「立ち上がりが悪かったとしても全てが終わりではない。90分で決まるもの。いい方向に進むように対応することが大事」。前節・町田戦を前に三浦泰年監督はそう話していた。果たして町田戦は、相手の高い位置からのプレスに苦しんだほか、イージーなミスも出て、立ち上がりに流れを掴めなかった。それでも77分、池元友樹が自ら得たPKを決めて先制。「明らかに内容で町田に劣った」(三浦監督)中で、少ないチャンスをものにして勝点3を手にした。勝因は立ち上がりの悪さを覆した柔軟な対応力だ。
北九州は前節、メンバーをいくつか入れ替えた。手当てが必要なポジションがあることは自明だったが、中2日のタイトスケジュールの中でボランチとセンターバックという中軸の入れ替えは、収穫と危険が紙一重。誰が出ても北九州らしいサッカーができ、新しい選手を生かせるチーム力の深さは確かにあるが、厳しいスケジュールでは練習はコンディション調整が先立つ。連係の確認には時間が割けず、実際に町田戦はバランスを失った。ただ、木村祐志がボランチに下がったり、森村昂太を入れて前への推進力を高めるなど試合中に修正。結果としてゲームを立て直すことに成功した。このゲーム中に修正できた点をプラスに捉えて、北九州は今節に臨む。
タイトスケジュールの中で迎える横浜FC戦。下位チームとの対戦となるが、メンバーを入れ替えてまだ間もなく、連係が噛み合うまでの状態に数日間で持っていくことは難しい。立ち上がりはやはり横浜FCに分があると考えていいだろう。北九州としてはここで失点しないことが重要で、相手にボールを持たれながらも局面での強さを維持しシュートまでは持って行かれないようにしたい。
我慢を強いられる状況は決して北九州らしいサッカーではないかもしれないが、いかなるコンディションでも確実に勝点を拾うことは、夏場の連戦やプレーオフでも生きてくる。耐えながらも、修正したり、柔軟な組み替えを行いながら次第にリズムを作っていくことで、少ないチャンスをものにする。そんな泥臭さが求められる。
対する横浜FCは前節、好調の岡山と対戦。攻撃のかたちは作れていたが最後の崩しにまでは至らず0−1で惜敗を喫した。前節後、山口素弘監督は「岡山は失点も少ないし、守るとしたら9人でブロックを作る」と岡山のディフェンスに苦しめられたことに言及した。横浜FCは前線に田原豊と大久保哲哉の両長身FWを据えるが、まだ生かし切れておらず、岡山の堅守を破れなかった。ターゲットに放ったあとの2列目からのスピードを上げて、組織的に崩していかなければ、対人プレーで失点の芽を摘んでいる北九州からも得点を挙げるのは難しい。ただ、それができれば勝機を掴むことは難しくはないだろう。
もっとも横浜FCには、三浦知良という切り札がある――。
三浦知良。そう、今節は北九州で指揮を執る兄・泰年監督と、弟、カズこと知良の直接対決だ。
12人目の選手の如くテクニカルエリアをめいっぱい使って身振り手振り、時に熱い声でピッチ上のイレブンを鼓舞する兄・泰年。そして、そのイレブンに挑む知良。三浦監督はあるとき、こう話したことがある。「カズのことを『持っている』という人がいるが、持っているというのは努力しているということだ。努力しているからこそ、そこにボールが入る」。不断の努力でいまもピッチに立つ弟に対するオマージュだ。
ただ、90分の間だけは、兄弟ではなくライバルチームの監督と選手。リスペクトしているがゆえに正面から戦うだろう。それもまた三浦兄弟のメンタリティだ。
連戦最後の試合。疲労の中での試合は、必ずしも十分な内容とパフォーマンスを見せられるゲームにはならない。しかし、日本のサッカーを牽引してきた2人の努力家が、J2の舞台で対峙する。煌々と灯るライトに照らされた兄弟が、その背中で語る『努力の軌跡』。連休最終日、家族とともに、子どもたちとともに、戦う背中を見つめたい。
以上
2012.05.05 Reported by 上田真之介
J’s GOALニュース
一覧へ【J2:第13節 北九州 vs 横浜FC】プレビュー:チームの底力が見えてくる連戦最終節。北九州はゲーム中の修正が生きるか。三浦兄弟対決にも注目だ。(12.05.05)















