順位表で見ると16位の横浜FCと19位の町田の対戦。つまり、下位に位置し、結果を残せなかった序盤戦を挽回し上昇に転じるという難しい仕事に直面している両チームの戦いとなる。一方で横浜FCは2連勝中、町田はJリーグ入会初年度で2勝を挙げて甲府にも引き分けるなど、ある種の自信を身につけながら入る試合となる。しかし、故スティーブ・ジョブズが演説で残した一節"Stay Hungry"が象徴するように、上昇に転じる原動力はより成長して結果を残すというどん欲さ。この試合では、そのどん欲さをより多くピッチで出すことが勝敗を分けるだろう。
横浜FCは、前節の岐阜戦は田原豊の2ゴールと無失点で京都戦に続いて連勝を果たした。岐阜戦は一見すると危なげない試合にも見えたが、山口素弘監督が試合後に「予想通り、非常に厳しいゲーム」と振り返ったように、盤石な試合ではなかった。「試合前から動きが重かった。京都戦の時は運動量もあってコーチングの結果を後半は修正してくれたが、岐阜戦は後半疲れていたこともあって90分間ずっとコーチングをしていた」とシュナイダー潤之介が振り返ったように、ピッチの中には修正点がたくさん転がっていた。岐阜戦で良い動きを見せた佐藤謙介も「立ち上がりは最悪。強い相手だったら一発でやられていたと思う。あそこで失点していたら、内容も変わったと思う」と、今の良い流れをさらに上向きにするためにも危機感を持っている。中2日で迎える試合だけに、戦術的な修正を行うことは難しいが、「京都戦で最後に失点したので、僕らはまだまだというのを実感した。前節も完封したけど、町田戦では変な勘違いをしないようにコーチングしたい」(シュナイダー潤之介)というように試合に向かう姿勢をどん欲に出していきたいところだ。
もちろん横浜FCの2連勝は内容が伴ったものであり、上昇気流は選手、サポーターも実感しているだろう。大久保哲哉、田原の2トップのコンビネーションが増しており、相手がそのストロングポイントを抑えようとすれば、ボランチへのマークがおろそかになりその活躍のチャンスが増える。攻撃のバリエーションも試合を追うごとに増えており、一方で場面に応じた守備の意思統一も徐々に精度が高くなっている。この流れを出すべく手綱を緩めない山口采配にも注目したい。
一方の町田も、「前半は大変悪いプレーをしました。何か恐れを感じてプレーしたように見えました。我々は沢山パスをつなぐことを試みていますが、ほとんどつなぐことが出来ませんでした」とアルディレス監督が振り返るように、前節は前半の出来が良くなく、後半には持ち直しチャンスも作ったものの守備に追われたことがボディブローのように効く形で、後手を踏む場面を作りPKを献上してしまった。アルディレス監督が目指す、ポゼッションをしながらペースを握るサッカーのクオリティにまだまだムラがあり、ステップアップの途中段階と言えるのかもしれない。ただし、前節の対戦相手の反町康治監督が「町田さんはしっかりボールをつなぐチーム。(J2のボール保持率は)一番が千葉、二番が京都、三番目が実は町田」と評するように、アルディレス監督の強い指導力の下ぶれずにスタイルを貫いていることは大きな強みだ。まずは、前節の反省点を生かし、前半から横浜FCを上回るポゼッションを見せる勢いが重要となる。そして、ポストになれる平本一樹と、積極性を持ちスキルフルな北井佑季の2トップに隙を許せば、ゴールを陥れる力は十分に持っている。太田康介の出場停止はマイナスポイントだが、この逆境をどん欲さに変えて、自ら目指す強みを出していきたい。
両チームともポゼッションを基調とするだけに、中盤での攻防、駆け引きが面白くなることは間違いない。パスコースを作るための動き、そのためのスペースの奪い合いは大きな注目ポイントだ。横浜FCは「前進するための保持」を磨いてきて2連勝に結びつけた。町田も、同じくポゼッション能力を磨いている最中。上昇に向けて、この試合で出したい武器は一緒だ。あとは、どれだけ長い時間、良さを出すか。その意欲が問われることになる。
横浜を起点にすると、現在のJ2において町田は一番近距離の対戦相手。町田からも多くのサポーターが訪れることが予想される。今のところ正式な名前はないが、「横浜線ダービー」と正式に命名できるような熱戦を期待したい。
以上
2012.04.29 Reported by 松尾真一郎
J’s GOALニュース
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