両チームともリカバーとカバーが問われる一戦だった。
ともに週中の試合を戦ったあとの疲労回復、仙台の場合はJリーグヤマザキナビスコカップでの大敗からの立て直しというリカバーも、必要だった。
また、出場停止やコンディション不良から復帰する選手のカバーも求められていた。F東京は長谷川アーリアジャスールが出場停止ということに加え、権田修一と米本拓司が負傷を押して先発出場。ピッチに立った11人の総力で負傷者のぶんのカバーをすることが求められた。仙台は仙台で、急性胃腸炎で一時練習を欠席した赤嶺真吾を、体調を見極めた末に手倉森誠監督は先発起用。仙台にはもうひとり復帰をかけた選手がベンチ入りしていたのだが、彼については後程触れる。

試合は互いに中盤でチャンスの目を摘み合う展開で進んでいく。互いに好調な右サイドを警戒し、特に対面するサイドの守備を強化。「どちらかというと今日(のF東京)は左肩上がりでやっていました」（手倉森監督）と、大竹洋平と羽生直剛を中心に左サイドでつないでチャンスをうかがうことが多かったF東京だが、相手ゴール近くのエリアにボールを運んだところで、カバーリングの効いた仙台の守備の前に押し戻される。対して仙台は富田晋伍と角田誠の両ボランチからの配球を受けた赤嶺とウイルソンの2トップが後方の攻め上がりを引き出し、徐々にチャンスを作る。
そして前半も終わろうかというところで、隙を突いたリスタートから鎌田次郎がロングボールを送ると、ギリギリのタイミングで相手最終ラインの裏に抜けた赤嶺が先制点を決めた。実はこの時に赤嶺はハムストリングを痛めていたとのことだが、2010年途中まで在籍していた古巣相手に「大きな仕事をやってくれた」（手倉森監督）。逆にF東京にとっては「あの1点が痛かった」（大竹）、「最悪の時間帯に取られてしまった」（米本）と口を揃えた失点となった。

F東京は後半に攻勢を強めて逆転を狙いたいところだったが、仙台が前半で退いた赤嶺と菅井直樹に代わって入った松下年宏と田村直也が彼らをカバーしてF東京を食い止める。さらに仙台はスピードのある太田吉彰をMFからFWに移し、右サイドを中心にF東京のプレッシャーが緩くなった地点を見逃さずに攻撃を重ねた。58分には関口訓充が右サイドからのクロスに合わせて3試合連続ゴールを記録。76分には富田のシュートをゴール前で受けた太田が押しこんで追加点。87分には右サイドのFKから鎌田がフィニッシュして突き放した。

そしてベンチが「3-0ならば投入しようと思っていた」という選手が、90分に大声援の元でユアテックスタジアム仙台のピッチを踏んだ。プレシーズンの国際親善試合で負傷し、長期離脱していた梁勇基が帰ってきた。まだコンディションは100%ではないというが、「キャンプ中の練習試合にも出ることはできなかったし、これほど長い間を休んだこともなかったけれど、今こうして戻ってきて、サッカーをできるということの楽しさをもう一回感じることができました」と、スタジアムの空気を存分に味わっていた。

F東京も互いをカバーする組織力で攻撃的な姿勢を貫いたが、この日は仙台がカバーリングの効いた組織力で攻守ともに上回った。水曜日の敗戦からのリカバーも果たした、大きな勝利だった。

以上

2012.04.22 Reported by 板垣晴朗