勝負は試合前から始まっていた。
松本の反町康治監督と湘南の曹貴裁監督は、監督とヘッドコーチとして3年間に渡り同じ釜の飯を食ってきた同志である。当然、互いの性格から手の内までは知り尽くしている。互いが戦前の情報戦に熱を込めて来る事は予想の範囲内であった。
しかし――。
試合前に配布されたメンバー表。目を通した瞬間、多くのクエスチョンマークが浮かんだことを告白させていただく。戦前は『同じ3-4-2-1をフォーメーションに採用するチーム同士の戦い』が予想されていた(事実、最終的にはそうなったのだが)。が、アウェイチームもホームチームもDFとして発表された選手は4人。この表だけを見れば、「今日は4バックのチーム同士の戦いだな」と思えてしまうのである。
筆者が担当しているホームチームの松本に絞ってみても、試合開始の笛の音が鳴るまでは、4バックの可能性も捨てきれないと考えていた。DF登録となっていた楠瀬章仁はこれまで左ウィングバック或いは2シャドーの一角での起用が主だったため、サイドバックでの起用はないと確信していたが、鐡戸裕史が1枚下がれば、それもありうる。多々良敦斗は現に昨シーズンは右サイドバックでの出場機会も多かったのである。
しかし、4バックでスタートしたのはアウェイの湘南の側だった。「松本が3バックか4バックか分からなかった」とは湘南・曹監督の言葉だが、お互いが相手の裏の裏をかこうと試合前から火花散る心理戦を遂行したのである。この段階で、この試合の展開は読めなくなっていた。
松本はここまで奮闘してきた2シャドーを「この前の試合後から身体が重いように見えた」(反町監督)として、弦巻健人と船山貴之から、木島徹也と楠瀬にチェンジすることでフレッシュな力に期待した。2人ともその期待に応え、特に楠瀬は、持ち味の『キレッキレのドリブル』で湘南守備陣を大いに惑わせることに成功。高い位置からボールを追い続け、湘南に主導権を握らせない、自分たちの戦いは出来ていた。
とはいえ、湘南も沈黙することはない。11分に馬場賢治が狭い位置を狙ったシュートを放つ。野澤洋輔が間一髪はね返したものの、コースは完璧だった。湘南はこの直後から、フォーメーションを普段の3-4-2-1にチェンジし、ボールを回し始める。松本にとっては走らされてしまう展開である。それでも21分に鐡戸からの中央へのクロスを玉林睦実が、36分には楠瀬がドリブルで抜け出し、左斜めの位置からシュートを放つがこれが決まらない。
ゴールこそ決まらなかったものの、前半は松本のシュート数が8本に対し、湘南は5本。「松本の守備が堅く、戸惑ってパスミスからピンチを招いた」(古林将太)という、松本にとってはしてやったりの展開である。しかし、曹監督が「もっとミドルを打っていこう」とハーフタイムに檄を飛ばしたことで、湘南は遠目からのミドルシュートを連発し、松本の守備を崩そうと試みた。前半にはなかったゴールへの積極的な姿勢が奏功し、流れは湘南に傾く。それでも松本は踏ん張った。64分には完全に崩された形となりながら、ゴール真正面のシュートを野澤が止めるビッグプレーで難を逃れる。
どちらに転んでもおかしくない一進一退のゲームは、85分から88分の3分間で激動する。
85分、途中出場コンビが魅せる。弦巻が湘南3バックの間を抜けるパスを通し、その球に反応した船山が冷静に流し込んだ。アディショナルタイムを含めても、残り10分切っている時間での"バースデーゴール"。勝点3は間違いなく松本の掌中にあった。
しかし、「神様が勝点1で終われ」(曹監督)という試合は、その3分後に更なるドラマが待っていた。セカンドボールを拾った馬場がそのままドリブルで切れ込み、混戦の中を抜け出し放ったシュートはゴールネットに突き刺さった。
首位からの勝点1は確かに貴重なもので、試合もポジティブなものであった。しかし、あと5分守りきれば金星を得たという事実も間違いではない。この日、好セーブを連発した野澤は今後の課題を苦笑いで「『良かったゲーム』を減らしていくこと」と語った。チーム一丸となって奮闘することで、試合の主導権はつかめるようになった。ここから先、更に上を目指すにはこの悔しさをバネにいかに強かにゲームを拾っていくかに尽きる。事実、湘南には負け試合を起死回生の同点弾で勝点1のゲームに変える力があったのだ。
以上
2012.05.07 Reported by 多岐太宿
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