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草津は、自分たちが感じている以上に強いのかもしれない。前々節、ホームで千葉に３ゴールを叩き込み圧倒すると、前節はアウェイで再び３ゴールをぶちこんで東京Vを軽々と退けた。今季初のナイトゲームとなる今節は、２戦６ゴールと脅威の攻撃力を発揮している草津が、黒星が大きく先行している眠れる獅子・京都を迎え撃つ。草津にとっては今季初の３連勝が懸かるゲーム、そして昇格圏内突入が懸かるゲームとなる。
草津にとって京都という相手は、雲の上の存在だった。京都と初めて対戦したのは草津がＪ２へ昇格した２００５年。Ｊの洗礼という言葉では片付けられないほどの力の差をみせつけられた。４クールの対戦は、０対３、０対３、０対６（６失点はクラブワースト記録）、０対２。得点０、失点１４。特に３クールでは観ているのが辛くなるほどの惨劇だった。２００４年から在籍する草津最古参選手の一人・ＧＫ北一真は「メチャメチャ強くて、ボコボコにされた印象しか残っていない」と振り返る。京都はイジメっ子だったのだ。
京都が再びＪ２へと戻ってきた２００７年の対戦成績は４戦３分１敗。２００５年ほどの力の差は感じられなかったものの勝利をつかむことはできなかった。櫻田和樹は「ボコられたわけではないけど引き分けに持ち込むのが精一杯だった」と話す。２００７年にポゼッションサッカーへ舵を切った草津は、その年を起点にチームとして成長を果たすことになる。
あれから４シーズン。時代は大きく変わろうとしている。Ｊ２へ降格した京都は開幕１０戦で２勝２分６敗とエンジンがかからずに１９位に低迷、低空飛行を続けている。一方の草津は、震災中断後に白星を積み重ね、試合経過とともにランクアップを果たす。最近５試合の結果は４勝１敗。順位も５位まで上昇し、昇格圏内が目前に迫っている。副島監督は、５月末からの湘南、千葉、東京Ｖ、京都の４試合をシーズン序盤の山場と位置付け、結果を求めてきた。今ゲームで勝点３が奪えれば指揮官のシナリオ通りにチームは上昇気流に乗ることになる。
草津を支えるのは、今やＪ２屈指の攻撃力だ。ラフィーニャ、アレックスのブラジルコンビを軸にゴール量産体勢に入っている。最近５試合の総得点は11点。勝利を挙げた富山、千葉、東京Ｖ戦はいずれも３ゴールの爆勝で、ゴールネットが揺れるたびにチームには自信が漲り始めた。ＧＫ北は「攻撃陣が点を取ってくれるので後ろはたとえ失点したとしても安心して守っていられる。もし２点取られても３点取ってくれる勢いがある」と攻撃陣に信頼を寄せる。
今ゲームのキープレーヤーは熊林親吾だ。６月２３日に誕生日を迎えるという熊林は京都戦が２０代最後のゲームとなるという。今季の草津は、ラフィーニャ、アレックスらＦＷ陣が注目されがちではあるものの、チームを支えているのは熊林だ。ピッチ全体の動きを把握し緩急をつけたタスクを振るうコンサートマスターの存在がチームの原動力となっている。試合後は、２００８年の加入以来背番号１４を背負ってチームを牽引してきた孤独なガンマンの誕生日を盛大に祝いたいところだ。
前節、味スタで東京Ｖを撃破したあと選手たちはゴール裏へ足を運んだ。ゴール裏のサポーターは迫力の草津コールで選手を迎えたが、それはＪ１への胎動に聞こえた。シーズンはまだ１０試合に過ぎないが、可能性を追求できる位置にいることは確かだ。「１試合１試合で勝点を積み上げるだけ。敵は己にあり」（副島監督）。己に存在する敵と戦いながら草津は、Ｊ１昇格という目標へ向けてまい進する。「Ｊ１への胎動」は勝利を重ねるたびに大きくなるはずだ。
以上
2011.06.18 Reported by 伊藤寿学
