8月13日(土) 2011 J1リーグ戦 第21節
広島 0 - 3 名古屋 (19:03/広島ス/7,099人)
得点者:23' 小川佳純(名古屋)、39' ケネディ(名古屋)、90'+4 永井謙佑(名古屋)
スカパー!再放送 Ch308 8/16(火)前06:00〜
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空が茜色からゆっくりと漆黒へと包まれていく。その架け橋となる時間帯を写真や映画の用語では「マジックアワー」というが、サッカーの試合に「マジック」は存在しない。夕焼け空からこつ然と現れ、スタジアムの上空で輝いた美しい月の祝福を浴びたのが「決めるべき時に決める」勝負強さを発揮した名古屋だったのは、当然の帰結だ。
「前半の選手たちは、何かを怖れていた」とペトロヴィッチ監督(広島)は言う。その理由が、上に行くには勝たねばならないという重圧か、いつもと違うスタジアム(コカ・コーラウエスト広島スタジアム)の環境だったのか。その正体は、わからない。はっきりしているのは、前半を支配したのが名古屋で、広島が後手を踏んでいたという現実のみ。23分、玉田のクサビをケネディが落とし、3人目で小川が飛び込む。シンプルなコンビプレーなのに、広島の守備陣はボールウオッチャーになって、失点。ホームチーム、我慢ができなかった。
早く同点に追いつきたい。情熱が広島の「怖れ」を吹き飛ばし、前へと足を運ばせる。33分、美しい前線のコンビネーションで名古屋の中央にスペースを生み出し、ボランチの位置から飛び込んだ中島浩司が強烈なシュートを放つ。しかし、そのボールはGK高木義成の正面に。さらにミキッチや森脇良太がチャンスを迎えるも、名古屋のブロックを崩しきれない。
情熱が焦りに変わり、シンプルにゴールを目指すのではなく「複雑な攻撃を繰り返す」(ペトロヴィッチ監督)広島の「青さ」を、前年王者は見逃さない。39分、フワッと夜空に浮かんだCK。落下点に飛び込んだのは西川周作だ。キャッチか、クリアか。いつもならキャッチできそうなタイミング。だが、「勝たねばならない」慎重さが先に立ったのか、それともニアに入った選手が死角をつくったのか、日本代表GKは拳でのクリアを選択した。
ところが、そのボールが足下に落ちてしまう。誰よりも速く反応したのは、ケネディだ。2点目。この時、上空に輝いているはずの月には、もやがかかっていた。
後半、足が止まってきた名古屋の中盤の隙をつき、広島が主導権を握る。中島浩司が中盤でタクトを振り、高萩洋次郎がアイディアを発揮して王者を押し込む。68分、高萩の美しい浮き球のパスに飛び込んだ佐藤寿人、フリー。だがストライカーの決定的なヘッドを、高木が片手一本でクリア。73分、山岸智のクロスに飛び込んだ高萩のシュートは、ポストを直撃。いずれも完全に崩していただけに、広島にとっては悔やまれる。
名古屋は途中出場の永井謙佑がカウンターでチャンスを作るも単発。2点差を考えればリスクを負う必要はないが、1点を許せば状況は一気に変わってしまう雰囲気が、スタジアムを包んでいた。78分、ムジリのスルーパスに寿人が飛び込む。85分には高萩のスルーパスにムジリがフリーで決定的なシュートを放つ。入れば、試合の趨勢はわからなくなる。だがいずれも、「今日の試合で忘れてならないのは高木だ。ハイレベルなパフォーマンスを見せた」とストイコビッチ監督(名古屋)が絶賛した背番号50がスーパープレーで阻止、名古屋の窮地を救った。
アディショナルタイム、カウンターから永井が3点目を決め、広島にトドメを刺す。結局、名古屋ベースとなった前半に広島は我慢できず、広島が押し込んだ後半には名古屋が我慢を続けたことが、勝敗を分けた。言葉にすれば簡単。だが、それができるかできないか。そこが「王者」と「それ以外」を分ける分水嶺なのである。
楢崎・ダニルソンという大駒を2枚も負傷で欠いた名古屋だが、したたかに勝利を重ねて連続不敗記録を「15」に伸ばし、ついに暫定首位に立つ。8月17日、共に首位を争うG大阪との直接対決で勝利すれば、昨年のような独走態勢を固める雰囲気すら出てきた。一方の広島は今季初の3連勝が幻と化し、どうしても波に乗れない。
だが、「我慢」が必要なのは試合中だけでなく、シーズン通しての戦いでも同じこと。「崩壊的な内容ではない。下を向く必要はない」とペトロヴィッチ監督。森崎和幸も「後半のサッカーを最初からできればいい。切り替えて次に向かう」と言葉を残す。前半戦における仙台や柏の躍進を多くの人が予想できなかったように、今後のシーズンでも何が起きるかはわからない。GKからボールがこぼれてくるという万が一の可能性を予測して準備していたからこそ、ケネディは得点できた。広島もまた、何かが起きた時のために、何かを起こすために準備が必要。それができれば、この日は名古屋に微笑んだ月の光が、今度は広島に優しい光を注いでくれるだろう。
以上
2011.08.14 Reported by 中野和也















