6月28日（日）J2 第24節 福岡 vs 東京Ｖ（13:00KICK OFF/レベスタ）
スカパー！生中継 Ch184 12:50〜（解説：乾眞寛、実況：川上政行、リポーター：森田みき）
☆勝敗予想ゲーム
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福岡は厳しい状況に立たされている。第21節の仙台戦で約１か月ぶりのホームでの勝利を挙げながら、続く愛媛、甲府との対戦では、戦う以前の問題と言われても仕方のない内容で完敗。チームとしての方向性が見えないことに加え、個人戦術の部分で致命的なミスを繰り返し、組織としてのまとまりを欠いてしまっている。チームを劇的に変化させる特効薬はなく、トンネルの出口は見えていない。

しかし、下を向いているわけにはいかない。どんな状況に追い込まれようとも全力を尽くして戦うのが、プロとして勝負の世界に身を置く者のあるべき姿。そして、福岡に関わるすべての人たちの思いを背負って戦う者の務めだ。最後まであきらめない。決してへこたれない。ただひたすらにゴールを求める。そんな姿を見せてくれることを、サポーターは望んでいる。

そのために必要なものは魂だと大久保哲哉は話す。
「大切なのは技術云々じゃなく、戦えるか、戦えないか。それを試合の中で身をもって、みんなに示したい。どんな状況であれ、最後まで体を張る、スライディングする、どこまでも走る。それで状況が変わるかどうかはわからないが、それがサッカーをやる上での自分の魂。戦えなかったら生き残っていけない。戦える選手が１人でも増えれば結果は変わってくる。最初から小さくなるんじゃなく、自信を失わずに戦えとみんなに言いたい」
いま福岡に求められているのは、上手くゲームを進めることではない。仲間のミスをピッチの上で叱責することでもない。泥臭くても、恰好が悪くても構わない。ただ勝利だけを求めて戦う姿勢だ。

そして迎える相手は東京Ｖ。波に乗り切れず、一時は13位まで順位を落としていたが、ここへ来て、本来の力を発揮しつつある。最近５試合は負けがないが、特筆すべきは、J1昇格争いをリードする、湘南、Ｃ大阪、仙台に対し、１勝２分とまったく互角の試合をしていることだ。その要因は、服部年宏、平本一樹、レアンドロ、河野広貴、土屋征夫ら、怪我で戦列を離れていた選手たちが復帰してきたことにある。第１クールの対戦ではスコアレスドローで勝点１ずつを分け合ったが、その時とは全く違うチーム。前回の内容は参考にすらならない。

４−４−２のフォーメーションから、個々の高い能力をベースに、ゆったりとしたリズムでパスをつなぎながら組み立てるのは東京Ｖ伝統のスタイル。機を見て仕掛けるドリブルが攻撃にアクセントを加えて相手の守備陣を切り裂いていく。かと思えば、虎視眈々とゴールを狙う大黒将志が、ロングボールを受けてスペースへ飛び出していく。その攻撃は多彩で、前節の湘南との戦いでは90分間に渡ってボールを支配して勝利を挙げている。

得点順位１位の大黒と平本の２トップは脅威。中盤では柴崎晃誠が攻撃の起点を作り、チャンスと見れば２列目から飛び出してゴールを陥れる。そして、土屋が復帰した最終ラインは簡単には崩れない。「いま、J2で最も安定感のあるチーム」。篠田監督も、その実力を認める。

互いのチーム状況からみれば、おそらくボールを握って試合を進めるのは東京Ｖ。楔のボールを打ち込み、ドリブルを仕掛けながら福岡の様子を窺い、守備のほころびを見つけて一気に仕掛けてくるはずだ。そんな東京Ｖに対し、福岡は辛抱強く戦いたい。ボールホルダーに対して喰いつき過ぎたら相手の思う壺。ジリジリする展開にも、細かくポジションを動かしながら粘り強く守ることが勝利への必要条件になる。

そして、守から攻への切り替えをどれだけ早く出来るかが勝利への鍵を握る。必要以上に手間をかけずにシンプルにボールを前に運ぶこと。福岡には、高さと強さのある大久保、一瞬の動きでゴールを狙う高橋泰、スピードを活かした裏への飛び出しが持ち味の田中佑昌がいる。ワンチャンスを得点に結び付けられるだけの力はある。

そして何よりも大事なのは、自分たちのやるべきことを、１人、１人が責任を持って実行することだ。「東京Ｖの特長は分かっているし、相手に対応して戦うことは必要。けれど、今は相手よりも自分たちのことの方が大きい。どういうサッカーをしたいのかということに力を注ぐだけ。どう攻めて、どう守るかをしっかりとやるだけ」（篠田監督）。聖地・レベルファイブスタジアムで、自分たちの思いをどこまで表現できるか。そこに注目したい。

以上

2009.06.27 Reported by 中倉一志