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【J1:第14節 大宮 vs 柏】レポート:昨季リーグ王者に守備の不安を突かれ4失点。ベルデニック大宮、2得点も苦い船出(12.06.17)

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昨季リーグ王者をホームに迎え、期待と不安に包まれたベルデニック大宮の船出。ここまでの準備期間は、たったの5日間。期待は攻撃に、不安は守備にあり、それぞれの大きさが2−4というスコアとして表れた。

しっかりと4−4−2のコンパクトなブロックを作り、ボールの位置によって前後左右にスライドして連動しながら、「ゾーンに入ってきたら強く行けと言われていた」(青木拓矢)という大宮の守備は、いざ実戦となると、「ポジションは『ここでいいのかな?』、行くときも『行っていいのかな?』という感じで後手後手になり」(片岡洋介)、準備不足を露呈した。開始10分ほどはそれほど綻びを見せなかったが、新しいやり方に自信を持てないまま、「行くんだけど、食いついて、食いついて、どこかが空いてしまうことが多く」(青木)、選手の迷いは時間を追って大きくなり、柏に自由にやらせてしまう結果となった。

ネルシーニョ体制4年めを迎える柏は老獪だった。序盤、大宮のボランチへのマークが曖昧で、そこからカルリーニョスに先制点こそ許したものの、「田中(順也)がカルリーニョスのマークに行くことに決まっていたが、中途半端なポジションを取られたときに俺かタニ(大谷秀和)が行くことにした」(栗澤僚一)ことでペースをつかむ。攻撃では大宮のコンパクトな守備陣形の弱点をしたたかに突いた。高い守備ラインの裏へ、または横幅も狭いゾーンのサイドへ、シンプルに長いボールを送る。レアンドロ ドミンゲスの同点弾、ジョルジ ワグネルによる逆転弾はいずれもスーパーゴールには違いないが、コンパクトなゾーンディフェンスの分かりきっている弱点を、あまりにもあっさり攻略されたのが何とも厳しい。完全に混乱した守備はコンパクトさを失い、最終ラインの前でボールを受けた工藤壮人を遅れてチェックした菊地光将が倒して与えたフリーキックから工藤に決められ、前半だけで3点を失った。

後半開始早々、大宮はまたも失点を重ねる。新指揮官が就任会見から指摘し続けてきた「攻撃の際に簡単にボールを失ってしまう」悪癖が出た形だが、「早くサイドに入れて、そこからアクションを起こす」(渡邉大剛)という大宮の攻撃意図を、柏のサイドバックが大宮のサイドハーフにぴったりと張り付いて封じたことで、出しどころを失った末に起こったものだった。「ボールを取ったら目一杯開けと言われていたが、(そこでミスが出ると)中に絞って守るのは難しい」(片岡)と守備陣が感じていたように、その目一杯開いたサイドにマークを付けられたときにどうするか、その準備不足が招いた失点でもあった。

しかし試合はここから一転、大宮ペースとなる。3点差を付けて気持ち的に緩んだのか、「久々の試合だったし、ずっと(オフなしで)練習していた疲れ」(栗澤)からか、柏の足が止まり始めた。大宮は「2トップが相手のセンターバックに対してプレッシャーをしっかりかけるようにした」(チョ ヨンチョル)ことで、柏のロングボールを封じ、高い位置でボールを奪って攻撃できるようになった。右サイドで東慶悟から縦パスを受けたラファエルが送ったクロスにチョが飛び込みコーナーキックを得ると、ショートコーナーからチョが2点目を奪う。以後は足の止まった柏を、時折カウンターは許したが一方的に押し込んで攻めたてた。
後半だけで大宮のシュートは13本、コーナーキックは5本を数えた。カルリーニョスの短いクロスにチョが飛び込んだ場面、あるいは途中出場した渡部大輔、市川雅彦がペナルティエリア内で放ったシュートのいずれかが決まっていれば、同点か、あるいは逆転まで持っていくことができたかもしれない。そう感じさせるほど大宮に流れは来ていたし、期待の感じられる攻撃を見せてくれた。

大宮にとってはそのまま、課題は守備、収穫は攻撃といえるゲームだった。サイドへの素早い展開からトップをボランチがサポートして奪った先制点の形は、新指揮官のねらい通りだったし、2点めのショートコーナーも、最終的には混戦を押し込んだが、これも練習でやってきたことが得点に結びついた。一方で守備は、まだまだ多くの時間が必要に思える。後半は柏のペースが落ちたこともあるが、同時に大宮の守備もコンパクトさがなくなり、ゾーンよりも早い段階で人に付いて守ることが多かった。互いに間延びして撃ち合いになったので仕方がないところもあるが、集中して準備してきたはずのやり方をかなぐり捨ててしまうのでは、守備の不安は消えない。「まずは守備の安定」を掲げるベルデニック監督にとって、4点取られても5点取るサッカーというのは本意ではないはずだ。
柏は中断期間を挟んで4連勝で、勝点を20に伸ばした。この日は後半に失速したが、「去年やってきたバランス、守備の意識」(田中順也)が戻りつつあり、これからさらに順位を上げていきそうだ。
対照的に新生大宮にとっては苦い船出となったが、今後も広島、清水、鹿島と強敵が続く。実戦の中で守備に自信を付けていくには難しい相手だが、それができなければ降格圏に沈みかねない「厳しい状況」(江角浩司)でもある。まずは次節(6/23@広島ビ)で、どこまで広島の強力な攻撃陣を抑えられるか注目したい。

以上

2012.06.17 Reported by 芥川和久
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