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【J2:第9節 横浜FC vs 京都】レポート:京都のストロングポイントを2枚腰で封じた横浜FCが、満を持して「中身のある」初勝利。(12.04.23)

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この第9節を迎え、唯一の未勝利クラブだった横浜FCが、その長いトンネルをついに抜け出ることに成功した。それも相手は優勝候補の筆頭格である京都であり、さらに十分な内容を伴った上での勝利だった。プレビューでも触れた通り、京都のストロングポイントは、スモールフィールドでの細かなパスワークとプレッシング。この試合においても、その特長はピッチ上の随所に表現されていたと言って良い。しかし、横浜FCは京都がその特長を出しても、2枚腰とも言える守備で、慌てることなく90分間対処することに成功した。

京都の攻撃に対しては、前から守備の形にはめることができればプレッシングで取りに行くが、うまくいかないと見るや、速やかに帰陣し、ペナルティエリアの直ぐ外ぐらいに強固な守備ブロックを構成。京都が鮮やかなパスワークを見せても、ある意味「回させる」ぐらいの気持ちで、肝心のラストパスを封じた。もちろん、京都のポゼッションはJリーグでも随一のレベルであり、3分の安藤淳、16分の工藤浩平、34分の宮吉拓実のシュートは、いずれも決定的なチャンスだった。しかし、失点しない時間が増えるにつれ、この2枚腰の守備への自信が増していく。京都・大木武監督も「前節を見ると、横浜FCさんは早い攻撃には戻りは遅いかなと思いますが、うちは手数を掛けるだけ、そこは戻れたと思います。そこで崩しきるところまで行かなかった状況があった」と振り返ったが、スキルフルな京都に対して、横浜FCの守備が機能し続けた。

そして、横浜FCは攻撃においても、京都のプレッシングに対して単に中盤を省略するのではなく、ビルドアップで京都のポジショニングをずらしながら、攻め手を探った。阿部巧は「相手の守備を1枚はがせば、スペースが大きくできることはわかっていた」と振り返ったが、31分の大久保哲哉の先制点がまさにその形。京都のロングボールのクリアを拾うと、少し高い位置にいた阿部にボールが渡る。阿部は1枚目のプレスを感じながら、ダイレクトで中里崇宏に渡す。その中里も、ワンタッチで間髪を入れずに前線へ絶妙のロングボールを出すと、京都のDF2人とのバウンド勝負に競り勝った大久保が見事にゴールにたたき込んだ。今週のトレーニングでは、ビルドアップで相手のプレスにズレを作る練習をしていたが、その練習が見事に実るゴールだった。

今シーズン初めて前半終了時にリードを奪った「勝ち慣れていない」横浜FCにとっては、ゲーム展開のマネージメントは重要なポイントだったが、その懸念を49分再び大久保が払拭する。高地系治のFKに反応した田原豊がDFラインとGKの前でバックヘッドをする。その結果ふわりと浮いたボールに大久保が飛び込み2点目を挙げた。京都も、52分に原一樹、63分に伊藤優汰、70分に久保裕也を投入し5連勝への執念は見せるが、「慎重になった」と大木監督が振り返るように、横浜FCの守備ブロックを前にして有効打を繰り出せない空回り状態は解消できず。90+5分に、原のゴールで1点差に詰めるが時すでに遅し。横浜FCが、9試合目にしてようやく今季初勝利を挙げた。

試合後の横浜FCの選手の表情には、遅い初勝利への安堵が半分、それに確固たるプランを戦い抜いたという手応えが半分見て取れた。山口監督就任後の約1ヶ月の間で積み重ねてきたものが徐々に形になっている実感は、選手だけでなく、この試合を見たサポーターにもあるだろう。ただし、これはあくまでスタートポイント。「今日ぐらいやらないと勝てないということも十分わかったと思う」と山口監督が試合後に述べたように、苦労の末掴んだ1勝の重さを今後の試合に繋げていくことが重要だ。中里も「ボランチとしてはボールに触る回数が少なかったし、京都と5分でやれたとは思っていない。勝負には勝ったけどサッカーでは負けている」と述べるように、本来目指すべきポジションを考えると、向上させないといけない点は多い。勝ったからこそわかる問題点を胸に刻んで、ゴールデンウイークの連戦に臨みたい。

対する京都にとっては消化不良となったゲームだろう。早く帰陣されてしまう相手に対して、それを上回る攻撃での迫力を出せなかったことは、今後J2を戦っていく上での課題となるかもしれない。そして、大木監督「決定的な2本をいとも簡単に決められたのが(敗因の)大きな原因」と述べたように、自らのストロングポイントを披露し続けても、局面での勝負で勝点を落とす結果となったことは、今後の反省点だろう。監督、選手共に内容に対しては手応えがあるだけに、それを勝点に反映させるディテールを再点検することが求められる。

期待される戦力を持ちながら最下位付近に沈んでいる時に、目先の一勝ではなく敢えて時間を掛けて中身を詰める作業に徹することは難しい。しかし、それが花開いた時には、本当の力になる可能性が高い。その第一歩を踏み出した試合だった。

以上

2012.04.23 Reported by 松尾真一郎
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