7月27日、ユナイテッドパークでFW巻誠一郎の移籍会見が行われた。この時期の巻の放出が、戦力など千葉のさまざまな面において適切なのか。この移籍に関して、フロントをはじめとする千葉スタッフの巻への対応が的確だったのか。そういったことへの個人的な意見を語るには、このコーナーはふさわしくないように思われるので差し控える。
会見で語られた巻の言葉は千葉への愛にあふれていて、筆者の心に強く響き、胸に深く沁みた。巻がここで千葉を去るのは残念で、寂しく、悲しい思いでいっぱいになった。
過去にはよく大学サッカーを取材していた筆者が初めて巻と1対1で話をしたのは、彼が大学3年生の時のユニバーシアード北京大会だったと思う。その頃から巻の話し方は立て板に水という感じではなかったし、美辞麗句で発言を飾るようなタイプではなかった。そのせいなのか、当時の巻は自分の話し方に若干のコンプレックスがあったようだ。巻が大学4年生の時に某サッカー雑誌の取材で駒澤大学のチームメイトFW深井正樹と対談してもらった際、巻は深井の発言を聞いて「そうか。そういうふうに言えばいいんだ」と言っていた。2008年1月に千葉のオフィシャルプログラム『UNITED』用のインタビュー取材をした際ですら、とても記事を書きやすい素敵な言葉が多く語られていたにもかかわらず、巻は「俺、あんまりいいことを言っていないけど、赤沼さんとは付き合いが長いから、うまく(原稿を)書いてくれるよね」と言っていたほどだ。
『真っ直ぐで頑固』。それが取材を通しての巻の印象だ。時として報道陣は「こういう記事を書きたい」「こういう報道をしたい」という考えから、取材対象者に「こういうふうに発言してほしい」方向に誘導するような質問をする。そんな時、特に若手選手はそれにノッてしまって相手に迎合し、勢いで本音とは少し違うことを話したり、大げさに話したりしてしまうことがある。だが、巻は違った。朴訥(ぼくとつ)な感じの話し方ながらも、その場の雰囲気に左右されず自分の考えを素直に話すから、彼の想いはいつもストレートに伝わってきた。
千葉の主力としてメディアに登場する機会が多くなったことで話し方が洗練され、言葉を選ぶようになっても、巻は本音以外の発言はしない選手だった。真っ直ぐで正直すぎるせいなのか、一時期は報道陣に不信感を抱いているかのように、1対1の状況だと長く話をするのに多くの取材陣に囲まれると言葉少なになったこともあった。筆者にしても、巻の取材対応がチームの中心選手としては不適切だと感じたときに思わず大人げない態度で注意し、巻との仲が険悪になった時期もあった。正直すぎるくらい正直な選手なのだ。
今回の会見でも、千葉の対応に関する話では非常に気を使いながらも、巻は自分の想いを可能な限り率直に伝えていたように思う。「今回の移籍で、もう一度千葉に帰ってこられるチャンスをいただいたと思う」「また、このクラブでプレーできることを望みますし、戻ってこられるように頑張りたい」という言葉は、よくあるリップサービスではなく、心の底からの願いだろう。現時点の千葉のフロントの言動から、巻の千葉復帰の現実味は残念ながら今は薄いが、「もう二度と千葉の選手としてプレーする姿は見られないかもしれない」と思われたDF茶野隆行、MFの村井慎二、佐藤勇人、FW林丈統が、今シーズン戻ってきた。巻が再び千葉の黄色のユニホームを着てプレーする日がくることを祈っている。
7月31日のJ2リーグ戦第20節千葉vs大分の試合後、巻が来場者に挨拶するセレモニーが行われる。巻はどんな言葉で自分の想いを真っ直ぐに語るのだろうか。
以上
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2010.07.30 Reported by 赤沼圭子
J’s GOALニュース
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会見に集まった報道陣を見渡しながら、質疑応答では質問者の顔をしっかりと見ながら、落ち着いた口調で話していた巻誠一郎。
質問が千葉サポーターのことに及ぶと、泣くまいとこらえながらも涙が浮かんできた。質問に答え終わると、手で目元の涙をぬぐっていた。
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