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【第92回天皇杯 2回戦 山形 vs 前橋】レポート:明暗を分けたのは後半立ち上がりのプレー。前半のスコアレスにも慌てなかった山形が、食い下がる前橋を3-0で下して3回戦へ(12.09.09)

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J2山形に、群馬県代表・関東1部リーグのtonan前橋が挑む、NDスタでの天皇杯2回戦。前橋が1回戦と同じメンバー、同じ4-3-3システムで臨んだのに対し、山形はシステムこそ4-4-2と変わらないが、直近のリーグ戦からバックライン3人を含む5人を入れ替えた。

試合は「前から圧力をかける山形としのぐ前橋」という構図で始まった。ただ、前橋は押し込まれてはいたが、バランスよく守備をセットしながら自陣に入ったボールを連動して奪いにいった。特に、トップ下のブランキーニョに対しては、システム的にマッチアップするアンカー・長沼恭平が素早く寄せることで自由に前を向かせない守備を実践していた。5分には山形がカウンター。リーグ戦でも得点を挙げたばかりの廣瀬智靖のドリブルから、ハーフウェイラインを越えてきた左サイドバック・山田拓巳へ。一気にゴール前に戻った前橋のブロックの手前から、キャプテンマークを着けた秋葉勝、跳ね返りをブランキーニョと立て続けにシュートを放ったが、これは前橋もしっかりボールに寄せ、至近距離で跳ね返した。

前がかりで、一気に仕留めにきた山形。しかし、前橋もその背後を冷静に狙っていた。6分、右のスペースに流れて受けたファン ギュファンが仕掛け、2度のチャンスを演出。逆サイドから小川雄司もゴール前に入ってきていただけに、絶好の先制チャンスだった。8分には、バックラインから宮阪政樹の足元に付けるボールをエマニュエルがカット、スイッチした氏家英行がミドルシュートを放ったが、これは左にそれた。前橋・菅原宏監督が「前半8分ぐらいですかね、3回ぐらいチャンスがあったので、あそこでもう少しやっておけばいいのかなと思いますけども、やっぱりこういう場面に慣れてない」と振り返ったこの時間帯が、前半で唯一、山形を慌てさせた時間となった。

「切り換えろー!」GK清水健太の怒気を含んだ声が響く。メンタルを引き締め直した山形は、ここから一方的な攻勢に移る。右サイド、宮本卓也が粘ってキープしたボールを引き受けたブランキーニョがクロス、林陵平のヘディングの折り返しに秋葉が飛び込んでシュートを放ったのが9分。その後も、山田のクロスに最終ライン脇を抜けた中島裕希が右足にダイレクトで合わせるシュートを放ち、コーナーキックを得たり、相手ミスに乗じてボールを得たブランキーニョがフリーでシュートを放ったが、いずれも得点にはつながらなかった。

20分を過ぎた頃から、前橋は4-3-3のウイングをしっかりとたたみ、サイドで数的不利にならない守備を続けていた。逆に中央では氏家が高い位置を取り、ファンとともに西河翔吾の足元に入るボールを狙ってプレッシャーをかけるシーンも見られたが、「僕が前から行ってるのに、ディフェンスラインが引いちゃうと、真ん中におっきいスペースができちゃって」(氏家)と結果として間延びしたため、広く口を開けたバイタルエリアでブランキーニョを自由にするスペースを与えることになった。30分、ブランキーニョからダイアゴナルに伸びたスルーパスに反応し、ペナルティーエリア右に進入したのは中島。これはGK中村楽の対応でシュートまで持ち込めなかったが、36分には中央ニアサイドのブランキーニョからリターンを受けた宮本が、今度はさらに中央で待ち構える廣瀬の足元にくさびを打ち込んだ。しっかりコントロールできれば決定的な場面だったが、ここではボールを収めきれなかった。

ほぼ敵陣でプレーしたこの時間、しかし山形は、多くの人数をかけて守る前橋のゴールをこじ開けられずにいた。バイタルエリアで前を向くことはできたが、コントロールミスで時間をかける間に相手に詰められたり、引いてボールを受ける動きが単発で連動しての動きがなくブロックを崩しきれなかったり、あと一歩でサイドを破れるかというところでオフサイドの選手にパスを出してしまうなど、狭いスペースでのプレーに苦しんだ。44分にはようやく小川雄司の守備を突破した宮本がクロスを上げたもののファーサイドの中島の手前でカットされ、終了直前にもブランキーニョが中央から右サイドに流れながらシュートを放ったが、これもゴール前を通過してゴールラインを割った。

前半は0-0。「前半0-0でしのげば勝機が見えてくると思うし、また選手たちも自信がついて、後半いい形でいけるかなと思った」(氏家)と前橋にとってはけっして悪い展開ではなかったが、数多くのチャンスを潰してきた山形にも焦りはなかった。「(点が)入らないもどかしさはみんなあったと思うんですけど、そこをなんとかみんなで声出して、そこで焦れてたらどんどん悪くなってしまうので。自分たちで悪くしないようにというのは、中で心掛けてました」と山田。公式記録で前半シュート0に終わった林も、「相手も前半の途中ぐらいから明らかに体力が落ちてきている、スペースが空いてきているのがわかっていたので、みんな落ち着いてやってました」と冷静に状況を把握し、次にできることを見つめていた。ハーフタイムには奥野僚右監督も、「時間はたっぷりある。(残り)45分だけじゃなくって、プラス30分、そして最後にはPK戦もあると。だから、本当に慌てることなくやっていこう」と伝えて後半のピッチへ選手を送り出している。

後半開始から、前橋は右ウイングの宮崎明浩に代えてDF東田学を送り込んでセンターバックに入れると同時に、センターバックの田平陵を中盤の左に、小川を右に移し、さらに「数少ないチャンスを、氏家とファンにボールを預けて、その間に上がっていったらいいかなと思って」(菅原監督)と氏家を上げて4-4-2にシステムを変え、預けどころをより中央寄りにと試みた。しかし、このシステム変更が落ち着くよりも前に、山形は右方向からペナルティーエリアをえぐった中島がゴールエリア付近でGK中村に倒されてPKを獲得。これを、この日26歳の誕生日を迎えた林が決めて47分に先制。さらにその直後にも、ショートコーナーからブランキーニョが上げたクロスを西河がヘディングで決めて追加点。前半の出来事が遠い過去に思えるほど、あっという間に2-0とリードした。

山形は62分、試合中に厳しいタックルを受けているブランキーニョに代えて、宮沢克行を投入。宮沢は卓越した戦術眼と相手の逆を突く動き出しで左サイドで何度も起点をつくり、69分にはゴールラインに沿ってゴールマウスを越えるクロスを林に送るなど、存在感を見せた。ただし、「2点目取られて、そのあとはまた自分たちのサッカーが少しずつできてきたように感じてた」(大瀧直也)と、前橋もようやく腰を据えた戦いができる状態に入っていた。73分には右サイドでワンタッチパスを連続させ、飛び出したファンが後ろから倒される。このボックスのすぐ外からのフリーキックは生かせなかったものの、中盤でのパスカットや足元のボールをさらう守備がハマり始めると、80分頃には前橋がポゼッションで上回り、逆に山形がカウンターを仕掛けるような展開も生まれた。

両チームが間延びしたこの終盤、85分のカウンターで、山形は廣瀬、宮沢とつないで最後は林がシュートを放ったが、これはGK中村の守備範囲。その後もボールが回るものの、得点奪いきるための精度が追いつかないままアディショナルタイムを迎えたが、宮阪がパスカットで奪うと、縦のフィードが中央の林に渡ったところで2対2の絶好機。ドリブルしながら相手を引きつけ、右サイドにパスを送ると、中へコントロールした中島が左足でグラウンダーの速いシュートを放つ。ファーポストに跳ね返ったボールは、そのまま逆サイドのゴールネットを内側から揺らし、試合を締める3点目。「何よりも今日一番取り上げたいことというのは、最後終了間際にゴールが決まったと。そのときの全員の関わったプレーですね、プレーと意欲。もうひと頑張りというところを表現できたんじゃないか」と奥野監督。前橋が最後まで勝利を諦めなかったように、山形もまた、「次の1点」を諦めていなかった。それが結実したこの3点目は、激しい昇格争いが展開されているリーグ戦や、約1ヵ月後に迎えるC大阪との3回戦でも、確かな指針となるに違いない。

「相手はボールが動いたときに次の選手が動いてたり、味方のスペースを空ける動きをしてたり、そこで個々のフィジカルがあって、しっかり自分の役割もはっきりしてて、信用して走ってたり、そこにしっかり出すという。そこがプロとアマの差かなと思ってます」。27対4とシュート数にも明確な力の差が表れたJとの対戦、そこで見えた課題を、経験豊富な氏家が指摘した。そして、「頑張って若い子たちが、一生懸命毎日練習してこういう機会を手に入れたと思うので、この経験を忘れないで、また来年もJリーグのチームに挑戦できるように頑張りたいと思います」と語った。「働きながら大好きなサッカーを、大学をやめても高校をやめても続けてますので、彼らにはこういう夢のステージを、北海道から沖縄までのこういう社会人チームに、『tonanでもできるよ』というのを伝えられてよかったかなと思っています」と話したのは菅原監督。スタンドで声援を送った図南SCの下部組織の選手たちにも恥じない試合を見せ、堂々とした戦いぶりを全国のサッカー仲間に発信した前橋は、来年また夢のステージに戻ってくることを誓って今年の挑戦を終えた。

以上

2012.09.09 Reported by 佐藤円
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