残り8節、今シーズンのJ1残留争いは混迷を極めている。例年であれば勝点35前後が残留ラインとなるが、今年は勝点40近く、場合によっては40を超えてくるのではないか。前々節、前節と連勝して勝点30に乗せた15位の大宮だが、まったく安心できる状況ではない。16位のG大阪の地力とレアンドロ加入後の上り調子を考えれば、残り8試合で5勝はしてくると考えられる。となると大宮は、得失点差のディスアドバンテージがあるため4勝2分もしくは5勝が必要になる。14位に目を向けると、こちらもクルピ監督就任で息を吹き返しつつあるC大阪。C大阪が3勝5敗で負け越してくれたとしても大宮は4勝が必要で、C大阪に4勝されると大宮は5勝しなければならない。
つまり大宮にとっては、カンフル剤注入の効果が顕著な両大阪勢と争う構図では厳しい。できれば現在勝点33で12位の鹿島、13位の神戸までをも巻き込みたい。両者ともここ8試合で2勝2分の勝点8しか稼げていない。鹿島は前節マルキーニョスが退場して10人になった横浜FMに手痛い敗戦を喫し、神戸に至っては3連敗中と、調子は下降線を辿っている。柳下正明監督に命運を託した新潟も必死で食らいついてきているし、最終的に残留ラインが40を超えるようなことになれば、この2チームが降格することも現実味のない話ではない。
今節、鹿島の相手はG大阪、神戸の相手はC大阪。大宮としては、下位を引き離すにしても上位を引きずり込むにしても、横浜に勝利することが第一条件となる。
その大宮だが、前節、相手に退場者が出て10人になったとはいえ札幌から後半だけで5点を奪って勝利したことで、チームは勢いに乗っている。「連勝したことによって選手たちが自信を取り戻し、トレーニングにも集中力高く臨んでいる」と、ベルデニック監督も手応えを口にする。特に指揮官にとっては、ノヴァコヴィッチのハットトリックはもちろんのこと、今までケガや代表招集でなかなかコンディションが上がらなかったズラタンが本格的な稼働体制に入ったことが大きい。27日のゲーム形式の練習では、「どの選手の組み合わせが良いかを確認するため」(ベルデニック監督)多くのポジションで選手を入れ替えながら行ったが、ズラタンは4本すべてで左サイドのMFに入った。札幌戦でもズラタンの飛び出しから得たPKが大量得点の呼び水になったように、「動き出しとスピード、その中での技術が彼の良さ。そこから自分でシュートを撃つこともできるし、フリーの味方にパスも出せる」(ベルデニック監督)と、トップに入るノヴァコヴィッチ、東 慶悟とともに攻撃の切り札として期待をかける。
一方の横浜FMは第23〜25節と3連敗していたが、前節は中澤佑二と栗原勇蔵の日本代表級センターバックコンビをケガで欠いた上に、攻撃の大黒柱マルキーニョスが退場して10人になるという逆境をはねのけて鹿島に勝利した。それも熊谷アンドリューや小野裕二ら若い力の活躍でつかんだだけに、こちらも低調な流れを払拭するには十分な勝利だ。マルキーニョスは2試合の出場停止処分となったが、ワントップに小野が入り、ボランチの兵藤慎剛を一列上げることでカバー。中澤と栗原も復帰し、ノヴァコヴィッチの警戒に当たる。この日本代表級センターバックと、元スロベニア代表にして昨季のブンデスリーガ得点ランキング3位FWとの対決は見物だ。
大宮としては、前述したように何としても勝たなければならず、引き分けOKの戦いはできない。横浜FMとの対戦成績は6勝7分2敗、ホームでは2勝5分と負けなしだけに、大宮としては攻めて勝点3を手にしたいし、横浜FMはある程度引いてカウンターをねらうのが得策か。中澤、栗原の中央は高くて堅いため、「シンプルなクロスでは難しい。コンビネーションで崩していく」(下平 匠)必要がある。ノヴァコヴィッチとズラタンを軸に、東、カルリーニョス、そこにボランチや下平がからんでのコンビネーションでゴールに迫りたい。横浜FMは鹿島戦の後半同様に、前線での小野の奮闘次第か。中村俊輔ら中盤にパスの出し手はそろう。広範囲に動き回って、スピードに欠ける大宮の最終ラインの背後で起点を作りたい。左サイドにはドリブラー齋藤 学もおり、大宮はそこにケガで戦列を離れていたスピードのある右サイドバック渡部大輔を当てる可能性もある。
両者は春にリーグ戦、ヤマザキナビスコカップのグループリーグで2試合を戦い、ともに1−1で引き分けている。横浜FMの樋口靖洋監督は2008年に大宮を率いていたが、その年に大宮でプロ入りした青木拓矢は、「春には怖さを感じなかったけど、コンディションも上がり、樋口さんの戦術も浸透して、今回は怖さがある。そんな樋口さんのチームと戦うのは楽しみ」と語る。ただ、「それよりもとにかく、勝ちたい気持ちが強い」と、残留争いという厳しい現実の前に、かつての指揮官との邂逅というドラマに酔う暇はないことは、青木もよく分かっている。今節は、以後の残留争いの様相を決する特別な日。他会場の経過とともに、手に汗握る一日になりそうだ。
以上
2012.09.28 Reported by 芥川和久
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