10月10日(月) 第91回天皇杯 2回戦
東京V 7 - 1 長崎 (13:00/駒沢/2,701人)
得点者:20' 岩間 雄大(長崎)、22' マラニョン(東京V)、38' 阿部 拓馬(東京V)、55' 土屋 征夫(東京V)、57' マラニョン(東京V)、69' 菊岡 拓朗(東京V)、71' 小林 祐希(東京V)、73' 阿部 拓馬(東京V)
★第91回天皇杯特集
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東京Vが、7年越しの悔しさをスコアに代え、7−1で大勝した。
JFLというカテゴリーが下の相手とはいえ、7度もネットを揺らしサポーターを喜ばせたことについては、「観に来てくれているサポーターとかいろんな人にはゴールシーンをたくさん見せられたことは良かった」と、川勝良一監督は試合後の会見で及第点を与えた。だが、そのコメントには、うしろに「けれど…、」がつき、以下に続く。
「けれど…、この後のリーグ戦のことを考えたら、(緩いところを)全部誤魔化すというか、隠してしまうと、この後何も残らない。ちゃんと見ていればちゃんとしていないところがけっこうあったので、そこは監督としては非常に気に入らない」。
ハーフタイム含め、ロッカールームでは川勝監督から「ちゃんとしていないところ」に対して、相当の叱咤があったという。そのため、バスに乗り込む選手たちの表情は、とても大量得点で7年ぶりの天皇杯初戦勝利を飾ったチームのものとは思えぬほど、険しさを帯びていた。
指揮官の逆鱗に触れたのは、1点を先に取られたことである。前半20分、長崎は中央を突破した佐藤由紀彦がつぶされたところを、「良い形でボールを持っていってくれた」(佐藤)岩間雄大が右足で決め、先制した。「初戦はいつも難しいが、それでも1点を先に取られたのは良くない。7点取ったけども、基本的に2、3点差ぐらいで0に抑えて、もうちょっとちゃんとしたサッカーを初戦でもやりたかった」(川勝監督)。
結果的に見れば、そのすぐ2分後に東京Vが同点に追いつき、さらに大量点を奪って試合を終えられただけに、今回は特に大きな問題として目立ちはしなかったが、「これがもし、Jチームが相手のリーグ戦だったら、ウチは前半で先に点取られたら勝つのが難しい」と、GK柴崎貴広も強く危機感を募らせている。以前から、ポイントとして常に挙がる『先制点』は、これからも引き続き重要な課題として追求していく必要がある。
とはいえ、やはり7得点には収穫もたくさんあった。この試合を『勝負がかかっているリーグ5連戦に、もっと良い準備をしたい』と位置付け、メンバーを落とすことなくフルで挑んだが、ここ2試合で1点の得点状況を考えれば、7ゴールは弾みがつくことは間違いない。
また、試合前「情報の少ない相手に対していろいろなアイデアが出るだろうから、得点のイメージを作りたい」と川勝監督は語っていたが、「うちは、セットプレーでの得点が少なかったから、今日セットプレーで4点取れたことは大きい。どんな形でも1点は1点」と阿部拓馬が語ったように、前半22分のマラニョンのCKのこぼれ球からの同点弾はじめ、同38分、菊岡拓朗の直接FKに阿部の頭、後半10分CKから土屋征夫のフライングヘッド、26分の小林祐希のFK直接ゴールなど、パターン豊富に加点できたことはプラス材料だったのではないだろうか。敵将・佐野達監督も、「得点力のある東京Vにセットプレーで失点すると厳しい」と、一番の敗因に挙げた。
また、ハーフタイムや、試合中でも出場前からサポーターが巻誠一郎コールを起こしていたが、その巻を投入し、阿部、マラニョン、平本一樹が並ぶ4枚の攻撃陣、そこへボランチに下げた菊岡がパスを送るという配置も、非常に見応えがあった。
その意味では、今後の戦いへ向け攻撃オプションは増やせたと考えていいのではないだろうか。
圧勝してなお不服。「勝ったのに何でそんなに渋いんですか?って思うかもしれないですけど、普通に専門的に見れば緩いところも多々あった」と語ったが、“専門的に見て”というところに、川勝監督の目指すサッカーがいかに高いところを目指しているかが表れているように思う。目先の1試合に一喜一憂するのではなく、最終的に目指しているのかがどこなのかを見据え、そこへきっちりと照準を合わせた戦いを重ねることの重要性を改めて植え付けのではないだろうか。
全員が最後の最後までハードワークと高い集中力を切らさず、質の高いサッカーを魅せることを追求している川勝ヴェルディ。「1週間かけてもう一回ちゃんとしたことを最初からできる状態に戻したいと思います」。一聞、厳しく思える指揮官の言葉に、『J1で“良いサッカーをして”優勝する』ことを本気で目指すための覚悟を改めて感じずにはいられなかった。
長崎は、「J2屈指の得点力を誇る東京Vに真っ向勝負を挑んだ」と、佐野監督が語った通りの潔い戦いぶりを披露した。結果として大量失点を喫することとなったが、「全力で真っ向勝負を挑んだからこそ、本当の課題が出た。中途半端な戦いをしていたら、真実は見えなかったと思う。ウチは2年後を目標にJ2入りを目指しているから、そのレベルを知れたし、自分たちを見直すとても良いチャンスになった」と、佐藤由紀彦は前を向いた。また、佐藤は「ウチはセットプレーからの失点が多いのですが、今日もセットプレーだけで4失点は大きな課題。JFLであれだけの質のセットプレーをしてくるチームはないけど、Jを目指す以上対応していかなければ」とも。
長崎は現在JFL3位に立つ。だが、施設面などの関係で、例え4位以内の成績を残してもJ入りの認可は難しいとされている。「行政を動かすためには、まずチームが強く、良いサッカーをして、『こっちの準備は万端だよ』ということを示さなくちゃいけないと思う。とにかく僕たち現場は、自分たちのやれる準備を整えておくだけだね」。
「(故・松田)直樹のこともあるし、サッカーができるだけ幸せだよね」。横浜F・マリノスでJ優勝を経験した男が、Jリーグ昇格のため新天地・長崎で自らの経験の全てを注ぎ込んでいる。
以上
2011.10.11 Reported by 上岡真里江
J’s GOALニュース
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