福岡が強烈な上位追撃の狼煙を上げた。徳島を0-4と完膚なきまでに叩きのめし、これからの浮上が間違いないであろうことを観る者へ非常に強く印象付けたと言えよう。前田浩二監督は「何を取り組んできたかというところが今日は結果に結び付いたと思っています」と慎重な言葉を選びこの一戦を振り返っていたが、しかしこの一戦の内容は十分今後の勝点積み上げを予感させるもの。福岡にとっては波に乗り切れなかったこれまでの流れをガラリ変える大きなキッカケとなるはずである。
まず、このゲーム最大の注目点であった抱える問題の改善がどうかというところで見ると、福岡は確実に前進を果たしたと言っていい。今季初めてピッチに立った古賀正紘がリーダーシップを取って最終ラインを統率すれば、ボランチの末吉隼也と鈴木惇も常にコミュニケーションを図りながらバランスを維持。組織としてのまとまりある守備を全体で徹底していった。前半の終盤にこそ2度ほどヒヤリとする場面を徳島に作られたが、それ以外はほぼパーフェクトに近い守りを続けたと評価していいだろう。
そしてその上で福岡は自慢の攻撃力を発揮しこのゲームの主導権を握っていく。厳しいチェックで徳島からボールを奪うと、スリッピーなピッチコンディションにもかかわらず攻撃陣が精度の高い繋ぎを披露してチームのリズムを創っていったのである。また福岡は選手個々がハイレベルな技術も存分に活かしていたと言え、実際奪った得点の最後の決め手は全てそれであった。前半アディショナルタイムの先制点の場面では、密集の中を滑って抜けてきた速いボールを城後寿がピタリ足元に収めたことによって生まれたし、63分、66分に成岡翔が記録した2つのゴールはまさに彼が個の力を示したフィニッシュ。ピッチ表面の水を切って走ってきた右サイドからボールを入り込みながらのハーフボレーで的確に捉えたミート力は非常に素晴らしいもので、続いてみせた自らコースを作ってのシュートもため息が出るほどの見事さであったと言えよう。さらに徳島の息の根を止めた4点目も木原正和の個人能力が輝いたものだったが、いずれにしても福岡はチームとしての攻撃力に誇る個の力も効果的に結び付けて得点を量産。文句なしの快勝劇を演じて見せたのである。
ただ、だからと言って選手たちに浮かれや緩みなどは全く生まれていない様子。2ゴールの成岡でも試合後は「前半我慢して失点しなかったことがまずはよかったと思います」とチームの課題であった守備面に対してコメントし、組織全体のパフォーマンスが最優先であることをハッキリうかがわせた。それだけに福岡の今後からは目が離せない。高い能力をチームのために捧げる選手たちがこのゲームを足掛かりに安定して歯車を噛み合わせられるようになれば、きっと九州の雄は急浮上し上位グループに割って入ることだろう。
逆に敗れた徳島について述べると、悪くない状態にあったはずの守備が崩れてしまったことがこの厳しい大敗に繋がってしまったと言う他ない。「どうしても1本目は行くのですが、全体が連動してボールに機能していかない」と小林伸二監督も語っていたように、チームの守りはほとんどが単発なもの。グループとして追い込むボール奪取の形を作れていなかった。その結果ファーストアプローチをかわされた時には、そこからボールを自由に展開される苦しい状況に陥っていたのである。
それともうひとつ、個々が発生させていたイージーミスもこうした結末を招いた大きな要因だ。特に、ボールの繋ぎ段階でのパスミスは深刻なもので、それに関しては福岡との間にかなりの差があったと認めざるを得ないだろう。この日のようなピッチコンディションなら余計にパス精度が求められ、「そこ」というくらいシビアにピンポイントのコースが限定要求されるが、福岡がそれを遂行していたのに対し徳島は「そのへん」という感じ。そのため徳島は何度もボールを簡単に福岡へプレゼントしてしまっていたが、やはりそれでは…勝てない。
しかしながら、徳島においても最大の注目点であった問題の改善に関して言えば、チームは僅かながらも進歩を表現していたと評していいのではないか。徳島の問題は攻撃部分にあったが、調子の上向いているジオゴは起点になる回数を確実に増やしていたし、衛藤裕やFWとしてプレーした鈴木達也がそこへ絡んだ時には数少なくとも決定機を作り出していたのだから。となればあとはフィニッシュ精度だろう。事実、前半35分過ぎの連続好機を結実させられていたなら、このゲームの結果も異なるものとなっていたに違いない。
「サポーターには申し訳ないし、選手も苦しい想いをしていると思いますが、その中で新しい発見として見えてきたところもあるので、そこは大事に、プラスに、肥やしになるように次の試合に向かって準備していきたいと思います」と指揮官が話せば、試合ごとに存在感を増してきている花井聖は「気持ちを落とさずに、次のゲームもあるのでしっかり切り替えて臨みたい」と顔を上げていた。ゴールと白星が遠い今はもちろん辛い時だが、それでも徳島に全く光が見えていないわけではない。次節こそチームには現状を打破してその光を強く差し込ませる奮起を見せてもらいたい。
以上
2012.04.23 Reported by 松下英樹
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