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【2011 Jユースカップ2回戦:札幌 vs G大阪】レポート:黒を挟んで夢の実現のために戦った赤の札幌とプライドを取り戻すために戦った青のG大阪(11.11.24)

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■2011 Jユースカップ:決勝トーナメント2回戦
11月23日(水・祝)
コンサドーレ札幌U-18 2-1 ガンバ大阪ユース
得点者:9'内山裕貴(札幌)、26'堀米悠斗(札幌)、58'オウンゴール(G大阪)
★2011 Jユースカップ特集ページ
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「試合当日の午前8時にピッチコンディションを見て開催するかどうかを判断する」という状況だったが、幸運にも前夜に雪は降らず朝から晴れて宮の沢白い恋人サッカー場でのJユースカップ2回戦・札幌対G大阪は予定通り行われることになった。除雪が間に合わなかった場合は札幌市内の人工芝ピッチを予定していたそうだが、ピッチに埋設してあるヒーティングシステムと人力の除雪で間に合った。札幌市交通局最大の発明、土日祝日は地下鉄が500円で1日乗り放題という「ドニチカ」切符を握りしめて東西線の山の手(雰囲気的に)方面の終着駅「宮の沢」で降り、札幌のスポンサー・石屋製菓の総本山・白い恋人パークの隣にある札幌の練習場に向かう。日陰には雪が残っていたがピッチは予想以上に状態がよかった。

札幌ユースにとって残るプレミアリーグEASTの2試合もJユースカップ・3回戦以降もアウェイもしくは道外のために、この日の2回戦が道内最終戦。トップチームが同じピッチで午前9時から練習したこともあってファンやサポーターの姿も多かったが、選手の家族や友人も最後のホームゲームを観戦するために多く駆けつけ、公式発表の入場者は672人。寒さも含めてG大阪を完全アウェイの状態で迎えた。
立ち上がりは2トップにロングボールを入れるG大阪に押し込まれる場面もあったが、ディフェンスラインが不用意なミスをしない札幌は徐々に主導権を持つ時間を長くし、19分にコーナーキックから内山裕貴が先制。競り合ったものの誰もボールに触れず、バウンドした後の混戦から押し込んだゴールだった。26分には永井晃輔のロングボールが、裏に飛び出した榊翔太にピッタリ合い、左から中央に走り込んできた堀米悠斗がパスを受けて右に流れながら身体のひねりを利かせてゴール右隅にシュートを決めて2−0。この2点目は機動的攻撃力を魅せた圧巻のゴール。しかし、その後も2回シュートがバーを叩いたが3点目を取れない。鬼門の2点差のまま後半を迎える。

ハーフタイムに「ガンバのプライドを見せろ」という話をした梅津博徳監督。魂を刺激されたG大阪は岡本大地、出岡大輝の2トップのコンビネーションを活かして攻め込む。前半はサイドの局面で勝てずに中央縦突破にしかチャンスを見い出せなかったが、後半はアグレッシブな気持ちが状況を変えることができることを証明。
58分には札幌陣内のスローインからの攻防の中、札幌・荒野拓馬がクリアするつもりで蹴ったボールがアウトにかかって、ミラクルな軌道で札幌ゴールのファーサイド隅に入ってオウンゴールで2−1。G大阪が圧力をかけ、やや受け身になっていた札幌のボールを奪い返すパワーが落ちていたためのゴールだった。10人くらいと圧倒的に数的不利だったG大阪サポーターだったが、「ガンバガンバ、もっといったれ〜。ガンバガンバ、もっといったれ〜」と弱気になった対戦相手をビビらせるコールで一気に盛り上げる。J1リーグでもこのコールをやられるとゴール前に張り付いて守りたくなるが、札幌が素晴らしかったのはこのコール中にシュートを打って反撃したこと。これで一旦落ち着くことができた。

2−1になってからダイナミックな展開が増えたが、1点差になったことで札幌が受け身だったことは否めない。四方田修平監督も「大きな影響があった」と感じていたが、センターバックに起用された1年の内山は特に強いプレッシャーを感じていたのか、前半のような安定感はなかった。しかし、永井ら3年生がそれをカバーしていたし、G大阪は決定機に決めきれずにミスで助けてしまった。10番を背負う徳永裕大がキープ力と柔らかくて正確なパスで攻撃のエンジンになっていたが、トップチームでも鍛えられている札幌を逆転するには決定力も決定機の数も足りなかった。センターバックの西野貴治を上げた終盤のパワープレーも実らずタイムアップ。トップでレギュラーを掴んでいる奈良竜樹は出場しなかったがトップチーム昇格組4人が先発した札幌はサイドの守備が特に強く、距離感が整った時の崩しは牛丼屋のキャッチフレーズのように上手い速い。
四方田監督は「ちょっとしたことでわからなくなるゲーム。同点になってもおかしくないシーンがあった」と評したが、これはG大阪の底力のすごさでもあった。ただ、J2リーグ戦が終わって奈良がユースチームに加われば札幌の安定感はさらに高まる。これを実現するためには27日の広島戦(@刈谷)に勝って、12月23日の準決勝に進まなければならない。今後は降雪で練習環境がどんどん厳しくなる札幌だが、これを乗り越えればユースの初タイトルの可能性も高まる。

試合後のG大阪は選手全員が悔し泣きしていた。サポーターも泣いていた。傍から見ると関西ではC大阪、神戸、京都のJクラブの育成が台頭しG大阪が以前ほど目立たなくなった印象だった。C大阪は毎年対戦相手に脅威を与えるチーム、神戸は完成度が高くスピードのあるチーム、京都は環境を整え、上手くてサイズのある選手が多いチーム。そして、G大阪は上手い選手が揃っているけれど…という印象だった。監督交代の多さもイメージの作りにくさにつながっていた。この状況下で、プリンスリーグ関西でG大阪が2部落ちした年に1年だった山千代大斗の学年は必死に結果を求めていた。Jユースカップだけでも過去4度の優勝を果たした育成の名門チームのプライドを取り戻すために。

「強かったガンバユースを取り戻そうと戦ってきたんですけど…最後は…何かが足りなくて。実力では負けてないと思うんですが…」
涙腺が壊れたように流れる涙、言葉は震えて最後は感情高ぶって言葉にならない。クラブユースU-18・グループリーグで名古屋に敗れた7月26日以降は無敗だった。チーム状態が上がっているという手応えを持って挑んだ札幌戦。先輩たちが積み上げてきたG大阪のプライドを、残された最後の大会で取り戻そうとしていた。キャプテンの山千代は自身のトップ昇格の夢も叶わず、「苦しい思いばかりで悔しい…」と漏らした。選手がサポーターに挨拶に行くと年長の男性が「この悔しさを大学やプロになって晴らせばいいんや。ありがとう。ありがとう」と泣きながら選手に言う。この言葉を聞いて責任感の強い山千代はその場で泣き崩れた。
「僕もガンバのジュニアユース、ユース出身なんで、プライドはある。選手にはいい意味でプライドを持つことが大事だと伝えてきた。過去のチームは勝ってきた。勝つことは大事だし勝つことで自信になる。今日はやってきたことは出せたと思う」
梅津監督も同じ気持ちで戦ってきた。プライドを取り戻す戦いには結果も必要だが、プライドのために戦った姿にG大阪らしさは見えた。負けて残ったのは失望ではなく悔しい気持ちに包まれた希望のはずだ。

以上


2011.11.24 Reported by 松尾潤
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