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【J2:第38節 大分 vs 北九州】北九州側レポート:ピッチ上の9人でも守らず攻め続け、勝点1を上積み。来季に繋がる戦績で、新体制1年目の「大躍進」を完遂(11.12.04)

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12月3日(土) 2011 J2リーグ戦 第38節
大分 2 - 2 北九州 (12:35/大銀ド/10,395人)
得点者:5' 福井諒司(北九州)、21' 西弘則(大分)、50' 関光博(北九州)、82' 森島康仁(大分)
スカパー!再放送 Ch183 12/4(日)後00:00〜
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「この8位にしっかり胸を張って頭を上げて、北九州に戻りたいと思います」
勝点60で6位以内という新たに立てた目標には及ばなかったが、北九州は6位の千葉、7位の京都と並ぶ勝点58で今シーズンを締めくくった。得失点差でその2クラブが上回り、順位は8位。しかし、冒頭に引用した三浦泰年監督の言葉のとおり、胸を張れる結果を持ってJリーグ2年目、新体制1年目の幕を閉じる。

試合については、今節は『バトル オブ 九州』であり大分の柚野真也さんのレポートもあるため大分側についてはそちらを参照いただき、ここでは北九州を中心に見ていくのだが、北九州にとって試合内容は厳しいものになったと言わざるを得ないだろう。90分の間に2度も扇の要たるボランチを変更せざるを得なくなった。それでも「いろいろやってきたので、誰が入ってもやれる」(木村祐志)と話す選手たちはその状況に対応。厳しい状況の中で失点を最小限に抑え、ホイッスルが鳴る瞬間まで1点を取りに行こうとしたことを評価したい。

もっとも立ち上がりは、試合が荒れることを予期させなかった。
開始早々の5分、北九州が先制して流れを呼び込んでいく。木村の右からのCKが、相手のGKを越えたところに落ち込むような弾道となり、そこでの攻防に福井諒司が足を伸ばして先制のゴールを奪う。その後も北九州は緩急を織り交ぜでリズムを維持する。バックラインでゆったりとしたポゼッションをしてみたり、相手の3バックとボランチのギャップを突くようなスピードを持った仕掛けがあったりと、北九州が試合の流れを握っているような時間帯が続く。

ところが、21分。大分・前田俊介のシュートをGK佐藤優也が好セーブしたものの、そのこぼれ球を詰められて西弘則に同点を許してしまう。
これで試合は振り出しに戻るのだが、北九州はここで1度目のボランチの変更、すなわち桑原裕義から金鐘必へスイッチする。また後半の頭からは冨士祐樹も投入。ディフェンシブな側面が注目されがちな桑原の「攻撃的」な姿勢がこの試合でも出ていたが、桑原を「静」とすれば、より「動」タイプの金鐘必を核に据えることで、攻撃にスピードを持たせることにした。
この狙いははまり、後半開始直後に試合は再び動く。50分、「ディフェンスのポジションが甘かったので、最初から狙って、少しマイナスめに行ってから打ちました」と話す関光博が、右サイドでボールを受けたあと、少し中に寄せてからミドルシュート。ボールはゴール左隅を突き、北九州が勝ち越しに成功する。

しかし。ボランチに入って攻撃にリズムを出させていた金鐘必に不運が訪れる。55分にラフプレーを取られてイエローカード、その2分後には大分のカウンターに対応しようとして再びイエローカードが呈示されてしまうのだ。これで金鐘必は退場。北九州は2度目のボランチ変更を余儀なくされるが、ここにボランチ経験もある木村を据え、中盤はFW池元友樹をトップ下に下げるなど組み替えて、ダイヤモンドを維持しながら4−4−1の布陣を敷いた。
この変更でも北九州のバランスは崩れず、木村が周囲に目配せして的確なリスク管理をしたり、宮本亨やGK佐藤優がしっかりと落ち着かせようと声を掛け合うなどしたため、大分に波状攻撃を食らってはしまうものの、得点を与えないままなんとか耐えていった。

もちろんフィールドプレーヤーが1枚少なくなるのは珍しいケースではない。1枚少なければ、ほとんどの選手を自陣に残して守り抜くこともできるだろうし、攻撃に出たとしても林祐征のような長身選手をターゲットに据えてロングボール中心に組み立てれば、途中でボールを失ってカウンター攻撃を受けるというリスクも減らせるかもしれない。様々な手は考えられる。まだなんとでもできるという状態だ。

だが。北九州を襲った事態はこれにとどまらなかった。
80分。北九州側のペナルティエリア内で、右サイドの突破を試みていた大分のボールホルダーと福井が接触。すぐさまホイッスルが鳴り、福井にも2枚目となるイエローカードが出されてしまう。

――エリア内のファール。PK。そして、再びの同点。

ピッチを見れば、北九州の選手は9人しかいない。
PKがゴールネットを揺らしたのは82分。試合は少なくとも8分、試合の状況を見ればアディショナルタイムを含めて10分以上残っているのは容易に想像された。「時計を見たら、まだこんなにあるのかと思った」と木村がこぼしたように、戦慄さえ覚える長い時間が残されていた。
しかし切り替えは速かった。北九州はすぐに池元友樹に代えて小森田友明を投入。最終ラインを冨士、小森田、宮本亨の3バックとし、中盤はダイヤモンドを堅持した。その布陣は、2−2のスコアで終わっていいというものではなかった。「全員がやることをやって勝ちにいこうとした」と佐藤優。9人でも勝ちに行く。点を取りに行く。選手もスタッフも、もちろんサポーターも、誰一人あきらめなかった。
アディショナルタイムには関のクロスに林が頭で合わせてゴールに肉薄する決定機を作り出すなど、ホイッスルが鳴る瞬間まで攻め続けた。結果として2−2で終わるのものの、守りに入らず、攻撃の手をゆるめることはなかった。

試合後の記者会見では「いい試合をやりながらも、非常に難しい試合になってしまった」と複雑な表情を見せた三浦監督だったが、選手たちについては「そういう中でも勝点3を取りに行く。選手たちは成長したと感じています」と称えていた。その言葉は誰もがすんなりと受け止められるものだろう。2人も少ない状況で、1点を失うリスクにおびえるのであれば1点を取りに行く。この試合に勝つために、そして来季のために、1点を取りに行く――。この姿勢に惜しみない拍手を送りたい。

北九州のJリーグ2年目の挑戦は、勝点58、8位で終えた。
昨季19位に終わったチームが見せた大躍進。それは何も偶然や運によって導かれたものではない。三浦監督をはじめとするコーチングスタッフの熱意や努力は計り知れず、それに最初は突き動かされた感があった選手たちも次第に自立し、自らの手で自らを奮い立たせた。2年目の挑戦に当たっては、試合や練習を支えるチームスタッフやフロントスタッフ、グラウンドキーパーらの汗だくの労功も何度も目の当たりにした。
そして、生まれ変わったチームに、声で、手拍子で、また観に行けなくとも心を寄せ、雨の日も、風…台風が近づいた日も、霧の日も、サポーターが愛情を注ぎ続けた。たくさんの人に支えられた大躍進だったと、この点も胸を張りたい。

実はこの原稿を書いているときに契約満了の選手が発表された。発表された選手のうち、桑原裕義と宮川大輔は九州リーグ時代に招かれた選手だ。九州リーグからJFL、そしてJ2へ。大きく顔ぶれは変わったとはいえ、このチームには土のグラウンドを走り、堅い人工芝に打ち付けられていた日があったことを、いま思い出している。それは遠い昔のことのようでもあるが、当時のピッチに立ったり支えたりしていた人を含めて確かな私たちの歴史であり、未来へと繋がっていくギラヴァンツ北九州の道である。

成長は、歴史の長い糸と、1試合や1年という短い糸の編み物なのだろう。
最終戦を終えて、いま振り返りたいことはたくさんあるが、この拙稿を読んでいただいている方もそうだろうと思う。なので、読み終えたら携帯電話やパソコンの前を離れて、ぜひ身近な人と北九州がこの位置で終えることができた理由や意義を、大いに語らってほしい。いろいろな顔、表情が浮かび、いろいろの転機が見えてくるだろうと思う。

最後に新たな歴史を紡ぐ者となった佐藤優也の言葉で今季を締めくくりたい。その言葉は何よりも今の北九州を表すものだった。
「この試合が終わった時から、もう次のシーズンが始まっていると思っている」――。

昇格を目指せる順位へ。来季の足音は聞こえている。

以上

2011.12.04 Reported by 上田真之介
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