J2のリーグ戦も終盤に入った中、それぞれ17位、19位と下位に沈んでいる熊本と岐阜にとって、残りの10試合に向けて勢いをつけたい一戦となる。天皇杯2回戦、2008年にJ2に加わった“同期対決”は、8日(土)13時にキックオフされる。
各都道府県代表やJFL等、カテゴリーの違うチームと対戦する場合、情報が少ない難しさのある今大会だが、このカードは同じカテゴリーで既に今シーズンの対戦を終えていることもあり、お互いのストロングポイント、ウィークポイントといった情報は十分に把握した上で臨むことになる。今シーズンの対戦を振り返ると、第6節は3−0、第23節は2−0といずれも熊本が完封勝ちしているが、それでも「内容的には簡単に勝てた試合ではない」と、熊本の高木琢也監督は話す。また「向こうも同じ相手に3連敗はしたくないだろうし、守備重視の印象があるが、だからこその怖さはある」とも。
その岐阜は先週末に行われたJ2第32節で東京Vを相手に無失点のゲームを演じ、約2ヶ月ぶりの勝利を飾った。この試合では相手のドイスボランチにプレッシャーを与えることを狙いとして採用した4-1-4-1の布陣が奏功。できるだけ高い位置でボールを奪ってスピードのあるアタッカーに預けるショートカウンターを意図し、実際に相手のクリアミスをマイボールにした後、井上平と新加入ダニロの良い距離感での連携から決勝点を奪った。狙いを持った守備を実践して結果につなげたこと、また熊本もボランチ2枚の4-4-2のシステムであることなどを考慮すれば、リーグとは別の大会とは言え岐阜も顔ぶれが大きく変わる可能性は小さかろう。東京V戦では6分間の出場に留まったが、やはり新加入で既に得点を挙げているアブダのほか、スピード豊かな突破で過去にも熊本を苦しめた染矢一樹、モビリティのある樋口寛規、U-19日本代表に選出されている廣田隆治ら攻撃陣はそれぞれが特徴を持っている。
そうした相手に対し、特に32節の北九州との試合で守備のまずさからいい形で攻撃につなげられなかった熊本としては、やはり得点を奪う攻撃のために、守備でいかにペースを握るか、つまり相手に良さを出させないことが鍵となる。北九州との試合では、「相手のボランチに対してうまく(プレスに)行けなかった」(矢野大輔)点を踏まえ、6日のトレーニングでは前線からの守備の対応を確認した。東京V戦での岐阜を見ると1トップのダニロが残っている場面が多く、こうした状態になればなかなかDFラインを押し上げられずに前線との距離が開きスペースを作ってしまうことも考えられるため、北嶋秀朗が「(奪いに)行くのか行かないのか、守備の意識を合わせないといけない」と話すように、全体での有機的な連動が不可欠。高木監督が選手たちに声をかけていたのも、ボールが出た時にタイミング良く寄せられるポジションが取れるよう常に準備しておく、という点だった。密なコミュニケーションを取りながら相手の動きやボールの動きを予測して「考える時間を少なくする」(高木監督)ことでアプローチを早くし、自由にプレーさせる時間を少しでも減らしたい。
「いい守備ができれば、いい攻撃ができる」(武富孝介)というのはこれまでのリーグ戦でも証明してきたことだが、守備意識が高まり失点が少なくなっている岐阜のゴールをこじ開けるには、「相手をどう引き出すか」(高木監督)という攻撃面での工夫も必要。岐阜が4-1-4-1の形であれば、アンカー服部年宏の両脇や2列目との間、さらにはCBとの間のスペースを狙って出入りを繰り返し、人の動きとボールの動きで相手を食いつかせてギャップを作るよう、前後左右に揺さぶりをかけたい。周りとの連携のタイミングも徐々に合い始めた北嶋も、「足元と裏をバランス良く使い分けて、うまく間にポジションを取ってDFラインをひっくり返す動き出しができれば」と口にする。
特別な大会ではあるものの、リーグ戦と同じような適度なモチベーション、あるいは平常心をもって“いつも通り”のことができるかが大事だが、まだ暑さの残る熊本での13時開始という試合環境や、運営も含めてリーグ戦とは異なるスタジアムの雰囲気も、選手たちのフィジカル、メンタル両面に多少は影響するだろう。さらに言えば、延長戦やPK戦によって必ず勝敗が決するノックアウト方式である以上、「取れる時にしっかり取る」(高木監督)ことも重要。岐阜も東京V戦では追加点のチャンスがあったにも関わらず最後の精度を欠いて突き放せなかったという課題を残しており、双方がリーグでの戦いでも抱える決定力の問題も、おそらく大きなポイントになるだろう。
「勝ち進めばJ1のチームとやれる大切な大会。J1の空気を感じることが、これからのレベルアップにつながる」とは北嶋の言葉だ。クラブの経営状況やチームの成績を見ても、いずれも厳しい状況にある熊本と岐阜だが、JFLの頃から鎬を削り、ともに歩んでお互いの歴史を塗り重ね、Jリーグでの5シーズン目を迎えている。例年、アップセットが話題となる大会にあって、J2の中位以下同士の対戦は大きな注目は集めないかもしれない。しかしそれでも、ドラマは必ずある。
今後の残りのシーズンに向けて、ということ以上に、3回戦へ勝ち上がれば対戦することになるであろうベガルタ仙台のように、クラブが、地域やそこに住む人たちにとって支え、後押しするだけの価値があること、そして街のシンボル、あるいは誇りとなれる可能性を秘めた存在であること。そうした言わば存在意義を示すためにも、この試合の内容と結果を充実したものにしてほしい。
以上
2012.09.07 Reported by 井芹貴志
J’s GOALニュース
一覧へ【第92回天皇杯 2回戦 熊本 vs 岐阜】プレビュー:今後のリーグ戦と、そしてクラブの将来をかけた、今シーズン3度目の対戦。3回戦へ駒を進めるのは、熊本か、岐阜か。(12.09.07)















