記者席に座っていると、いろいろな人や場面に出会う。甲府のホームスタジアム・小瀬の記者席はメインスタンドの右側だけだったが06年にJ1に昇格したときに左側にも増設された。J2に戻ってからは右側が記者席、左側が甲府のベンチ外の選手、強化部関係者、アウェイチーム関係者、代理人ら記者以外の関係者が座る。しかし、なかにはよく知らないのか頓着しないか、その両方なのか記者席に座る人がたまにいる。そういうときはおもしろそうだから近くに座って横目で観察することもある。高級そうなスーツにD&G(ドルチェ&ガッパーナ)マークが入った眼鏡をかけていた人がいたから観察すると、選手の代理人(日系ブラジル人)だった。もちろん話しかけたりはしないが、バッチリ決めているところが妙におもしろかった。浦和や鹿島のようなビッグクラブだと、バッチリ決めた人が多いんだろうなぁ。まぁ、どっかのライターみたいにみすぼらしい格好をした代理人の世話になろうと思う選手なんかいないだろうから、見た目は大事なんだろう。
記者席には試合中ずっと「ぶつぶつ」言っている人もいる。何か不満があるのではなく、若手のアナウンサーが実況の練習をしている姿。何年か前、新人の女性アナウンサーが先輩の男性アナウンサーの隣で実況の練習をしているとき、「○○さんがドリブルで〜」と「さん」付けで実況すると、すかさず「『さん』はいらねぇ!」と当然の指摘をされていたのが何故か印象に残っている。
最近、地元放送局のある男性アナウンサーがICレコーダーをマイクのようにして練習していたから、「録音して、あとで聞くん? すごいね」と言うと、「そうなんです。聞かないとわからないですから。僕(が実況の練習していることが)、うるさくないですか?」と気を遣う優等生の答え。さすが東京学院大学卒業(本当は東京大学)と感心した。全然うるさくないし、逆におもしろい。でも、5分くらいすると録音するのを止めているから理由を聞くと「ICレコーダーの電池がなくなりました…」と苦笑い。隣の先輩アナウンサーが、「ツメが甘いんですよ、ツメが」と突っ込んでいた。忙しくて電池の残量まで気にする余裕がなかったのだろう。
その新人(2年目)アナウンサーが先日、ラジオ(AM)でJリーグ実況デビューを果たした。そのことを知らなかったのでAMラジオを用意しておらず聴けなかったが、彼の先輩アナウンサーとラジオのディレクターが後ろの席に座っていたので雰囲気が伝わってきた。彼らはイヤホンでラジオを聴きながら試合を観ていたので、「今のテンポだと競馬中継みたいに聞こえる」、「どの場所でファウルがあったのかを伝えないと、ピッチのイメージが伝わってこない」、「(状況説明を解説の)林健太郎さんにだいぶん助けてもらっている」などと、後輩に伝える課題を言い合っているのが聞こえてきた。
彼らのアドバイスを聞いているだけでアナウンサー志望の僕も実況ができそうな気分になった。試合後に先輩アナウンサーが本人に感想を聞いたら、「(緊張で)何にも覚えていません」と言ったそうだ。その先輩いわく、「最初はそんなものです。僕は今でも完全に満足できる実況ができない。『あのことを言えばよかった』、『違う表現を使えばよかった』って思う箇所は必ずある」ということだ。個人的に、勝手に、若手の彼は某局の将来のアナウンス部長だと思っているので、彼の2回目の実況があるときは必ずAMラジオ(テレビ中継になるかもしれないが…)を用意してこの先、適切に茶化せるように準備しようと思った。
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2010.08.18 Reported by 松尾潤













