広島の歴史は、またも佐藤寿人によって塗り替えられた。1994年、イワン・ハシェックが打ち立てたシーズン最多得点のクラブ記録19得点を18年ぶりに更新。ちなみに20得点は、2009年の前田遼一以来3年ぶりの快挙だ。
磐田戦で18点目を記録して以降、佐藤は2試合ゴールがなかった。だが、ここまで3試合連続ノーゴールは1度もなく得点を積み重ねている今季の彼を考えれば、鳥栖戦での爆発は予想できた。しかも仙台戦・名古屋戦共にゴールはなくとも得点には絡んでいる。今週の練習では居残り練習を行うなど、体調の良さは明白。準備は整っていた。
その佐藤が牽引する広島の前に立ちはだかるのは、J1最強の盾=鳥栖。ただ彼らの守備に対する唯一の不安材料が、右サイドバック・丹羽竜平の出場停止だ。代役として抜擢された岸田翔平の潜在能力は高いが、守備は経験がモノを言う。J初出場の特別指定選手が担う鳥栖の右サイドは、広島にとって狙い所だった。
そのやり方は念入り。まず自らの右サイドを中心にボールを集め、鳥栖のブロックをボールサイドに寄せることで左サイドの清水航平をフリーにさせた。しかも、何度かボールを受けた彼の選択はクロスで縦には仕掛けない。もちろん、これはいわば撒き餌の一つ。「クロスもある」と見せることで、最大の武器である突破の威力を増幅させた。
30分、森脇良太のクサビが森崎浩司の足下に。この時も鳥栖の守備はボールサイド=左サイドに集中し、清水はまたもフリー。その瞬間を見逃さなかった森崎浩のパスは、清水に対して「今だ、仕掛けろ」のメッセージ。勢い込んでボールを受けたアタッカーに、スイッチが入った。
対応が遅れた岸田は、ペナルティエリアで清水との1対1の局面で切れ味鋭い切り返しについていけず、滑り込んでしまう。フリーとなった清水、右足を強振。キム クナン、赤星拓、さらに呂成海が触ってもなお、元インターハイ得点王の強烈なシュートはゴールを陥れた。清水の2試合連続得点は、広島にとってはまさにプラン通りのゴールだったと言える。
その4分後、佐藤がハシェックに並ぶ瞬間がやってくる。清水のサイドチェンジを磯崎敬太がカット。だがそのセカンドボールに対して、石川大徳が猛然と走り込む。先にボールに触ったのは磯崎、次の一歩で石川の身体が前に出る。交錯。転倒。その瞬間、副審の旗がめまぐるしく回り、主審はPKを宣告した。
騒然とする場内。微妙な判定を巡って鳥栖が抗議を続け、約2分間も試合は中断した。しかしその間、ストライカーの集中は途切れない。笑顔を見せるほど落ち着き払ったストライカーは、GKが絶対にとれない場所に叩き込んで今季19点目。サポーターの喝采が偉大なエースに降り注ぐ。
後半、鳥栖は前線からのプレスを強め、リスクを冒しても勝点を奪いにいく決意を示す。53分、池田圭が至近距離からシュート。森脇のブロックの前に跳ね返されるも、鳥栖の意識はさらに前へ、前へ。だがその裏に存在するリスクを、森崎浩と佐藤、二人のベテランが見逃さない。
高くなった最終ラインの裏へ、森崎浩がループパス。呂が一度はカットするもボールは流れ、そのままゴール方向に。奪ったのは佐藤だ。GKを冷静にかわしてキープすると、マイナス方向へのパス。走り込んだ森崎浩が丁寧に押し込み、決定的な3点目を決めた。
アディショナルタイム、水沼宏太の鋭いクロスを豊田陽平がねじ込む。だがその直後、またも佐藤が魅せた。ミキッチのロングパスで裏をとり、前に出てきた赤星の頭上を抜いての20点目。美しい放物線がネットに吸い込まれるまで約1.2秒。サポーターは歴史が変わるその瞬間を、ゆっくりと味わった。
鳥栖にとって今季2度目の4失点。だがその時は0-4から3-4と浦和を追い上げており、ここまでの敗戦は全て1点差。3点差をつけられての完敗は初めての経験だ。だが、それでも最後まで諦めずに走り続けた姿勢こそ、躍進の要因。その「らしさ」が継続される限り、鳥栖はこれからも上位で闘い続けるだろう。
一方、スコア上での完勝にも関わらず、広島・森保一監督や選手たちに悔しさがにじむ。最後の最後、鳥栖の執念にこじ開けられた悔しさ。佐藤の偉業達成の一方で、千葉和彦は「失点が余計。僕らの課題」と表情をこわばらせた。2位仙台と勝点5差。だが森崎浩は「まだ5ポイント差」と気持ちを引き締める。指揮官に「一戦必勝主義」を叩き込まれた選手たちは、初タイトルに向けてまだ「小さな一歩」を踏み出したにすぎないことを、知っている。
以上
2012.09.30 Reported by 中野和也
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