11月14日（日） 2010 J1リーグ戦 第30節
清水 5 - 0 湘南　（14:04／アウスタ／16,204人）
得点者：57' ヨンセン（清水）、45'+13 小野伸二（清水）、64' 藤本淳吾（清水）、82' 岡崎慎司（清水）、88' 岡崎慎司（清水）
スカパー！再放送 Ch180 11/15（月）深03:00〜
試合速報一覧 | クラブサポーター対抗totoリーグ
----------
試合を終えて、J2降格（※）が決まった湘南の選手たちが重い足取りでサポーターに一礼した時、タイムアップの瞬間まで熱い声援を続けていた湘南サポーターは、呆然と選手たちを見つめるだけで、ほぼノーリアクション。チームへの抗議の意味でわざと無反応にする例はあるが、それとは明らかに違う。選手たちの戦いぶりや試合内容を見るとブーイングもできないが、逆に励ます言葉も見つからない。誰もが感情をどう表現していいのかわからず、長い時間その場に立ちつくしていた。
長年Ｊリーグを見てきた中でも、そんな光景を目にするのは初めてのこと。担当するチームの悲劇ではないが、降格の瞬間を目の当たりにすると、やはりせつなさに胸を締め付けられる。

試合のほうは、ちょっとした歯車のズレによって力の差が強調され、清水の大勝となったが、前半はどちらかといえば湘南のペースだった。立ち上がりから湘南の選手たちは気持ちの入ったアグレッシブな動きを見せ、球際でも激しくボールを奪いにいく。清水はそのプレッシャーをかわしきることができず、ミスも目立ってなかなかリズムを作ることができなかった。ボールポゼッションでは清水が上回ったが、なかなか決定機を作ることはできず、逆に湘南の素早いカウンターやセットプレーで、ヒヤリとさせられる場面を何度か作られていた。
そんな中で、降格劇とは別の初めて見る事態が発生する。19分の湘南の左CKで、エメルソンが右足で蹴ったボールが、ニアポストを巻いてゴールに向かう。ここはGK西部洋平が何とか弾き出したが、その勢いでゴールネットに突っ込んだため、西部の体重に引っ張られてネットを支える支柱が折れてしまったのだ。この前代未聞のアクシデントに応急処置を施すために、試合は約12分間中断することになった。
これに救われたのは清水のほうで、中断している間に監督や各選手が話し合って戦い方の修正を図り、再開後は「無理なパスが少しずつ減って、リズムが出てきた」（長谷川監督）と、徐々に流れを取り戻していった。
アディショナルタイムが12分と表示されたのも初めて見ることだったが、それも残りわずかとなった前半58分（45分+13）、清水がついに均衡を破った。ボールを動かして湘南陣内に押し込む中、藤本淳吾の浮き球のパスで小野伸二が右の裏に飛び出し、絶妙なファーストタッチから右足を一閃。強烈なシュートでGK都築龍太の肩口を抜き、豪快にゴールネットを揺らせた。清水にとっては、非常に大きな価値のある先制点であると同時に、これまでのモヤモヤを吹き飛ばすような、本当に胸のすく鮮やかな小野の一撃だった。

これにより、後半は清水が立ち上がりから自分たちのリズムを作り、ボールをよりスムーズに動かして主導権を握っていく。そして後半12分には、左右に大きく揺さぶる攻撃からヨンセンが左足で技ありのシュートを決めて、良い時間帯に2点目を奪うことに成功。さらに18分には、微妙な判定ながら岡崎慎司がPKを獲得し、いつものように藤本が落ち着き払ってPKを決めて3点目（19分）。
これで試合の趨勢は決したが、湘南も捨て身で攻めて何度か惜しい場面を作った。だが、シュートが枠に行かなかったり、シュートを打つ積極性を欠いたり、GK西部の好セーブに阻まれたりで、どうしてもゴールネットを揺らせない。
逆に清水のほうは、湘南が前がかりになって中盤にスペースができたところをついて、エース岡崎が2点を追加（後半37分と43分）。どちらも岡崎の良さがよく表われ、5点目は崩しの形も非常に美しかった。
そして4分のアディショナルタイムでも、最後の力を振り絞って戦う湘南は一矢報いることができず、5-0のままタイムアップ。その瞬間、湘南のJ2降格が決まった。

ただ、ホームで4試合ぶりの花火を上げた清水のほうも、大勝に浮かれる雰囲気はない。湘南のサポーターに配慮して“勝ちロコ”（勝利のダンス）が行なわれなかったこともあるが、前半の内容から見ても、これでチームが勢いづいたとは言い切れない。3日後の横浜FMとの天皇杯4回戦も、絶対に勝たなければいけないゲーム。それに向けて、選手たちもすぐに気持ちを引き締め直していた。

※文中で「降格」「昇格」と表記していますが、正式な決定はJリーグ理事会で行われます。

以上

2010.11.15 Reported by 前島芳雄