5月21日(土) 2011 J2リーグ戦 第13節
岡山 1 - 0 横浜FC (17:03/カンスタ/9,374人)
得点者:69' チアゴ(岡山)
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この日のカンスタの大歓声は、09年8月に逆転勝利した東京V戦の時よりも、10年4月に逆転勝利した千葉戦の時よりも、もっと強い熱源から湧き起こっているような気がした。それはチームが一歩ずつ成長する姿を認める観衆の声だ。チームが地に足をつけ、前を向いて掴み取った勝利をよろこぶ声だ。
横浜FCは、岸野靖之監督が「(岡山は)シャドーがサイドバックを見る役割になっているし、中盤は最終ラインまで引いて5−2−3の形になるので、グラウンドを広く使ってサイドで数的優位をつくる、サイドチェンジを繰り返したかった」と話すとおり、ワイドと中の選手が絡んでボールを回し、岡山ゴールに迫っていた。ポゼッションが長くなっていたにも関わらず、前半途中から岡山にボールを奪われる回数が増え始めたのは、ホーム・岡山の気勢に押し込まれた部分もあったかもしれない。岡山は、ボランチ・金民均が持ち前のキープ力を取り戻して前にボールを運び、シャドーの妹尾隆佑、臼井仁志はDF裏へと突破し、再三決定機を作り出した。千明聖典のサイドチェンジも効いていた。
また守備面でも岡山には無失点で凌ごうという強い意志があった。千葉戦に続いてキャプテンマークを付け、出場停止のストヤノフの代わりに最終ラインに入った竹田忠嗣、後藤圭太、近藤徹志の3バックと、状況により一柳夢吾、澤口雅彦のウィングバックが下がる5バックで、横浜FCの攻撃に対応した。無失点の理由を聞かれた影山雅永監督(岡山)は、「選手同士でよく話していた。自分たちで解決策を見つけたことに成長を感じる」とコメントした。
自分たちで見つけた解決策とは、「岡山の左サイドの一柳夢吾と近藤徹志の間に、横浜FCのサイドハーフ荒堀謙次がいたが、マークに行けず押し込まれていた。そこに千明聖典が掴みに行くことで、一柳がトップの藤田祥史に付けた。残るトップのカイオの下がりや、斜めに走り込む荒堀については3バックで声を掛け合って対応した」と竹田。
攻撃面では、岡山にとってチアゴの存在はやはり、非常に大きい。横浜FCのボランチ・ファビーニョから受けるマークは執拗だったが、ストレスの気配もさほど感じさせず、ポストプレーヤーとしてボールを上手く落としてはチャンスを作り、ついに69分、一柳からつながって石原崇兆が上げたクロスを左足で決めた。
初アシストの石原は65分に交代で入ったばかりだった。3試合ぶりの出場機会に、水を得た魚のようにピッチを走りまわり、あわや、というシュートまで放った18歳ルーキー・石原の今後は明るい。いや、絶対的なスターティングメンバーのいない岡山の選手全員にとって、今後は明るいものでなければならない。ゲームと自分の役割を深く鋭く理解する小林優希も、2ヶ月後にはピッチに立っているだろう田所諒も、トレーニングらしからぬ激しさを練習中から見せている久木田紳吾も、ゲーム勘を取り戻しつつある植田龍仁朗もこれからのハードなリーグ戦の貴重な戦力。層の厚さが今季・岡山の一番の強みだろう。
横浜FCは今節も勝点を奪えなかったが、ファビーニョからのビルドアップ、佐藤謙介が上げるクロスにいたるまでのサイドの使い方、リズムは秀逸。もちろん個人の能力も高い。まだ噛み合っていないといえばそれまでだが、今足りないもののひとつは、サッカーを面白がる気持ちだろうか。
以上
2011.05.22 Reported by 尾原千明
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