第29節は上位勢では京都と山形だけが勝ち、第30節は横浜FCと大分と栃木だけが勝って昇格争いはますます混戦。そんななか甲府は連勝が6で止まったものの、その後は引き分け2試合で首位を守っている。昇格に向けて優位な立場にいるが、残り12試合で今節ホームに迎える8位横浜FCが今の1位・甲府との勝点差8をひっくり返すことはできないと考える人はいないだろう。昇格争いはなんでもアリのサバイバル。それだけに直接対決での勝敗は重要になる。夏休み最後の試合をホームできる優位性を活かして、山梨の夏休みを勝利で機嫌よく締めくくりたい甲府。

4−4−2でシーズンをスタートした甲府は浮き沈みが大きい時期もあったが、中盤戦からはオプションだった4−3−3にシステムを変更して首位を奪取。システムで勝ってきたわけではないが、守備の安定感が出るようになってからは出入りの大きい試合はなくなり隙の少ないチームへと成長してきた。崩される場面はまだまだあるが、GK・荻晃太の安定感も失点の少なさに貢献している。しかし、今節対戦する横浜FCのパスワークを見ると今の守備の安定感では不安も感じる。特にゴール前でワンタッチパスを使われるとヒヤヒヤしそうで怖い。山口素弘監督に代わって最初の試合が第5節・甲府戦（ニッパツ三ツ沢）だったが、以降の驚異的な躍進ぶりを見れば第5節の横浜FCのイメージは、今節対戦するにあたって何の役にも立たない。それに首位相手というプラスのモチベーションも加わってくる。怖い相手だ。

城福浩監督は前日練習の前、「首位にいるということは、全ての対戦相手が最高のモチベーションで向かってくるということ。それだけ難しい試合が多くなるが、残り試合全部をモチベーションの高い相手とやれる順位にいることが目標」と、首位チームにしかできない話で選手を鼓舞した。この言葉が彼らにどう浸透したかは判らないが、甲府の選手が傲慢ではない自信を持っていることは練習でも感じる。横浜FCの方がボールをつなぐシーンが多い対戦になるかもしれないが、甲府は現実的な戦い方ができる。これは城福監督の手腕の一面。今節は守備で隙を作らないだけでなく、ボールの奪い方でも横浜FCのキーマン・高地系治の良さを逆手に取るようなチャレンジも見せてくれるだろう。前節は中2日で試合をし、今節は中3日。選手のコンディションを考えればお互いにやれることは少ないが、ここまで積み上げてきたものを頭の中でどう整理して発揮できるかが重要になる。

守備も背中合わせだが、攻撃面で甲府が目下取り組んでいることのリストの中で上位にあるのはフェルナンジーニョの活かし方。複数のスタートポジションを試している。今節それを使うかどうかは判らないが、フェルナンジーニョは「自分のためにフォーメーションを変えてもらったのだから期待に応えるしかない。視野が広いポジションなので積極的に攻撃を仕掛けたい。もし先発があれば90分プレーすることを考えるよりも最初から全力で行って自分の持っているものを全て出す。監督の信頼に応えたい」とやる気満々。普通に予想すれば後半からの投入だが、先発もあるのか。フェルナンジーニョのプレーとどんなタイミングで起用されるのかも興味がある。前節終了後、横浜FCの山口監督は「甲府を驚かせたい」と話してたが、城福監督は甲府担当記者を驚かせるような起用をするのかもしれない。

フェルナンジーニョが活きればダヴィはもっと活きる。ダヴィのゴリゴリ突破だけでも横浜FCのディフェンスラインはカバーリングなどで混乱するはずだが、フェルナンジーニョはパスでダヴィをもっと活かせるはず。前節のダヴィは2試合出場停止明けだったので元気がありすぎてトラップが大きくなって自らチャンスを潰した場面もあったが、今節は試合感覚が戻って鋭さが増しているはず。選手が試合前に食べる軽食にフリスクが仕込まれているのかどうかは分からないが、久しぶりのダヴィ・ゴールを見たい。ダヴィのゴールが決まってこその、他から言われる悪口「ダヴィ頼み」であり、「ダヴィ以外の選手がいかに点を取るか」という甲府の課題でもある。まずは、ダヴィ、決めてくれ。

以上

2012.08.25 Reported by 松尾潤