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【J1:第18節 甲府 vs 柏】レポート:柏の精度の前に轟沈した甲府は2試合連続の4失点。内部崩壊はしていないが判断と決断のときに来ている。(11.06.26)

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6月25日(土) 2011 J1リーグ戦 第18節
甲府 1 - 4 柏 (19:04/中銀スタ/10,450人)
得点者:29' 田中順也(柏)、34' 田中順也(柏)、58' ハーフナーマイク(甲府)、61' ジョルジワグネル(柏)、82' ジョルジワグネル(柏)
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ハァ〜。
柏サポーターが歌った宇宙戦艦ヤマトのメロディがずっと頭の中で流れている…。
ハァ〜。
杏里は「悲しみがとまらない」って歌っていたけれど、今夜はため息がとまらない。
ハァ〜。

甲府はそろそろ客観的に現実を判断し、J1残留のためにはどうすればいいのか決断しなければいけない時期に来たのかもしれない。J1の18チーム全部が思うように結果を獲られる訳がないので、獲られないチームは何かを変えるか、方向性を変えないことが望んだ結果に繋がるのか判断し決断する必要がある。まだ大騒ぎをする時期ではないが、まだまだと思っていると秋はすぐにやって来てしまう。毎年恒例の「夏までに痩せる」という目標はもう達成できないが、チームがハンドルを回せば満足できる結果を得ることが出来るはず。

柏戦の前日、練習前に選手だけミーティングでチームの拠り所を確認しあった甲府は11人が等しく気持ちが強く入った戦いを見せた。プレッシャーを強めて柏が前線に起点を作ることを許さず、攻撃ではサイドを中心に決定機も作った。しかし、首位・柏相手ではそれでも試合内容は五分。甲府のクロスはグリーンに乗ればOKみたいな精度だったが、柏のクロスは悪くてもワンパットで決められる精度。内容は甲府がやや優勢のようでも、決定機の数は柏のほうが多いくらい。柏と甲府では家の大きさが違うから、個々のプレーの精度に差があるならチャンスの数で勝負する覚悟も期待もあった。28分までは。

29分の田中順也の「協会の人、ザックに見せてね」的な先制ゴールは素晴らしかった。田中は「狙って打ったシュートではなかった。ただ、今はいい感触でシュートを打てている」と話したが、どんな意図であれペナルティエリアの外からファーサイドにパンチのあるシュートを決められて、甲府は凹んだ。もちろん、諦めるようなことはないが首位・柏相手としては悪くない内容で、このまま前半を無失点で折り返せばチャンスがあると思っていただけに「またか…」という思いが少なからず頭をよぎる。こういうことが続けば「負け癖」がついてしまう。そして、34分には三浦(俊也監督)甲府が目指しているゾーンディフェンス100%の守備が水で薄めたオレンジジュースのような味気なさを露呈。センターバックがマークすべき相手にサイドバックとボランチとサイドハーフが食いつき、サイドバックが見るべき相手をフリーにしていたから、その人・ジョルジワグネルは「フリーならクロスは上げなきゃソンソン」という雰囲気で精確なクロスを入れて、田中の2点目に繋がった。クロスが上がった瞬間、記者席で思わずあるはずもない照明のスイッチを探しそうになった。このときの甲府の守備の残像は、3ラインをコンパクトに保つ完璧なゾーンディフェンスを今シーズン中にチームとしてモノにするのはかなり難しいと確信させた。同じ判断ミスをチームとして繰り返しているからだ。選手が何と言おうが、あと数試合でモノに出来るような状況ではない。

三浦監督は会見で、「無失点なら守備の組織はあまり崩れないから守備の修正と先制点を取ることの課題と比較するとどっちもどっち」という趣旨の話をしたが、3ラインをコンパクトに保ち、細かい判断を求める完璧なゾーンディフェンスをJ1のチーム相手に不完全なままやり続けることは限界に来ているのではないだろうか。山本英臣をセンターバックからサイドバックに追いやればそれは尚更。スピードを重視した柏の攻撃は何度も不完全な点を突いてきた。後半は荻晃太の飛び出しや柏のシュートミスに助けられて流れの中からは失点しなかったが、柏に与えた決定機の起点は甲府のボランチとセンターバックの単純な技術的ミス。5点、6点取られて田中にはハットトリックを決められ、スポーツ新聞に「田中、ハットトリックでザックに猛アピール」なんて見出しの記事を書かれてもおかしくはなかった。荻はそのピンチをよく防いだ。でも、後半決められたジョルジのFK2発(61分、82分)への対応は課題。レアンドロドミンゲスとジョルジの2人がボールを挟んで立てばGKは右で蹴ってくるのか、左で蹴ってくるのか迷う。しかし、ジョルジは「(82分のFKは)レアンドロを警戒した壁の作り方、GKのポジションだった」と見抜いており、左右両方のキッカーがいる場合の対応方法ではミスを犯したと言わざるを得ない。荻にとっては高い授業料を払っての忌々しい経験だが、これは荻だけの問題ではなくスカウティングを含めたチームとしての課題。ジョルジの左足が金色なのは柏の野良ネコでも知っている。

甲府は58分にハーフナーマイクと養父雄仁が連動して前からボールにプレッシャーを掛けてボールを奪い、後半最初の得点をマイクが決めて1-2と流れを引き戻そうとした。しかし、センターバックのミスから与えたFKをジョルジが決めて3分後には再び2点差の1-3。この辺りから甲府のプレーに焦りとイライラを感じるようになった。まさに、柏の思う壺。その後の甲府からはチームプレーがほとんど消滅し、ビルドアップではなくボールを押し付け合い、精度のあまり高くないスタンドプレーの集合体としてのチームに成り下がった。メインスタンドのお客さんはどんどん帰り始め、友達からは「9時から見たいテレビがあるので帰ります」とメールが来てしまう。文字の最後には怒った人の絵が付けてあった。

この夜、「完敗〜」って音頭で自棄酒を飲んだサポーターは少なくないかもしれないが、一度自虐モードに入ってから週明けに復活するのも甲府サポーター。クラブ消滅の危機を経験したサポーターは特に強い。嘆いたり祈りながら何度でも立ち上がる。チームは2試合連続の4失点だが、内部崩壊しているわけではない。市川大祐は「監督が目指すサッカーをするのが大前提。それぞれが勝手に『出来る、出来ない』なんて言い出せばチームの規律がなくなる。でも、監督に言われたことだけをやっているようでは駄目。それはプロではない。選手が個々に自分を寄り高い位置に持っていく努力を欠かしてはいけない。難しいけれど、今は切り替えることが重要。戦う気持ちを高めて前を向いて進んでいきたい。やるべきことをやれば現状を変えていくことが出来る」と話した。選手の立場として正しい意見・姿勢。彼のようなベテランがチーム内でちゃんと発言してくれればチームの規律は保たれるはず。この点ではサポーターも安心できる。ただ、クラブとして方向性を考える現状であることは間違いないと思う。局面によってはマンツーマンへの切り替えを躊躇なく行うゾーンディフェンスに軌道修正するのか、今のゾーンディディフェンスを継続するのか。また、貴族のように気まぐれにしかディフェンスをしない選手を使い続けるのか、精度や判断力に欠ける選手を使い続けるのかというマネージメントでも大きな決断をしなければ、勝点が積みあがらないチームには不満ばかりが積み上げられてしまう。柏の皆さんは来年のACLの心配や今年のバルサ対策で楽しく悩むことを謳歌できるが、甲府は決断のときに差し掛かったことが明確になった。次は超やりにくいアウェー・福岡戦。2011年度の昇格組対決は続く。

以上

2011.06.26 Reported by 松尾潤
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