敵地で勝利したFC東京との多摩川クラシコは、戦い方を1つ身につけたという意味で勝点3以上の大きな成果があった。例えば中村憲剛はこの試合を振り返り「風間さんが言っていた場所を埋めるということ。それがようやくわかりはじめたのかなと思います」と述べている。相手ボールを奪おうと前からどんどん取りに行く戦い方もあるが、そうではなく、状況によってはある程度ポジションを落とし、相手を待ち構える戦いも有効でそうした部分が見えた試合だったと話すのである。そしてその戦いの核心的なポイントとして、ピッチ中央の4選手のポジションについて言及する。
「オレと(風間)宏希のところを空けなければやられない。クス(楠神順平)と(風間)宏矢のポジションが定まると全体が落ち着いてくる。今週はそこを口を酸っぱくして言ってきた」
この4選手がポジションを安定させることで、ピッチ中央が安定する。それがいい守備につながり、攻撃への切り替えがスムーズに行く。そうしたことを、多摩川クラシコを経て川崎Fは実感しているのである。つまり「良いポジションで守備をできると、いい攻撃につながる。ボールポゼッションにこだわり過ぎていた。だから不安定な形になっていた。そこは落ち着いたと思う」という状況なのだと中村は説明を続けた。この、攻守が表裏一体だということの概念は風間監督自身も口にしている。
「これははじめから言っているんだけど、守備の時に崩されると、攻撃のフォーメーションは壊れてしまうということ。それを壊さないためにどうするのかをずっとやってきている」。ただ、だからといって風間監督は選手たちに直接的に答えを伝えるやり方は取っていない。中村に言わせると、自分たちで答えを見つけさせるような教え方なのだそうだ。そして試合を終えた時に振り返ると、そういえばああ言ってたあれがこういうことなのか、というような事が多いのだという。つまり、手がかりになる言葉を伝えつつ、試合の中でそれを選手たち自身で見つけさせているのである。
多摩川クラシコの前半は、楠神を走らせる切り替えの早い攻撃が何度か見られていた。そうした戦略についても「一人ずつの見方や認識を少し変えているところ。その過程でああいう攻撃もできるというのは普通だと思います。もっともっと増やせばいい」と話している。風間監督の根底にあるのは「上手くやればいい」ということ。上手くやるということの方法論として、「止める、蹴る」から入った指導は日々その内容を進化させている。
中村はこの進化の過程について「順調だと言われたのでそうなんだろうと思います。自分たちがボールを持てるようになって、最初はペナのところまでは行けた。次にペナに入れるようになった。スペシャルなところまで来ているのは間違いない。今度は勝ちにこだわるところです」と説明。攻撃におけるステップをひと通り履修し終え、あとはそれを組み合わせて勝ち星を積み重ねるだけの段階に入ったのだと表現している。そして選手たちがそう感じられるそのきっかけとなったのが、多摩川クラシコだったのがまた面白いところである。
川崎Fは、7月28日以降ホーム等々力でリーグ戦での勝ち星をサポーターに見せられておらず、そのことについて選手たちは非常に申し訳ないという心情を隠さない。また、勝てていない状況にあるにもかかわらず味スタにあれだけ多くのサポーターが駆けつけ、後押ししてくれた事に心から感謝している。だからこそこの札幌戦は何としても勝たねばならない試合となる。
そんな必勝の思いを胸に抱く川崎Fに対し、札幌も同じように勝ちたい気持ちを全面に出してくるはずだ。なにしろこの節の結果次第では史上最速の7試合を残しての降格が決まるという状況にあるからだ。前節は大宮を相手に0−5と大敗しているが、退場者を出すまでは0−0と食い下がっており一定数のチャンスも作っていた。守備において統一感や安定感に欠けるきらいもあるが、勝利への気持ちの込もった試合となるはずだ。
川崎FのGK杉山力裕は、そんな札幌の先週の中で山本真希に注目していると話す。山本とは同じ高校の同級生だったという杉山は「その時は飛び抜けた存在でした。世代別(代表)でも10番を付けて中心的な存在でした。スーパーな存在でした」と当時を振り返る。そして「ミドルシュートをもっているので、気をつけたいですね」と表情を引き締めた。ちなみにこの両者はサッカーの名門である静岡学園の卒業生だが、山本は清水のユースに所属しておりそういう点でもスーパーな存在だったという。
その山本は本拠地での練習中にケガを負ったようだがすでに回復し練習にも合流している。最速降格という不名誉な記録の阻止のためにも、そして高校の同級生である杉山のゴールを破るべく、あらゆる手を使ってくるはずだ。攻撃時の札幌はポジションをタテ方向に代えて味方を追い越し、厚みのある攻撃を仕掛けてくる。川崎Fとすればそうした攻撃にたじろがないように気をつけたいところ。逆に相手が攻めて来ることで裏にスペースが生まれる。そうした穴を付いて行きたいところだ。
なお川崎Fはこの試合に合わせ、岩手県の陸前高田市から当地の子どもたちと親御さんを招待する「第2回陸前高田 川崎修学旅行」を開催する。川崎Fを訪れる子どもたちのためにも、そして繰り返しになるがサポーターのためにも約2ヶ月ぶりの勝利を期待したいところだ。
以上
2012.09.28 Reported by 江藤高志
J’s GOALニュース
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