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大銀ドームに着いて大分サポーターの数の多さを見て、ちょっと不安になった。甲府のホーム・山梨中銀スタジアムはMAX17000人なので、ワールドカップを開催したMAX40000人のスタジアムの迫力や格を改めて感じた瞬間でもあった。甲府戦は「大分市ホームタウンDAY」で、約47万人の大分市民である証明書を見せれば招待して貰えるという条件ながら、最終的に23617人の観客が試合を見に来てくれるという潜在的なパワーが大分にあることを証明した。大分の運営サイド、ファン・サポーターの意気込みを感じると、「今日は大分が勝たんといかん…のか…」と、やや日和ってしまいそうにもなった。そして、試合前に大分担当と緊張MAXのトークショーをやらせてもらったことは消したい記憶のリスト入りを果たし、心が折れたまま試合開始を迎えてしまった。人前で素人が喋るのは難しい……。
立ち上がりから甲府は安定感があって、攻守に渡ってゲームを支配することができていた。球際の争いでも勝つことが多かったし、セカンドボールを積極的に拾っていて、チームが右肩上がりで内容が伴っていることを感じた。ただ、大分陣内でプレーする時間は長かったが、シュートで終われずに常にカウンターを受けるリスクは背負っていた。
しかし、大分は前線にボールが収まらずに、カウンターのチャンスを活かしきれなかったからシーソーは動かなかった。甲府の攻撃もフィニッシュに至らないだけにこのまま停滞するかと思った28分、フェルナンジーニョが右サイドでゴールライン際までドリブルしてから入れたセンタリングをダヴィが決めて甲府が先制。先発初起用のフェルナンジーニョがアシストして得点ランキング1位を驀進中のダヴィが決めた、ど真ん中ストレートのゴール。この1点で楽観はしなかったが、エースが決めると気分はいい。先制された大分がすぐにアクセルを深く踏んできたが、甲府のセンターバックコンビの津田琢磨と盛田剛平は最後の最後のところで身体を張ってちゃんとブロックしてくれる。前線からのディフェンスが機能していたし、攻撃から守備に切り替わってもファーストディフェンダーがサボらないから、最終ラインとGK・荻晃太は最後の予測がしやすかった。チーム全体での守備が、今年の甲府最高のレベルで機能していた。
後半は保坂一成の負傷で伊東輝悦が52分に投入され、69分には井澤惇に代えて元大分の松橋優がサイドハーフで投入された。大分のFWがだいぶん疲れているようだったので、甲府はフレッシュな選手を活かして2点目を奪いたかったが、ボールが走り難く粘っこい芝生に甲府の選手も十分に疲れていて後半の前半が終わるころには足がつる選手が出てきた。大分がチェ ジョンハンを投入して3−4−3の配置で攻勢を掛ける中、甲府は津田琢磨の足が限界に達して3枚目のカード(ドウグラス)を切ることになる。3枚中2枚のカードが負傷がらみなので、城福監督は三幸秀稔、永里源気、青木孝太という攻撃的な選手を投入するチャンスを無くした。初先発のフェルナンジーニョは60分を想定していたので、この先はこの小さなテクニシャン任せ。しかし、ダヴィもフェルナンジーニョも疲れ気味だったし、ディフェンスラインに合わせて全体的に下がる時間が長く、「ちょっとヤバイ雰囲気」だった。ボランチの伊東が、大分のボランチをケアして縦パスの組み立ての芽を摘んでいたが、甲府は4枚目と5枚目の交代カードを切りたくなるほど劣勢。城福監督が「大分は普段のトレーニングの成果だと思うが、後半にもうひとエンジン加わる。これは分かっていたが、76分以降の得点が多いのはその証だし、凄い部分」と警戒していたことが現実になる。
89分に三平和司に決められて同点になったうえに、ドウグラスが右肩を酷く負傷してしまう。しかし、交代カードはなくドウグラスは痛みをこらえてピッチに戻った。同点で終わることを覚悟していたし、容認する気持ちで見ていたが、4分間のアディショナルタイムに甲府が成長の証を見せる。大分サポーターにとって松橋は「FWやったのに、甲府ではサイドハーフ?」という驚きのある投入だったと思うが、甲府ではサイドバックもやるユーティティプレーヤーに成長しており、終盤戦に向けてキーマンの一人になりそうな存在なのだ。その松橋が右サイドからフェルナンジーニョに出したパスが素晴らしく良かった。これをフェルナンジーニョが蹴った瞬間足がつるシュートを打つ。このシュートはGK・清水圭介が右手で触ってコースを変えたが、そこにいたのは大分のディフェンダーではなくダヴィ魔人。チョーンと蹴り込んで「ゴーーーーーール」。甲府が今季初めてのアディショナルタイムの逆転劇を見せ付けた。キングカズぽく言うならば、ダヴィの前に転がったのっではなく、「零れた」ということ。ボールに甲府の魂が乗り移った…と言うのは、言い過ぎか。
お互いに盛り上げて観客に喜んで貰い、来場者数増を狙った「J2天下取り物語」。
最終結果は、ホームゲームとアウェイの来場者数で甲府が負けたが、直接対戦とシーズンパスの販売数で上回って勝利。武田信玄と大友宗麟はともに城郭のある城を作らなかった(現存する城址はともに江戸幕府以降のもの)点も共通していて、歴史小説を読みたくなった。試合では勝てなかった大分は悔しい気持ちでいっぱいだろうが、今回初めて大分銀行ドームに来てくれたお客さんがまた見に来てくれることを願っているし、大分はそれに値する魅力のある選手が揃っていると思う。残り10試合、自分たちで作り上げたハイプレッシャーの試合経験を活かして、甲府、大分ともに昇格に向けて突き進もう。
以上
2012.09.03 Reported by 松尾潤















