7月16日(土) 2011 J1リーグ戦 第5節
川崎F 3 - 2 柏 (19:05/等々力/19,619人)
得点者:5' 矢島卓郎(川崎F)、31' 小林悠(川崎F)、54' オウンゴ−ル(柏)、71' レアンドロドミンゲス(柏)、84' ジュニーニョ(川崎F)
スカパー!再放送 Ch181 7/19(火)後09:00〜
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笑える冗談になったことが何よりだった。激しい打ち合いとなった試合後の田中裕介が「正直な話、(2−0からの)2−2には慣れているので」と話すと、周りを取り囲んでいた報道陣の間から笑い声がこぼれた。川崎Fは追いすがる柏を振り切り、かろうじて3−2で試合を終えていた。首位を相手にした大きな勝利だった。
その川崎Fには、試合開始前からアクシデントが続いていた。メンバーリストからは中村憲剛と稲本潤一の名前が消えていた。コンディション不良のため、メンバー外となっていたのである。さらには前半途中に矢島卓郎が。ハーフタイムには柴崎晃誠を、それぞれ負傷で失い、試合後の相馬直樹監督は「ここまでほぼフル出場しているような選手が抜けるというアクシデントがあった」と想定外の出来事である旨、認めている。
チーム編成上の難しさを抱えていたホームの川崎Fにとって、この試合は柏の布陣に左右されるものとなっていた。例えばネルシーニョ監督はこの試合の入りについて「最初は両サイドの中盤の選手、レアンドロと澤(昌克)を中に絞らせてボックスのような形で入っていた」のだと試合後に述べている。この指示に従ってレアンドロ ドミンゲスが中に絞る事により、川崎Fの左サイドバックである小宮山尊信の目の前には、彼が自由に使えるスペースが広がる事となる。
前半5分。そのスペースに飛び込んだ小宮山が思い切りよくシュート。このシュート自体はミートしなかったが、このボールが矢島卓郎の足元に転がり、DFをかわして先制のゴールとなる。
主力2選手を欠く中での先制点に勢いづく川崎Fは、しかし、前半30分にその矢島が左のもも裏に違和感を感じてベンチへ。柏のCBに対して圧力を掛け、川崎Fの起点となっていただけに不安の募る交代となる中、その矢島に代わり出場の小林悠がいきなり結果を出す。31分に山瀬功治からの折り返しをそつなく決めるのである。
小林は「功治さんはあの位置で持ったときは、シュートでもクロスでも入ってくるので、逆サイドに来ると思い、ポジションを取りました」と説明。チームメイトの特徴を掴んでのゴールだったことを明らかにしている。
2点を先行された柏は、1本のシュートも放てずに終えた前半を修正し、後半の頭からジョルジ ワグネルと茨田陽生を投入することで試合展開を手繰り寄せる。例えば左サイドに入ったジョルジ ワグネルがボールをためて時間を作る事で、北嶋秀朗と澤とがボールを上手く引き出す。また、ボランチに入った茨田はうまくボールを散らし、攻撃にリズムを生み出すのである。
後半の柏が息を吹き返したのには、もう一つの理由がある。それが柴崎の負傷退場である。その柴崎に代わりボランチに入ったのは本来右サイドバックの田中だった。
「練習では紅白戦などでやっていた事はあるんですが『ここでか(この試合で?)』と思いました」と話す田中裕は、コンビを組む田坂祐介に守備を任せ、前に出て行くような役割を担っていたと言う。ところがさすがに実戦経験のないボランチである。試合開始からしばらくは、ポジションをうまく取ることができず、全く浮いてしまうような状況が続いてしまうのである。しかしこれには相馬監督も同情的で試合後の会見でも「田中裕介をボランチに据えるという形でほぼやった事が無いと思います」と述べつつも、労をねぎらっていた。
そもそもレギュラーボランチが2枚ともピッチから消え、ボランチの経験の豊富な中村もいないのである。ぶっつけ本番のボランチコンビが首位を走るチームを押さえ込めるべくもなく、柏が一気に息を吹き返すのである。そうしたなか、柏を勢いづかせたのが右サイドバックの酒井宏樹である。
後半開始早々の54分に茨田からのパスを受けた酒井が右サイドをえぐりクロス。これが川崎Fのオウンゴールとなり1点目。さらに71分にも大谷秀和からのパスを受けた酒井がアーリー気味のクロスを入れると、これをレアンドロが絶妙なタッチで合わせ、同点に追いつくのである。
完全に負けパターンとなった川崎Fは、しかしここで踏みとどまってみせた。81分の澤の決定機をGK相澤貴志が「自分の間合い、自分のタイミング」に持ち込んでファインセーブすると、そのわずか3分後に、途中交代出場の久木野聡が一仕事してみせるのである。
ベンチから2−2にされた試合を見ていた久木野は「2−0でそのまま済めばいいと思っていたんですが、2−2になったときにはベンチの選手がやるしかないと思いました。同点にされた瞬間にオレだろうと思っていました」との思いを持ってピッチに入っていた。79分に投入されたばかりの久木野は、豊富なスタミナをベースに柏に圧力を掛け、84分にジュニーニョからのパスをエリア内で引き出してPKを手にするのである。
勝ち越しのチャンスとなるPKを、ジュニーニョが落ち着いて決めて川崎Fは1点をリード。もちろん柏は猛攻撃を試みるのだが、すでに田中裕はボランチのポジションに慣れており、決定的な穴を見せない。そつなくこの難しいポジションをこなし試合を終わらせるのである。
今季何度となく見せられてきた、2−0からの失点劇による難しい試合展開ではあったが、川崎Fが土壇場で柏を振り切り、首位との勝点差を4へと縮める事に成功した。後半の印象が強い試合後は、勝ったような気がしない、すなわち1−2の試合を見せられたような感覚に陥ってしまっていた。ただ、それでも勝点3を手にできているのは、前半の決定機できっちりと得点をねじ込めたから。そういう点では、相手チームのシュート数を前半0に抑えながら、結果的に敗れてしまった前節の浦和戦をうまく反省していたと言えるのかもしれない。
一方の柏は、ネルシーニョ監督の見事な采配により後半に息を吹き返す。ハーフタイムのロッカーでは、一人ひとりに丁寧に役割を与え、後半に見せた逆襲を引き出す。技術のある個々の選手の力を指揮官がうまく引き出した様子が見て取れた試合であり、首位を走ってきたことが決してフロックではない事を証明していた。
川崎Fには敗れはしたが、彼らにしてみれば負けた気のしない試合だったはず。ただ、この試合を踏まえ、柏でのホームゲームに向けていい印象を持ち帰れるのではないかと考える。そういう意味では8月下旬に予定されている川崎F戦がどのような試合になるのか、今から楽しみである。
■この試合のHOT BALLER:久木野聡(川崎F)
以上
2011.07.17 Reported by 江藤高志















