現役の大学生である山越享太郎が、筑波大学蹴球部の一員として天皇杯の舞台で鹿島と対戦した経験をもとに、天皇杯に臨む大学生の気持ちを口にする。
「こういう時の大学生の気持ちは、ボクらがアントラーズとやった時の気合が半端なかったのでわかってます」
山越のその経験は、昨年行われた第91回大会2回戦でのこと。失うもののない大学生の大胆さを武器に、筑波大学は鹿島と真っ向勝負した。ただし試合は2−0で鹿島が勝利するという結果に。気合の入った大学生がなんとかジャイアントキリングを成し遂げようと試合に臨むが、その挑戦をしっかりと鹿島が退けるのである。そしてそうした勝負強さこそ、プロとアマチュアの違いでもある。山越は最近、筑波大学の関係者から聞いたこんな言葉がしっくり来たという。
「プロになると1勝と1敗の重みが違ってくる」
川崎Fが天皇杯2回戦で対戦するのは、1回戦で松江シティFCを3−0で下した徳山大学(山口県代表)である。徳山大学が、J1クラブと対戦できるこの機会を最大限に生かし、若さを押し出した戦いを挑んでくるのは間違いない。だからこそ、先制点が重要だと小林悠は話す。
「(大学生が相手だということで)難しい試合になると思いますし、どれだけ早く先制点を取れるのかが大事になる思います」
小林は直近の試合で決定的なチャンスでゴールを決めることができていない。名古屋戦、仙台戦と連敗したこれらの試合で、そのゴールが決まっていたら、もしかしたら勝点は違うものになっていたかもしれない。そうした悔しさと向きあった選手だからこそ、1点の重みを痛感しているのである。そしてそれを過度に引きずらないよう、準備を進めてきたとも話す。
「気にし過ぎてよくない状態になっていました。とにかく今は点を取りたい。1点取れば、また取れるようになると思う。大会は変わりますが、しっかり点を取れるようにしてリズムをもっと出せればと思います」
鳥栖戦でのPK失敗を背負い込み、名古屋戦、仙台戦での決定機を決めきれなかった小林が、気持ちを吹っ切ることになるゴールをまずは期待したい。
そもそも、決定機に顔を出すからこそ、小林のミスが目立ってしまうという側面もある。少なくとも仙台戦の決定機は、それまでの予備動作、そしてボールをコントロールする技術がなければ決定機にはなっていなかった。必要以上に悔やむことはない。決定機が他の選手にもあれば必然的にミスの重さは希釈化されていく。またより多くの決定機を作れれば、勝利への道も開けてくる。だからこそ、監督は決定機を増やすという仕事に着手する。
自陣からパスを繋ぎ、手数をかけることを厭わない川崎Fのスタイルは、対戦相手にとっては守りやすい戦い方でもある。すなわち、パスを繋ぐ間に帰陣し、ゴール前の人数を増やせばいいのである。特にこの試合は大学生が相手。時間帯によっては人数を掛けて川崎Fゴールを狙うこともあるのだろうが、状況によってはしっかりと引いて守り、川崎Fのパスワークをゴール前でだけは遮断しようとするかもしれない。
そうした戦いが予想されることもあり、またここ数試合の傾向としてゴール前での狭いエリアでの足元のパスがずれていたこともあり、この1週間の準備として風間八宏監督はフィニッシュに至るまでの過程に重点を置いてきた。そしてそれを「点と場所」という言葉で説明している。すなわち、「パスがずれてしまっているのは点が見られてないということ」であり、だからこそゴール前で「点」を見られるようにするための練習を積んできたのだという。そしてさらには「線を描くことで、そこに選手が入っていく」のだという。
難しい言葉ではあるが、要するにゴール前の狭いエリアでのパスワークを想定した練習を積んできているのである。そしてこれを実現する事により、場所の攻略と組織を破ることができるのだと話す。相手の守備ブロックを攻略するために行われたこれらの練習の成果として「そう簡単ではないですが、この練習により、そういうところのミスが少し減ったかな」とこの1週間での手応えを説明してくれた。簡単に成果の出る練習ではないのだろうが、ペナルティエリアに近いエリアでの崩しの場面が見られるようであれば練習の成果が出たと考えていいだろう。この試合ではそういう場面が生まれることを期待したい。
徳山大学に対してはあまりイメージがないと風間監督。ただ、その徳山大学を率いる中村重和監督とは広島時代のチームメイトだ。
風間監督自身、昨年の天皇杯では筑波大学を率いて鹿島と対戦している。そうした大番狂わせを狙う大学チームの監督の心境は非常によくわかるはず。だからこそ、万が一にも試合を落とすことのないよう、運んでもらいたい。
徳山大学は中国大学サッカーリーグ1部でプレーしており、ここまでリーグ戦7試合を終えて7戦全勝。得点18、失点4と他大学を圧倒する強さを見せている。主力メンバーの1人である利根瑠偉は松江シティFCとの1回戦では2得点しており、警戒が必要であろう。また利根は、静岡学園では大島僚太の同級生で、2010年度の全国高校選手権では1回戦で現川崎Fの谷尾昂也を擁する米子北と対戦し、勝利に貢献している。そのほかに、天皇杯1回戦では、4本のシュートを放ち1得点した文平祐介や、2点に絡んだ林幹也といった選手たちに警戒が必要になりそうだ。
この1週間を攻撃面での改善に費やしてきた川崎Fにしてみれば、徳山大学の江口将貴キャプテンを中心とした堅守の最終ラインをどう攻略するのか、注目したいところである。
なお、徳山大学は天皇杯山口県予選決勝で、川崎Fサポーターにもお馴染みのレノファ山口を下し本大会出場を決めたチームである。
以上
2012.09.07 Reported by 江藤高志
J’s GOALニュース
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