いつも試合終了後の会見では評論家のような客観性で試合の流れを振り返る大宮・鈴木淳監督が、珍しく「今日はどんな形でも勝点3を取りたかった」と心情を吐露した。昨年まで頑固一徹に、「結果はもちろんだが、それ以上に内容が大事。結果を求めるだけの、内容のないサッカーをしてはいけない」と語り続けた指揮官が、「前節のダービーでメンタル的にもフィジカル的にも疲弊していた」というエクスキューズはあったものの、内容を捨てて結果を取りに行った。驚いたのは指揮官自らがそれを認めたことで、残留のために堅守速攻に舵を切った昨シーズン終盤ですら、そういった発言はなかったと記憶している。そして割り切った大宮は、ここまで未勝利の札幌に勝点を与えなかった。
札幌は面食らっただろう。ハイプレスとポゼッションをベースにした攻撃サッカーのはずの大宮は、「僕たちがボールを回せたくらい」と自嘲気味に近藤祐介が振り返ったほどに引いて構えた。早めにサイドにボールを運び、前田俊介と近藤の2トップが(高いはずの)最終ラインの裏を突くねらいは、「スペースが全然なくて」(近藤)ハマらなかった。
一方の大宮も、「前線から全員がハードワークしてくる」(鈴木監督)はずの札幌が、「あまり前からガンガン来なかった」(渡邉大剛)ことに戸惑ったものの、厳しくプレスに行かない割りに幅も奥行きもコンパクトな札幌の守備陣形の弱点を、徐々に効果的に突き始めた。札幌は縦のロングボールにはまだ危なげなく対処できていたが、ボールサイドに寄る分、長いサイドチェンジに付いていけない。10分、この1週間ずっと準備していたという、シンプルにサイドに展開してからのアーリークロスで、大宮が先制した。
先制から10分ほどは完全に大宮が主導権を握って攻め続けたが、ヤマザキナビスコカップ初戦の横浜FM戦と同じような「追加点を取る気持ちが足りない」(渡邉)悪癖が顔をのぞかせる。
同時に札幌は、追い込まれた状況下でハイプレスを敢行。大宮の攻撃が「何となくフィニッシュまで行ってた感じ」(渡邉)になり始めたことと相まって、高い位置でボールを奪えるようになり、リズムは札幌に移っていった。裏をねらうスペースはなかったが、前田や近藤がバイタルエリアでボールを受け、反転する場面が頻発する。ただ惜しむらくは、バイタルエリアでの仕掛けのパスに精度を欠き、スピードを持った突破ができなかった。それでも前半で9本のシュートは大宮を上回り、前半終了間際には前田が素晴らしい突破でDFを3人引きつけ、同点ゴールをお膳立てした。
後半から試合は仕切り直しとなったが、ハイプレスで攻撃的な札幌と、守りを固めてカウンターをねらう大宮という、順位と戦力から考えると真逆の展開は変わらなかった。大宮がこの日は精彩を欠いた東慶悟を58分にベンチに下げて上田康太を投入したことで、さらにその色は鮮明になった。前半よりは札幌にシュートまで持ち込ませる場面は減り、奪ってからのカウンターで決定機を何度も作った。71分の勝ち越し点はカウンターによるものではなかったが、大宮の注文通りの試合展開だったのは確かだ。札幌は古田寛幸、宮澤裕樹、内村圭宏らを投入して攻めにかかったが、前半と同じように最後の崩しに精度を欠き、そこからカウンターの脅威にさらされ続けた。87分には深谷友基を投入して5バックで守りにかかった大宮を、最後まで崩せなかった。
札幌には少々気の毒だった気がしなくもない。明らかに戦力的には上の相手が、引いて守ってカウンターという弱者の戦い方をしてきたのだから。本来、アウェイでもあるし札幌がカウンターねらいで良かったのだが、ここまで1分6敗という状況がそれを許さず、大宮の注文相撲を演じることになった。それでも札幌は、最下位とはいえ得点数も失点数もそうひどい数字ではない。シュートも撃てているし、この日も大宮よりもシュート数は上回った。問題は精度。「最後のパスがズレてリズムが壊れたり、そこからカウンター」(近藤)というのはやはり厳しい。またクロスに対するDFのポジショニングと連係ミスがこの日の2失点を招いただけに、その改善も急務だが、まだ立て直す時間はある。
そして大宮には、それでいいのか、という思いは正直ある。最下位のチームを相手に、追求してきたハイプレスとポゼッションを捨て、引いて守った。前節は浦和のカウンターを警戒しての措置だったが、札幌のカウンターを同レベルで怖がる必要があったかどうか。最後はなりふりかまわない5バック。相手が放り込みにきたわけでも、高さで劣勢になっていたわけでもない。4バックで破綻なく対応できていたし、5バックにしてからは攻め手は完全にカウンターしかなくなった。降格の危機にあるとか、前節のダービーのように自らの進退にかかわる状況でもないのに、あの頑固一徹な指揮官が内容を捨てて結果にこだわったことに、多少の戸惑いを感じている。
かといって批判したいわけではない。どんな勝ち方でも結果は何より大事だ。これで2010年以来の連勝を記録し、昨年は2回しか勝てなかったホームで、今年は早くも2勝目。鈴木監督の口癖としてもう一つ、「あくまでシーズンをトータルで考える」というものがある。おそらくだが昨年、連勝ができないこと、またホームで勝てないことに対してメディアやサポーターが過敏になり、それが選手のメンタルだけでなくプレーにも影響した二の舞を何としても避けたかったのではないか。長いシーズンを考えると、ここで理想はひとまず置いてでも、呪縛を払拭しておくことが必要だと判断したのだろう。終盤の5バックでの守備にしても、逃げ切る形を確立するために、あえてやったと思える。野球で9回1アウトまで好投した先発ピッチャーに、ランナーを許しているいないにかかわらず、リリーフエースをマウンドに送るように。
理想を捨ててつかんだ勝点3だが、理想と現実は必ずしも二者択一ではない。これで今季3勝目を挙げ、10位に浮上。あえて現実的な戦い方を徹底したことで、再び理想を追うための状況は整った。次節、アウェイ神戸(5/3・祝)でどんな戦い方を見せるのか、興味深く見守りたい。
以上
2012.04.29 Reported by 芥川和久















