10番・柏木も自陣に向かって走った。その疾走こそ、逆転への想いを込めたパフォーマンスだった。
 神戸もショックを振り払い、攻め込む。しかし、ボールをキープしようとした丹羽竜平に平繁が襲いかかった。身体をぶつけてボールを奪い、佐藤寿にパス。選手の動きは、一気に神戸ゴールへ。
 そんな中、高萩はあえて足を止め、足下にボールを要求する。そのことによって、彼自身が使える有効なスペースが広がった。
 高萩から槙野へ。槙野、ドリブル。DFが対処する。
 その瞬間、「シュートしか考えていなかった」という高萩はスピードアップし、槙野からのパスに右足を合わせる。そこに反応したのは、広島が誇るストライカーだ。佐藤寿はわずかに位置をずらし、シュートコースに入って、ボールをヒールに当てた。コースが変ったボールはDFの足に当たり、ネットに吸い込まれた。逆転だ!
 試合終了の瞬間、高萩は大きく両手を上げて歓喜を爆発させ、ストヤノフは膝をつき芝生に顔を埋めた。一方の神戸・宮本恒靖主将は呆然と立ち尽くし、ベンチの大久保は虚空を見つめて微動だにしなかった。

 様々な分析も可能だろうが、この熱戦の前にはどんな言葉も空しい。81%という湿度の中で最後まで諦めることなく走り、アイディアを振り絞り、力の限り闘った広島・神戸両チームの選手たちに感謝の拍手を贈って、このレポートのエピローグとしたい。

以上

2009.06.22 Reported by 中野和也
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