8月19日(水) 2009 J1リーグ戦 第22節
広島 1 - 0 大分 (19:04/広島ビ/10,951人)
得点者:22' 高柳一誠(広島)
スカパー!再放送 Ch185 8/20(木)16:30〜(解説:沖原謙、実況:君崎滋、リポーター:掛本智子)
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「オフサイドか?」
大分のリベロ・森重真人は、そう思った。22分、広島先制のシーンである。
ここまでボールを支配していたのは、パスサッカーには一日の長がある広島だった。ただ、「選手たちは緊張していたようだ」と大分・ポポヴィッチ監督が語ったように、大分側のミスが目立ったことも事実。彼らが目指す「美しいパスサッカー」は、まだまだ発展途上。「監督が代わって数週間でチーム状態を変えるのは難しい。サッカーに魔法はない」と広島・ペトロヴィッチ監督は指摘する。まして、大分の目指すサッカーは広島と同質。「そう簡単にモノにできるサッカーじゃない」という自負もあるだろう。
その流れの中でつかんだビッグチャンス。きっかけは、ストヤノフのドリブルだった。
広島の選手たちは、このスーパーリベロがボールを持つと、次々と運動を開始する。中盤の深い位置にいた青山敏弘が、一気に前に飛び出す。服部公太はFWのラインで上下動を繰り返し、大分の守備ラインに圧力をかける。逆に高柳一誠はあえて中央に留まり、そこに相手を引きつける。様々な場所で様々な選手がアイディアを次々と繰り出すことにより守備陣が振り回されてしまい、結果としてギャップが生じ、スペースができる。
ストヤノフがパスを出そうと目をぎらつかせたその瞬間、一度前線まで飛び出した青山が、一気に引いてパスを受けようとする。クサビを警戒したDF深谷友基がその青山の動きに引きつけられて前に出た。一方、森重と上本大海は、ストライカー・佐藤寿人を挟み込むようにしてマーク。この瞬間、最終ラインにギャップが生まれた。
ストヤノフは、青山の動きによって生まれたラインのギャップを見逃さず、右足アウトサイドで美しいループパスをおくる。ほぼ寸分の狂いもなく、ラインの裏をついた服部の前のスペースへ。森重が「オフサイドか」と思ったシーンは、この瞬間である。
確かに、微妙。ライブで見ていた時は森重と服部のポジションは並んでいるように見えたが、どちらともとれるタイミングだ。ただ大分のラインに統率がとれておらず、「バラバラになってしまった」(森重)ことが「オンサイド」という判定につながったのかもしれない。
服部のクロスは、深谷が青山に食いついた後のスペースに向かって放たれた。そこに走り込んだのが高柳。守備に人数を割いていた大分だが、高柳の飛び出しについてくる選手はいない。
やや浮き球になったボールに向かって、高柳が右足を必死に伸ばす。ハードヒットしなかったボールは、西川周作の脇の下をぬけ、カバーした森重の足の下を通り、ポストに当たってゴールの中に転がった。
このシーンが、この試合の全てだったと言っていい。
もちろん、広島勝利の原動力は「チームとしていい守備ができている」(槙野)こと。例えば「ああいうシーンを決めないと」と大分・ポポヴィッチ監督が嘆いた35分の高松大樹のヘッドは、一度マークを外された森脇良太が諦めずに戻り、シュートを足でブロックした。このシーンをはじめ、広島の選手たちが最後の最後に身体を張って守ったことが勝利につながったことは確かだ。
一方、攻撃面ではシュート7本。決定機の数を含め、広島らしさは少なかったかもしれない。しかし、この先制点のシーンでは、1つのボールに何人もの選手が絡み、相手の人数が足りていても、様々な発想を発揮することによって相手のバランスを崩して最後は数的優位をつくりあげる。高柳のゴールシーン、服部がボールを持った瞬間は広島3対大分2。そこに青山までが飛び込んできていた。そんな「THAT’S HIROSHIMA」という攻撃が炸裂し、広島は勝利を呼び込んだのである。
後半のボール支配率は、明確に大分。しかし、今の大分はまだパスをつなぐことに終始し、アイディアを繰り出し、ボールのないところでひたすら走って、危険なゾーンで数的優位を創りだすまでには至らない。この試合も、ボールポゼッションの割には、決定機をほとんど生み出すことができなかった。パスをつなぐこと、ボールを持つことの先にあるものを手にするまで、もう少しの時間を必要とするだろう。
広島は5試合連続負けなし、4試合連続完封を記録して6位に浮上。2年前の勝点を残り12試合の時点で上回り、AFCチャンピオンズリーグ出場権獲得圏内の3位まで勝点2差の6位に浮上した。
しかし、ペトロヴィッチ監督は慎重さを崩さない。「上を目指せる位置に来たのでは」という記者の質問に対し「それは、浦和戦の後でコメントしたい」と答えた。次節、青山が出場停止。疲労と怪我が蔓延している状況下もあり、まだまだ楽観視できないというのが、指揮官の偽らざる心境のようだ。
以上
2009.08.20 Reported by 中野和也















