7月26日(日) 2009 J2リーグ戦 第30節
横浜FC 3 - 1 東京V (18:03/ニッパ球/5,051人)
得点者:23' 小野智吉(横浜FC)、27' 八角剛史(横浜FC)、38' 安孝錬(横浜FC)、89' 大黒将志(東京V)
スカパー!再放送 Ch183 7/27(月)14:00〜(解説:前田秀樹、実況:山下末則、リポーター:高木聖佳)
☆勝敗予想ゲーム | 皆の投稿で作るスタジアム情報
----------
この試合には、90分間とは思えないぐらいあまりにも多くのドラマが詰め込まれており、どれを取り上げるべきか困るぐらいだ。しかし、横浜FCのサポーターに後世まで語り継がれるであろう、そんな記憶に残る一戦だったことは間違いない。ここでは、「極限状態がもたらした緊張感と一体感」をキーワードにレポートを進めたい。
試合は予想通り、レアンドロ、大黒将志を中心した東京Vの圧力を、横浜FCが受け止める形でスタートする。そして4分、オフサイドぎりぎりでが抜け出した平本のシュートをGK大久保択生がストップすると、一瞬でも気を抜けばやられるという緊張感が、早くもスタジアムに充満する。横浜FCは、第1クールの対戦での反省から、セーフティーなプレーを選択しながら、徐々に相手の隙をうかがい始める。この試合の東京Vには2つの隙があった。1つはレアンドロの裏のスペース、もう1つは土屋征夫を怪我で欠くことの影響。「レアンドロには、前に残る癖があり、その裏を小野(智吉)さんと狙っていた」(田中輝和)と言うように、このスペースで起点を作ることで、チャンスを作り始める。
そして、土屋不在の影響で、横浜FCのカウンターへの対応がルーズになると、まさにその形で横浜FCの先制点が生まれる。23分、東京Vのセットプレーのカウンターから左に張っていた難波宏明にボールが出ると、その難波からのクロスを小野がフリーで決めて待望の先制点を挙げる。さらに27分、ロングボールに反応した難波に飯田真樹がファール。そのファールで得た小野のFKに八角剛史が飛び込み追加点。38分には八角がファールを受けて得たFKを小野が再び蹴ると、安孝錬が飛び込み3点目。緊張感を切らさないプレーと、戻ってきた小野智吉の相乗効果が3得点に結実。一方、東京Vから見れば、隙を修正できない間に3失点をしてしまう悪夢の前半となった。
しかし、ここまで横浜FCを獅子奮迅の活躍で支えてきた八角を、後半頭から怪我で交代させなければいけない状況に陥ると、試合の模様は一変する。「相手が3点取ったのだから、我々は4点取れる」と高木琢也監督に檄を飛ばされた東京Vは、持ち前のポゼッションを徐々に発揮して中盤を制圧。攻める東京Vに、カウンターを仕掛ける横浜FCの展開となる。GK大久保の冷静なセービングで耐えるものの、57分には吉田正樹、66分には安を怪我で交代させないといけない非常事態に陥る。しかし、この非常状態がチームの一体感だけでなく、スタジアム全体の一体感も増幅させはじめる。
そして77分、この試合最大のアクシデントが発生する。スルーパスに反応した大黒と大久保が衝突。すでに3枚の交代をしていた横浜FCは、フィールドプレーヤーをキーパーに回す準備をするが、スタジアム全体から自然に湧き起こった「タクオコール」に後押しされるように、一度は出された×マークが○に。満足な動きができない大久保が、それでもゴールに立つ鬼気迫る執念を見せると、この極限状態がチームに最後の力を与える。現実には、大久保は全く右足が使い物にならず、使い続けるのには無理のある状態だった。だが、それをカバーしようとする横浜FCのフィールドプレーヤーの気迫、そして一体となったスタジアムの後押しが、ロスタイムを含めた残り10分以上の横浜FCを支え、自陣ゴール前にボールを運ばせないプレーを続ける。ロスタイムに大黒にゴールを許してしまうが、3-1でゲームを締めた瞬間、怪我の大久保だけでなく、多くの選手がフィールドに倒れ込むほどの死闘を演じてみせた。
横浜FCにとっては、3人の怪我人を出しての勝利は、あまりにも大きな代償を払ったものだった。しかし、この極限状態を乗り越えたチーム、クラブ、そしてサポーターは、大きな階段を登ったと言えるのではないだろうか。「後半のああいうスタジアムの雰囲気の中で、ピッチに立っていることは嬉しかった」と西田剛が語るように、これぞホームスタジアムと呼べる状態を作り出せたことは、クラブの歴史に残ることは間違いない。試合後、救急車に乗せられる大久保に数多くのサポーターからの声援と拍手が送られた。残りの21試合、神のように立ち続けた大久保のために、この死闘を胸に刻んで戦い続ける必要がある。
一方の東京Vは、得点に直結するような局面でのマークの甘さを見せての敗戦となった。個の能力の差もあるが、土屋が不在になることで生じるポジションのバランスの乱れを修正できなかったことが、大きな課題として残された。昇格争いに向けて、怪我や出場停止も出てくる中で、土屋だけでなくレギュラーの選手が不在の場合の戦い方、チームとしての層の厚さが問われてくることになる。過去、横浜FCでのJ1昇格を果たした高木監督の経験と手腕に期待が掛かる。
ドラマは1回で終わらせてはいけない。この日スタジアムに駆けつけた5,051人がより多くのサポーターを呼び込めるようなドラマを、アクシデントがなくとも見せ続けられるようになることを願いたい。
以上
2009.07.27 Reported by 松尾真一郎
J’s GOALニュース
一覧へ【J2:第30節 横浜FC vs 東京V】レポート:極限状態がもたらした緊張感と一体感。最下位横浜FCが好調東京Vを相手に、上昇の狼煙となるドラマチックな勝利を果たす。(09.07.27)















