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【J1:第16節 甲府 vs C大阪】レポート:C大阪に内容でも結果でも完敗の甲府。次節に繋がる希望は勝負で粘り強さを発揮出来たこと。(11.06.19)

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6月18日(土) 2011 J1リーグ戦 第16節
甲府 0 - 2 C大阪 (18:35/中銀スタ/8,402人)
得点者:85' 小松塁(C大阪)、90'+4 播戸竜二(C大阪)
スカパー!再放送 Ch182 6/19(日)後00:00〜
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C大阪にとっては守備のブロックの崩し方とシュート練習、甲府にとってはゾーンディフェンスの耐久力テストとGKの対シュート練習のような内容だった。ただ、前半は12本のシュートを打たれながらも無失点で耐えた。そして、少ないチャンスにゴールを狙う甲府の選手たちの姿を見れば難しい状況でも勝利を信じて戦っていることは充分に伝わった。でも、こうなってしまった理由に目を瞑ることは出来ない。ハーフナーマイクの不在だけが原因なのだろうか。目撃した人それぞれが言いたいことがあるだろうが、料理を始める段階で材料選びにミスがあればどんなに調味料を加えてもエキセントリックな勝負しか出来ない。与えられた素材の中でエビとアボカドのように相性のいい組み合わせや調理方法を見つけなければならないが、C大阪を招いたこの日の夕食では味噌汁にレモンを絞り入れるようなことになってしまったのではないだろうか。ただ、試合後の選手は翌日の全国紙に載っても困らないことだけ話し、思いを胸に仕舞っておくだけの分別はあった。

前半、甲府のFWにボールが収まらない状況は見ているだけでもストレスになった。マイクがいたとしてもC大阪のCBには手を焼いたと思うが、阿部吉朗と松橋優のツートップに対するサポートは乏しく、彼ら個人ではワンタッチではたいたりディフェンダーを身体でブロックしてから裏に抜けたりする打開策をなかなか実践できなかった。ピッチが濡れていたから安定した守備が難しく、そこに脅威を与えられる金信泳の先発起用の方が効いたと思うが、一番手っ取り早い打開策は3トップにするなどシステムを変えることだった。しかし、今年の甲府はゾーンディフェンスが核なのでこの選択肢はなかった。で、ボールを奪ってカウンターのチャンスが来ても奪ったボールをすぐに失うから攻撃に加わろうとした選手は相手陣内で置いてけぼり。ショートカウンターを仕掛けるC大阪の選手の背中を見ながら戻る羽目に何度もなった。それでも、ディフェンスライン・ボランチ・GKを中心によく守ったしC大阪もダーティハリーのようにシュートを撃ちまくるものの枠を外して助けてくれた。守備の視点から見れば、三浦(俊也監督)式のゾーンディフェンスはその特徴を発揮していた。内容は厳しかったが勝負としては悪くなかった。これぞ三浦式の強みだとも思っていた。

問題は切ったカード。ダニエルが負傷で15分に石原克哉と交代したが、5月7日の広島戦で左肘を脱臼した石原はベンチに座らせる状態ではなかった。三浦監督の石原に対する信頼の高さは日々のコメントからも分かっていたし、石原は期待されれば骨が折れていても応えようとする。しかし、彼を使うのは早すぎた。人間は走るときに肘を曲げ伸ばして腕を振る動物。しかし、石原はまだ左肘を曲げたままでしか走れないし、プロの激しい接触プレーに耐えられるまでには回復していない。それは鹿島戦翌日の練習試合を見て感じていた。シーズン序盤の甲府が勝てなかった時期にサブでモチベーション高く保って準備していた保坂一成、養父雄仁というカードにチャンスを与えるべきだったし、そうしないとサブのモチベーションを維持できない。

後半はC大阪が攻め疲れで甲府がチャンスをモノにできそうな時間帯もあったが、守り疲れの甲府はアイディアと体力と運が足りなかった。記者席から見ていて、甲府ベンチには手に負えないピッチ状況になっていると思っていた。前半は山本英臣と小林久晃を中心によく守っていた守備陣にも連携・判断ミスが出始めていた。C大阪の自滅に期待するしかない展開になっていたがその期待は85分、途中出場の小松塁のシュートに砕かれた。そして、94分にはそれまで2回の決定機をバンバンと撃っても決められなかった播戸竜二が「疲れて戻れずに残っていたらボールが来た」という3発目で2点目を決めて、甲府サポーターを家路に急がせた。

いつ以来なのか思い出せないくらいの完敗。自棄酒を飲むときの掛け声でも「完敗〜」と言いたくなるような内容と結果だったが、これを「つまらない試合」と言い切ってもいいとは思わない。ヴァンフォーレ甲府は富士山同様に山梨県のアイデンティティーなんだから、嘆いたり祈りながら愛する対象。憂さ晴らしの対象ではない。J1初昇格を果たした05年からJ1で2年間戦った07年までの記憶が今の甲府を支えているのだが、美しい敗北を求めるほどにはその記憶に頼ってはいない。厳しい内容でも勝負に勝つことの素晴らしさも知っているし、今年は感動よりも刺激の勝利が多いことも分かっている。幻想の中で応援しているわけではないので、悲しい言葉や厳しい言葉も見つけたくなるがこのチームに対する愛情は母親に対する愛情と同じ。使うべきではない言葉はある。あの頃の矜持を捨てたわけではないが、クラブが地域貢献の裾野を広げていく道程でトップチームがJ1にいる必要性があるのなら矜持は仕舞っておける。だれかを殉教者にする必要はない。クラブの発展に必要な「勝利」という青春をもう少し楽しみたいが、どんなときでもチームは山梨の誇りを背負うシンボルだということは変らない。難しい試合や厳しい試合はあっても「つまらない試合」なんてない。選手は自分自身を律して全力で闘うし、サポーターはそれを信じて応援している。この相互信頼がアイデンティティーを守り育てるためには欠かせない。C大阪には完敗したが信頼は崩れてはいない。次はアウェー仙台。彼らに最初に土をつけるチャンスが目の前にある。それをやるのが甲府。もう一度立ち上がって一緒に闘おう。

以上

2011.06.19 Reported by 松尾潤
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