1タッチの連鎖が小気味いい。自陣で奪うやFWを介した攻勢は流れるよう。フィニッシュもまたダイレクトだ。相手のパスカットのこぼれ球に反応した馬場賢治が、前に重心の傾いたGKを見定めて華麗に仕留めた。荻晃太の態勢を思えば、パスカットこそされたものの、左サイドを駆け上がった高山薫のランと永木亮太のスルーパスはアシストになろう。
39分に訪れたこの先制の場面まで湘南にチャンスはほぼなかった。「繋げてはいたけれど、崩すまでにはならなかった」と高山は振り返っている。甲府のコンパクトな2ラインが決定機を許さず、伊東輝悦や山本英臣らベテランも要所を潰す。奪えば柏好文と福田健介の右サイドを中心に攻め立て、ゴール前ではダヴィと高崎寛之の強力2トップが手ぐすねを引いている。対して湘南も大野和成をはじめボールの出どころやフィニッシュの局面で粘り強く対応し、相手にため息をつかせている。伊東やドウグラスが菊池大介に強く寄せたように、湘南の反撃の匂いも同時に感じていたのかもしれない。実際、先制点の直前には菊池がボール奪取から絶妙なスルーパスを狙い、裏へ抜け出した古橋達弥の際どいシュートに繋げている。
「チャンスはつくれている。焦れずにこのペースを続けること」城福浩監督にそう送り出された甲府イレブンは後半、ピンバのシュートを皮切りに再び圧した。同点劇は開始間もない。52分、こぼれ球を拾った柏のクロスから高崎が左足を振り抜く。このとき、湘南はDF陣が攻撃とカバーに出ていたためゴール前が手薄だった。失ってもなお奪い返したが、セカンドボールは甲府にこぼれ、結果的に最後の局面で後手を踏んだ。追加点を目指して仕掛けた真っ向勝負はいかにも湘南らしい。ただリスクチャレンジや推進力はそのままに、奪ったボールをフィニッシュまで運ぶ術はさらに磨く必要があろう。主導権をより手繰れるはずだ。
追いついた甲府の攻勢はさらに増す。「後ろの3人の機動力だけでは難しい」曹貴裁監督が判断を明かしたように、同点ながら湘南が守備に重心を傾けなければならないほど、甲府の圧力は強い。鎌田が甲府の右サイドの対応に回り、交代で入った島村毅はファーサイドでクロスに備えた。さらには4バックへとシフトし、守備の安定から反撃を狙った。かたや甲府も選手交代を重ね追加点を目指す。前半のうちに3枚の警告を重ねていた甲府に対し、後半は合わせ鏡のように湘南が警告を重ねた。そして気付けば大野が2枚目のカードを数えて退場となり、湘南は10人の戦いを余儀なくされる。
計9本のシュートを記録した高崎をはじめ、交代で入った青木孝太が枠を狙うなど甲府は攻勢に出た。対して湘南も、終盤に入った山口貴弘とゲームキャプテンの遠藤を中心に敵の攻撃を凌ぎ、セットプレーも封じた。ときに前線の坂本紘司を経由してカウンターに転じるなど、守備から攻撃への切り替えも勢いを失わない。そうして最後まで互いに譲らず、結果、勝負はドローで幕を閉じた。
「ひとり少ないなかで凌ぎきった。いままでの湘南とすこしテイストは違うが、勝点3に値する大きな試合だったのではないかと思う」湘南の曹監督は交代選手の貢献に触れつつチームの前進を語った。意識を守備に傾けたうえで追加点を許さなかった粘りは、今後にきっと活きるだろう。また今季初めて退場者を出したものの、クリーンファイトは続けている。一方、甲府の城福監督は、「今日の内容なら我々は勝たなければいけなかったと思う」と悔しさを滲ませた。ただ、「選手たちは頑張っているし、形はつくれている。ポジティブに捉えたい」と、選手をねぎらいフィニッシュの精度を課題に挙げた。分け合った勝点1をプラスに捉え、ともにゴールデンウィークをいいかたちで締め括りたい。
以上
2012.05.04 Reported by 隈元大吾















