9節を終えて最下位に転落し、4月27日の10節・愛媛戦では1―4の大敗。試合後、とりぎんバードスタジアムは重苦しい空気に包まれていた。しかし、わずか6日後のこの日、雰囲気は一変。試合終了のホイッスルとともに観客が一斉に立ち上がり、スタンド中に喜びの輪が広がっていく。11節で栃木に1−0の勝利を収め、最下位を脱出してホームに戻ってきた鳥取が、富山を下し、昨季のJ2昇格以来初めてとなるリーグ戦連勝を飾った。
立ち上がりは鳥取のプレーが不安定で、攻めに出ようとしたところで連係の乱れが出るなど、危ない形でボールを奪われる場面が多かった。さらに25分には、パスワークの軸となる実信憲明が、右足ふくらはぎを痛めて途中交代。思うように攻め込めない状況が続く中でのアクシデントによって、嫌な流れが加速するかと思われた。
しかし、実信が退いた直後の28分、前節にそれまでのサイドMFからボランチに入り、運動量と展開力を生かして好プレーを見せた美尾敦が、均衡を破るゴールを決める。中央でパスを受けて富山の加藤弘堅をかわし、左足を振り抜くと、無回転のブレ球となった強烈なシュートがネットを揺らした。本人が「積極的にゴールを狙う形が出てきた中での一発で、イメージ通り」と語り、鳥取の吉澤英生監督、富山の安間貴義監督が、試合後の会見で異口同音に「スーパー」と振り返った、鮮やかなミドルシュートだった。
リードを許した富山だが、リズムが悪かったわけではなく、その後に多くのチャンスを作って反撃に転じた。しかし、37分に黒部光昭とのパス交換で中央を破った大西容平のシュートは、鳥取GK小針清允の鋭い飛び出しに阻まれてゴールならず。前半終了間際のアディショナルタイムには、ゴール前のFKを加藤が直接狙ったが、クロスバーに当たって決まらなかった。
富山は後半の立ち上がりも良い形で攻め込んだものの、50分、鳥取の水本勝成がゴール前で空振りしたミスを突いた大西のシュートは、右ポストに当たって決まらず。55分にはCKから平野甲斐がヘッドで狙ったが、今度は小針のファインセーブに阻まれた。鳥取は今季、後半立ち上がりに失点することが多く、富山が追い付いていれば、一気に流れを引き寄せることができていただろう。しかし、64分の大西のヘッドも小針に止められるなど、どうしても1点を奪うことができない。
厳しい時間帯をしのいだ鳥取も、72分に尾崎瑛一郎がドリブル突破から左足で狙ったが、クロスバーに当たって決まらず。75分には右CKに戸川健太が飛び込んだが、右ポストに当たり、突き放すことができない。富山もサイドから早めにクロスを送り、セカンドボールを拾って粘り強く攻めたが、シュートの精度を欠き、最後までゴールを奪えず。結局、前半の1点が決勝点となり、鳥取が2試合連続となる1―0の勝利を飾った。
富山は、安間監督が「本当に悔しい試合です。中2日であっても、ゲームの入りから選手がよく動き、よく切り替え、よくボールも動かし、相手ゴールに迫り、多くのチャンスを作ってくれました」と振り返った通り、内容そのものは悪くなかった。前節の岐阜戦は、内容が悪いながらも勝利をつかんでおり、安間監督が「なかなかサッカーの矛盾に良い答えが出せません」と言うように、内容と結果が食い違う状況が続いている。だが、10位以内という目標に近づくためには、どこかで流れを変えなければならない。次節は町田、次々節は横浜FCと、順位が近い相手との対戦が続くだけに、大西は「中2日で次の試合が来るし、(この敗戦を)引きずるのは絶対にダメ。良い準備をしていきたい」と語った。
鳥取は冒頭にも記した通り、昇格後初の連勝で、17位まで浮上。ただ、この日の富山戦、さらに前節の栃木戦とも、自陣での大きなミスからピンチを迎えており、相手のシュートの精度の低さや、GK小針の再三の好セーブに救われたものの、一歩間違えれば連敗していた可能性も十分にあった。相手に崩されているわけではないのに決定機を作られる点は、早急に改善すべきポイントと言える。
ただ、どんな形であれ結果が必要だった状況で、それをもぎ取ったことで、苦しい状況を抜け出すきっかけをつかむことはできた。10節までは、結果が出ないこと、ミスの多さにチーム全体が委縮し、その影響でミスが増える悪循環に陥っていたが、連勝中の2試合は、危機感が良い形でチームの起爆剤となっている。吉澤監督は「まだ2つ勝っただけですし、順位もさほど上がっているわけではない」と現状を見据えつつ、「勇気を持って、ミスを恐れず、というプレーを継続しながら、もっと上を目指してやっていきたい」と語り、さらなる浮上を期していた。
以上
2012.05.04 Reported by 石倉利英















