後半に俄かに動き出した試合は双方が点を取り合い、最後はアディショナルタイムの4分が試合を決めた。出場機会に恵まれなかった畑田真輝が90+3分、ホイッスルまでのカウントダウンが始まろうかという時間に逆転ゴール。首位・甲府が苦しい試合で勝点3を手にした。
試合は立ち上がりから甲府のペースで進む。6分にフェルナンジーニョの折り返しから柏好文が先制。しかし、甲府はその後の決定機を生かせず、主導権を握りながらも前半はこの1点にとどまってしまう。北九州は甲府の前線からの厳しいディフェンスに苦しみ、ボトムではボールを回しているものの、中盤から前へと送り込むことはできなかった。
試合を動かすきっかけが生まれたのはハーフタイム。
甲府・城福浩監督は「ほぼパーフェクトなゲーム運び。チャンスもありました。ただ1点しか取れなかった流れは非常に嫌でした」と前半を振り返り、ハーフタイムでは「こういう試合こそ1−1になる。そういうときに我々がどういうメンタリティでプレーできるか。今年の目標である昇格、優勝にふさわしいチームかどうかが」が問われると選手に話して送り出した。
一方の北九州は具体的に選手を動かす。鈴木慎吾を下げて宮本亨を投入し、センターバックをキローラン木鈴と金鐘必の組み合わせから、キローラン木鈴と宮本にシフト。4−4−2のダイヤモンドだったシステムを、1列前に出した金鐘必と新井涼平のダブルボランチに変更した。FWダヴィに対して気持ちで負けることのない宮本をマッチアップさせ、また起点へのアプローチもスピードアップ。守備を安定させることで、スムースな攻撃転換を狙った。
双方の展望が良くも悪くもハマったのが後半の45分間だった。
守備が安定しマイボールの時間が増え始めた北九州は、長いボールも使いながら前線への供給量を増やしていく。そして48分。多田高行のスローインを左サイドで受けた金鐘必が、ゴールまで40メートル弱の距離がありながらもコースを見いだして強烈なロングシュート。ボールはクロスバーの底面に当たってゴールネットを揺らした。「相手のディフェンスがプレッシャーに来なかった」と金鐘必。自身のJリーグ初ゴールで、北九州が1−1に追いつく。
ここまでは城福監督の予言が当たってしまった格好だが、甲府にとって誤算だったのは、そのあとの得点も北九州が入れたことだろう。
77分。「相手の足も止まっていたし、ルーズになっていた」と話す途中出場の竹内涼がディフェンスの隙間を突くように突破を試み、最後は抜け出した常盤聡にスルーパス。これを常盤が冷静にゴールに送り込み、北九州が逆転する。「相手のディフェンスラインも高かったのでスピードを上げたら1対1の状況だった。思い切って打つことができた」と常盤。これで2−1。少ないチャンスを得点に結びつけ、北九州に試合が傾いたかに見えた。
それでも甲府はその「予言」も「誤算」もはねのける。「相手のビッグセーブを含め、防がれた中でもいらいらせずに、さらにもう一度ボールを運んでゴールを目指した。簡単にできるメンタリティではない」と城福監督が称えた選手たちの勝利への執念。2点を取られたあともダヴィ、フェルナンジーニョの2枚看板に柏好文ら中盤が流動的に絡んでチャンスを量産していった。
そして85分にフェルナンジーニョのCKにダヴィが合わせて同点。なおも攻撃を続ける甲府はアディショナルタイムに、波状攻撃から柏の折り返しを畑田真輝がゴール右隅に決めて、前半戦にホームで勝てなかった北九州から勝点3を手にした。
甲府はこれで勝点を71に伸ばし、J1昇格をぐっと近づけた。
城福監督が「昇格、優勝にふさわしいチームかどうかが」が問われると話した後半。甲府のチーム全体が連動する攻撃も守備も強者にふさわしく、逆転されてなお勝ちにこだわった。展開から言えば前線の選手ばかりに注目してしまうが、山本英臣ら後ろで支える選手たちのディフェンスも綻ぶことはなかった。J1への道を切り開いていく甲府。強さをホーム戦で敗れていた宿敵相手に証明した試合となった。
北九州は最後まで戦う姿勢は見せながらも、2点を取ったあとに「甘い部分が出た」と木村祐志。「あそこまでセットプレーを与えてしまうと1点は決められてしまう。前への意識は今日もあったが…」と悔やんだ。個の力のある相手にあと一歩まで迫りながら、勝点を逃がしてしまった。
残り7試合、北九州はまだまだ上位勢との対戦がある。甲府が見せたように内容にも結果にもこだわり、もちろん北九州は北九州らしいサッカーを貫きながらも、勝ち抜けるゲーム運びが求められる。ただそれはどんな強者であれ容易ではない。試合後の記者会見で三浦監督が語気を強めた。「(残り試合で)我々が目指しているサッカーを表現、体現していきたいと思っていますし、厳しい状況の中でどういう態度が取れるか、どういうふうに言葉を残していけるか、そしてどういう振る舞いができるか。それが男であり、それがプロフェッショナルだと思っている」。
出場停止選手やケガなどが重なっていくる終盤は総力戦。プロフェッショナルの意地が、底力が、チームを勝利へと導いていく。
以上
2012.09.24 Reported by 上田真之介















