今季ヤマハで公式戦8戦全勝と抜群の強さを見せてきた磐田に土をつけたのは西野朗監督率いる神戸だった。
ゲームは序盤に動く。6分、野沢拓也のCKをニアサイドで磐田・宮崎智彦が相手と競り合いながらクリアしたボールがバーへ直撃。このリフレクションをファーサイドでいち早く反応した小川慶治朗が頭で押し込み、神戸が先制。幸運な形でのゴールだったが、CKを獲得するまでには必然性があった。磐田のビルドアップに対して前線からプレスを仕掛け、自由なボール回しを許さない。相手に攻撃をさせないばかりか4分には小川慶治朗がこの試合最初のシュートを放ち、続く5分には野沢拓也のパスを上手くコントロールした大久保嘉人が磐田GK・八田直樹と1対1になる決定機もあり、その流れからCKを獲得。神戸がやや優勢に進めていた時間帯で効率よく得点を奪った。これには西野監督も「いい守備からいい攻撃を仕掛けていくというリズムをキックオフから連動してできたことが先制につながった」と選手を称賛した。
1点ビハインドとなった磐田は20分、ペク ソンドンの負傷退場で序盤にして交代カードを1枚切ることを余儀なくされる。不運が重なり嫌な空気が流れてもおかしくない場面でもあったが、今季の磐田は「だれが出ても勝つ」(森下仁志監督)ことを目指すことを途中投入された背番号23が体現する。直後の26分の同点弾は鮮やかなパスワークから生まれた。神戸のプレスにさらされながらも自陣から10本以上のパスをつなぎ、最後は前田遼一の背後に走り込んだ山本康裕が駒野友一のクロスをヘディングで叩き込み同点とする。
1-1となった後は前半終了までの間、磐田がよりボールを支配し主導権を握った。山本康裕の得点の起点を作った山崎亮平が29分、30分と今度は自らゴールに迫ったが、いずれもあと一歩のところで神戸の寄せを受ける。「1、2点取れば状況は変わった」(同選手)。ここで追加点を奪えていれば一方的な展開となった可能性もあったが、1-1で前半を折り返したことで神戸に修正の余地を与えることとなる。
神戸・伊野波雅彦は「これまではあそこでズルズル失点してしまうことが多かった。前半を1−1で耐えればハーフタイムでもう一度切り替えられると思っていた。前半にあれ以上失点を食らわなかったことが、この結果につながった」と前半を振り返る。後半開始から小川慶治朗の位置を左サイドに置く配置とし、磐田のストロングポイントである駒野友一をさらに強く警戒。ただし、極端に守備的にシフトしたわけではなかった。「僕は走れるので、しっかり守備もしてそこから飛び出していくというのが求められていたと思う」とその役割を語る小川慶治朗は53分、その言葉の通り、今度は見事なカウンターから勝ち越し点を決める。相手のCKのこぼれ球を拾い、自陣でつないだボールを最後はボランチ・大屋翼がスルーパス。精度の高いグラウンダーパスが磐田・小林裕紀と藤田義明のギャップを突き、前線の小川慶治朗へぴたり。八田直樹と1対1となった背番号13が確実にゴールネットを揺らし、1-2。さらに62分には徳重健太のゴールキックのこぼれ球を大久保嘉人が右サイドで粘ってマイボールとし、クロス。これをまたしても小川慶治朗が飛び込み、勝利を大きくたぐり寄せた。
2点を追う磐田は配置やシステムを変えながら攻勢を仕掛ける。64分には小林裕紀を下げて松浦拓弥を投入。ダブルボランチをロドリゴソウトと山本康裕とし、中盤2列目も右から山田大記、松浦拓弥、山崎亮平という並びにシフト。さらに80分には宮崎智彦を下げて3バックとし、両サイドにより高い位置を取らせて相手ゴールを狙ったが神戸に逃げ切られ、ホームでの連勝がついに止まることになった。
試合後、磐田・森下仁志監督は「負けに偶然はない」とし、とりわけ後半の戦いについて「相手が自分たちを消してきた状況でも、やはり自分たちの良さをもっと出せるようにトレーニングするだけ」と前を向いた。対する神戸・西野朗監督は序盤の戦いを「ジュビロもあそこまでハイプレスが来るとは予測していなかったと思う」と振り返り、勝因の一つとした。ハットトリックで勝利に貢献した小川慶治朗は同監督の就任後初勝利に「一緒に初勝利を掴むことができた」と笑顔を見せた。
すでに梅雨入りしている東海地方はこの日も終日雨が降り続けるすっきりしない天気となったが、その中で互いのよさが随所に光る好ゲームとなり、締まりのある90分だったと言えるだろう。
以上
2012.06.17 Reported by 南間健治
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