甲府サポーターなら、「天皇杯の初戦(2回戦)は苦労する」ということは経験則で分かってるのだが、城福浩監督が就任後の甲府はジンクスを壊しながらここまで進化しつつ進撃してきた。「と、いうことは、今年の天皇杯はあっさり勝つのか…」なんて考えている貴兄も少なくないはず。なにせ、J2リーグの首位という立場で天皇杯の2回戦を迎えるのだからあっさり勝ちたいが、J1の強豪・浦和が当時はJFLだった松本に負けるのが天皇杯。何が起こるかわからない怖さは今年も健在のはず。だが、今年は山梨中銀スタジアムがジンクス壊しの場になるのか…。やってみないと分からない。観に来なけりゃ目撃できない。
甲府がホームに迎える福島ユナイテッド(以後、福島)は、東北社会人リーグ1部のクラブ。上から数えると、J1>J2>JFL>地域リーグ(東北社会人リーグ1部を含む9地域)と、日本のサッカー界では4部に当たるリーグにいる。しかし、チームバスのラッピングには「GO TO J-LEAGUE」という文字が大きく書いてあり、地域リーグ→JFL→J2→J1と上を目指して本気で戦っているクラブなのだ。甲府のファン・サポーターには、「久野純弥がいるチーム」という認識の方が強いだろう。福島は、昨年の震災と原発事故後に7人の選手がやむなくチームを去り、ホームゲームは全て県外で行うという試練のシーズンを送りながらも東北社会人リーグ1部で優勝。その先の全国地域リーグ決勝大会では一次ラウンドで敗退してJFL昇格のチャンス(同大会で1位と2位は自動昇格、3位はJFL16位と入れ替え戦)を掴めなかった。しかし、今年も現時点で東北社会人リーグ1部で2位(1位グルージャ盛岡と勝点3差)と、全国地域リーグ決勝大会に進める権利(1位)を充分に掴める位置にいる。つまり、残されたリーグ戦4試合はものすごく重要なのだ。首位のグルージャ盛岡戦が最終節(10月7日)に残っている。それもホームで。だから残りのリーグ戦4試合は全勝するしかない。
天皇杯はJリーグ入りを目指す選手たちと、久野をはじめとする「元Jリーガー」と呼ばれる過去を持つ選手にとっても、「やってやんぜ〜ッ」というモチベーションを掻き立てる大会。ネームバリューのある城福浩監督が率いる首位・甲府は、倒して名を上げるにはJ2リーグの中では最高の相手のはず。しかし、福島にとっては大きな悩みがある。アウェイで甲府と戦った翌日に14時からホームでリーグ戦・秋田FCカンビアーレ戦があるのだ。第1クールではアウェイで5−1で勝った相手だが、サブで勝てるほど甘くはないだろう。では、天皇杯をサブで戦い、リーグ戦にレギュラーを出すのか。ここから先は推測だけど、福島は天皇杯・甲府戦も翌日のリーグ戦もインターハイを戦う高校生のように、ほぼベストメンバーで2連戦するつもりなのではないだろうか。下位リーグのチームには気の毒なスケジュールだけど、どちらかを選ぶなんてことはできないだろう。成り上がるには計算や打算はない。一戦必勝で戦い続けるだけ。
もしも、だけれど、東北社会人リーグ1部で2位以下に終わってもJFLへの道はある。10月13日から始まる「第48回全国社会人サッカー選手権大会」という道だ。福島はこの大会でも勝ち上がっており、この大会で決勝戦に進めば「全国地域リーグ決勝大会」に進めるのだ。ただし、13日からの4連戦に勝たないと決勝には進めない。2連戦どころではない厳しさ。もっとも「全国地域リーグ決勝大会」も3連戦で一次リーグを勝ち上がり、決勝ラウンドも3連戦とハード。甲府から秋田に戻る移動があるので3連戦に匹敵する2連戦ということになるのかもしれない。
この本気の福島をホームに迎える甲府は、前節の大分戦でけが人が複数出たこともあってターンオーバー。今シーズン、チャンスを掴みきれなかった選手とチャンスがなかった選手が、シーズン最後の10試合でチャンスをつかむための挑戦をする。第31節の横浜FC戦の翌日に、城福監督は「天皇杯は『J1のチームを喰って』というモチベーションで行きたいし、一つでも上に行きたい。ターンオーバーをやりうるレベルに来ていればそれでいいが、そのレベルに来ていないなら勝負に徹する。心身ともに準備が出来ていない選手にチャンスを与える気はない」と話していた。前日練習で見た先発予想布陣を見ると、予想よりもチャンスを与えられた選手が多いようにも感じる。ほぼ、オールメンバーチェンジ。城福監督は思ったことを何でも言ったりはしないので、推測するしかないが、若干挑戦的なメンバーだという感じはする。しかし、高崎寛之、青木孝太のツートップ(予想)にはこのまま不完全燃焼でシーズン終盤に入って欲しくないし、山梨中銀スタジアムデビューとなるGK岡大生、DF林堂眞のプレーは楽しみと、複雑な要素で期待が重なる先発陣になりそう。畑田真輝や堀米勇輝や三幸秀稔ら、甲府期待のテクニシャンが先発で攻守でやりきる姿も見たい。ただし、この試合で戦えなかった選手は、残りシーズンを練習するだけのお客さん扱いになる可能性も十分にある。J2首位を走るチームだけにものすごく怖い一戦でもある。最後のチャンスかもしれないという危機感を持って戦うことが重要だ。
以上
2012.09.07 Reported by 松尾潤
J’s GOALニュース
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