11月23日（火） 2010 J2リーグ戦 第36節
北九州 0 - 1 鳥栖　（14:33／本城／5,792人）
得点者：14' 豊田陽平（鳥栖）
スカパー！再放送 Ch186 11/25（木）後06:30〜
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シュート数に得点が比例しないのがサッカー。ポゼッションにもＦＫにも得点は比例しない。
当たり前のことだが、シュートを放たなければ、得点は生まれない。得点が失点を上回っていれば勝利となるのがサッカー。当たり前のことだが、得点を取るためにプレーをし、得点を奪われないためにもプレーをする。ゴールを奪うのはプレーヤーの本能であり、奪われないプレーも本能である。その本能こそが、１個のボールに賭ける想いであり、勝利に対する執念でもある。

今節の北九州市立本城陸上競技場は、さまざまな想いが入ったゲームだった。
『バトル オブ 九州』の試合でもあり、北九州のホーム最終戦でもあり、与那城ジョージ監督（北九州）の退任が発表されてホームゲームでの勇姿を見る最後の試合でもあった。北九州の選手たちだけでなく、ホームスタジアムに集まった多くのサポーターたちも、どうしても勝ちたい試合だったに違いない。
「ジョージさん（与那城監督）のためにも、どうしても勝ちたかった試合だった」とＤＦ長野聡は、選手の言葉を代弁した。それだけ、想いが詰まった試合だったが、前半から鳥栖がボールを動かし主導権を握った。

前半１４分、左サイドのＭＦ柳澤隼からボールを受けたＤＦ磯崎敬太が奥深い位置からクロスをあげた。「中にトヨ（豊田）が構えていた」のが磯崎には見えていた。ここ数試合、積極的な攻撃参加をしていた磯崎のプレーが得点につながった。「得点に絡みたいし、絡めるプレーはできていると思う。今の鳥栖に求められていることはわかっているから、早く結果を出したい」と、練習中から口にしていたコメントを実践できた。
松本育夫監督も、「年齢的にも円熟味を帯びてきているし、彼のプレーに新しいモノが出てきた」とその成長を試合後に認めていた。今節の磯崎は、文字通り攻守に渡る活躍で、決勝点をアシストしただけでなく、最後までその１点を守り通した。

北九州のＤＦ長野は、「いい試合ができているのに、勝てなかったこと悔しい」と試合を振り返った。それほど、この試合に北九州の選手たちの想いは入っていた。キックオフ前から始まったサポーターたちのチャントも終了のホイッスルがなるまで途絶えることが無かった。サポーターもこの試合に多くの想いを込めていた。
５４分にＤＦ裏に抜け出してＧＫと１対１になったＭＦ多田高行のシュートが決まっていれば、勢いは完全に北九州のものになっていたかもしれない。後半の北九州の猛攻は、様々な想いが入った攻撃だった。

ロスタイム３分を経過し、試合終了のホイッスルが奥谷彰男主審によって告げられた。
鳥栖のサポーターたちは、試合に勝ったことに喜び、豊田陽平の４試合連続ゴールを称えた。北九州のサポーターたちは、リーグ加盟１年目の苦労を賞賛し、与那城監督に慰労の拍手を送っていた。目に涙を浮かべるサポーターたちも多かった。試合終了後に与那城監督を胴上げした選手たちの笑顔にはどこと無く寂しさも漂っていた。
スタジアムに駆けつけた５７９２人のサポーターたちは、その光景を語り継ぐに違いない。そして、北九州の今季のホーム戦での戦いは終わったが、北九州と鳥栖との新たな歴史を創造したことは、双方のサポーターの記憶に留められるだろう。

鳥栖の歴史に中には、最少勝利数などの苦い思い出もあるが、それは過去のことでそこを励みと新しい歴史を作っている最中である。今季新加盟を果たした北九州も歴史を想像している最中である。ともにＪリーグを盛り上げ、更なる上を目指して戦っていって欲しい。今節の北九州対鳥栖の一戦は、サッカーの持つ魅力に、様々な想いというエッセンスが加わった実に味のある試合だった。
公式記録には表れない記録は、サポーターが胸にとどめて後世に伝承して欲しい。
ゴールやアシスト以外にもプレーは行われているわけで、９０分間の中にどこを選手は全力で戦っている。それだけ観る人の記憶にも残っているはずである。
サッカーは、選手のひたむきなプレーの数だけ、ドラマが生まれているスポーツである。

以上

2010.11.24 Reported by サカクラゲン