新潟が1-0で清水を下して、リーグ戦今季ホーム初勝利。6月11日に就任した柳下正明監督の初戦を飾った。前半39分、藤田征也のゴールで挙げた1点を粘り強く守った。清水は序盤からボールを支配するが、一瞬の隙を突かれて失点。致命傷になった。
大歓声の中、少し遠慮がちに「ゆりかごダンス」が行われた。「ちょっと遠かったので、後ろの選手たちが来てくれなくて」。藤田は照れ笑いする。得点後、しばらく間をおいて行われた「ゆりかご」は6月5日に誕生した長男のため。左サイドのフラッグ付近で始めてしまったため、リスタートに戻った守備陣は参加できず、祝ったのは前線のメンバーだけだった。
もちろん、それでも喜びは最大級だ。長男のため、そしてチームを救うためのゴールは絶好の形で生まれた。田中亜土夢が左サイドからゴール前に切れ込む。それに合わせて、藤田は逆サイドからゴール前に走る。「亜土夢がいい形でボールを入れてくれた。合わせるだけだった」。田中からのクロスにトップスピードのまま走り込み、ゴールにたたき込んだ。
藤田にとっては昨年の開幕戦・福岡戦以来のゴール。その時も右サイドから走り込み、逆サイドのチョ・ヨンチョル(現大宮)からのシュート性のボールを押し込んだ。得意の形を逃さなかった。「積極的に前に出られるようになった。今は攻撃に向かう回数が増えている」。1年3カ月ぶりのゴールには手応えが詰まっていた。
同時にチームの可能性も感じていた。「複数の選手がスペースに入っていた。連動して攻撃できた」。前半、新潟のシュートはこの1本だけ。それでもワンチャンスをものにできたのは、全員の意思が統一できていたから。藤田のゴールはチームとして取るべき形で取った得点だった。
初采配を勝利で飾った柳下監督は「征也と亜土夢は飛び出す力を持っている。いいタイミングで連動していた」と得点パターンを評価した。それ以上に「選手は1点取った後も、守るのではなく得点を取りにいった」と攻撃的な姿勢をたたえた。
11日の就任から準備期間は4日。その間に攻撃に向かう姿勢を徹底させた。パス&ゴー、サポート、攻守の切り替え。「守備の修正点もあるが、守ってゼロに抑えても得点できなければ勝点1だけ。今は勝点3が必要。そのためにも得点しなければ」。指揮官の真っ向勝負を目指す意図は、短期間で選手に伝わった。清水戦は取り組んできたことの成果が結果として表れた、最初の1つになった。
清水にとっては痛恨の失点だった。田中に進入を許し、逆サイドの藤田にも走り込まれた。マークが甘くなった。その前の段階、新潟が中央でボールをつなぐ間もボールに対して寄せ切れなかった。
ゴトビ監督は「コントロールしていても、1つ集中を欠いただけで失点する」と隙を見せた時間帯を悔やんだ。それまでは清水がゲームを支配していた。ビルドアップからサイドを使い、セカンドボールもほぼ完璧に拾う。スムーズなパスワークで新潟のプレスを交わした。
ただ、そこから相手に脅威を与える攻撃ができなかった。放ったシュートは結果的に7本。前半は6本放ったが、相手のブロックの外からのものがほとんど。「10回パスをつないだから得点できるわけではない。1本のパスでゴールを奪わないと」。小野伸二が言うように、形は作ってもそれが実にならない。フラストレーションがたまる内容だった。
新潟はようやくホームで今季初勝利。順位は16位といまだ降格圏。この1勝で状況が大きく変わったわけではない。ただ、この先の可能性を感じさせる勝点3だった。清水には、スタイルを磨き続ける必要性を確認させる一戦になった。
以上
2012.06.17 Reported by 斎藤慎一郎(ニューズ・ライン)
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