ゴールデンウィークに掛かる連戦が始まる初戦となる試合。この連戦の過ごし方は、横浜FC、京都の今シーズンを占うという点で大きな意味を持つ。さらに連戦では。試合を追うごとに修正が難しくなるだけに、この初戦はさらに大きな意味を持つ。横浜FCが上昇の端緒につくのか、京都が昇格争いの足場固めをするのか。試合内容とともに、勝敗に大きな意味がある一戦となる。

横浜FCは、ここまで勝利がない。しかし、山口素弘監督就任後の試合を見れば、結果は出ていないがチーム状態は上昇に転じているのは間違いない。初戦となった甲府戦こそ、完敗に近い内容だったが、草津戦、山形戦、湘南戦と試合を追うごとに山口監督が狙いとするサッカーを表現できる時間が増えている。そのポイントは、ゴールに繋がる前向きのボール運びの精度を高めること。DFラインから精度の高いビルドアップをする。そのために、パスの出し方、体の使い方や角度、そういった基本的な部分をこの1ヶ月ほど磨いてきている。前節の湘南戦も、前線から厳しいプレッシャーを掛ける湘南に対して腰を引くことなく、ビルドアップを続けた。以前であれば、苦し紛れに前線に大きなボールを蹴ることが多かったが、その回数は格段に減ってきている。きちんとボールをボランチが収めることで、攻撃の選択肢が増え、前線の大きなプレーヤーの生かし方も増えている。その手応えは、「ある意味で、（時には中盤を飛ばしてもいいという）こちらの意図と違う感じでやってくれたのが非常によかった。中盤の繋ぎなど落ち着いてボランチをうまく使いながらやっていた」（山口監督・湘南戦記者会見）、「みんなボール回しも逃げないで欲しがるようになってきたことが大きい。それが後ろからのビルドアップに役立っている。（選手がボールホルダに）顔を出すことが多くなったと思う」（杉山新）という言葉にも表れている。一歩一歩、玉は磨かれている。今週の練習でも、その玉を丹念に磨いている。その成果が試される試合となる。

一方で、横浜FCが勝てていない最大の原因はちょっとした集中力だろう。山形戦、湘南戦と防げるはずの失点で勝点を失ってしまっている。勝ちから遠ざかっていることで、集中という点で悪循環に陥っている面はあるが、その点はピッチ上の選手が殻を打ち破らないといけない。局面でどこまで全力を出し切れるか。集中をいかに90分間持続するか、それが横浜FCにとって勝敗の鍵になる。湘南から2点を奪った点は、前節の大きな収穫。だからこそ、その積み重ねた地力を勝ちに繋げる集中力が肝となる。

ニッパツ三ツ沢球技場に乗り込む京都は、6勝2敗で2位につける。現在4連勝中と勢いに乗るが、前節の東京V戦のように接戦の厳しい試合を交代選手で決めきるところは、昇格候補の筆頭というシーズン前の評価をそのまま表していると言って良いだろう。京都の特徴の大きな部分は、スモールフィールドにおける強さだろう。守備においてはボールサイドに人を掛けてボールを取り切る。攻撃においても、スモールフィールドにおけるポゼッションスキルは、J1、J2を通じても抜きんでていると言って良い。甲府時代に大木武監督の指導を受けた杉山選手も「（京都は）前へ前へ、守備だったら球際を厳しくということだし運動量がある。それに攻撃でも3人ぐらいで細かいパス回しをして打開できる選手がいる」と述べるように、自他共に向けるスーパーな特徴と言える。

この試合は、戦術的には京都の「スモールフィールド」をどう考えるか、この考え方が重要になる。密集した場面での攻守の攻防に勝てれば、その時間はその勝者のペースになる。もちろん、もともとスキルフルな京都の選手が1年以上掛けて磨いたスモールフィールドのプレーは、横浜FCよりも一日の長があるのは間違いない。しかし、それに対して逃げていては、京都からゴールを奪うのは難しい。スモールフィールドでの真っ向勝負が見所の1つとなる。その上で、ボールを取ったときに、いかに横に空いたスペースを使うか。同じようにボールサイドに寄せてくる山形戦では、狙いとするサイドチェンジの回数は少なかった。この回数を増やすことが横浜FCのゴールの可能性に直結するだろう。とにかく、スモールフィールドでの攻防とその後のプレー。ここに注目したい。

そして最後に結果を分けるのは、勝負に対する執念。京都は、その執念をこれまで見せ続けて結果を挙げている。横浜FCもその執念のレベルを上げて、底力をホームニッパツ三ツ沢球技場で見せつける時だ。大事な連戦初戦。1秒たりとも目を離してはいけない。

以上

2012.04.21 Reported by 松尾真一郎