前節の栃木は首位・甲府を相手に善戦しながらも、最終的には1‐2で競り負けた。悔しい敗戦を喫してからおよそ一週間、誰もが消化できない思いを抱え込んだ。松田浩監督も例に漏れず、甲府戦後の2日間は心が厚い雲で覆われ、スッキリしない日々を過ごしたという。
ようやく、その憂さを晴らせる機会がやってきた。今節、グリスタに迎え撃つ相手は4位・京都。台風の影響により消化試合が1試合少ないとはいえ、9位・栃木との勝点差はわずかに5である。プレーオフ進出に向けて残り試合数を考えれば、京都との直接対決で勝点3が必要になることは言うまでもない。負けられない、と思えば、当然ながら重圧が掛かってくる。人間である以上、それはごく自然な現象である。問題は、いかに重圧を手なずけるか。その方法のひとつを、松田監督はこう提示した。
「この状況をありがたい、と思ってやること」
終盤まで昇格争いに身を置けるチームは限られ、現況は望んでも簡単には手に入れられるモノではない。だからこそ、今、この状況に感謝して楽しまなければ損である。「緊張感を持って試合が出来ていることに喜びを感じ、ギリギリの戦いを1試合でも長くやれるようにしたい」とは大和田真史。甲府戦の最大の反省点は、外的要因に影響を受けて怯んだこと。それにより栃木のサッカーを90分、表現できなかった。やりたいことをやり切れないまま試合が終わることほど悔しいことはない。栃木のサッカーを貫徹できるように、気を緩めることなく、かといって過緊張に陥ることなく、いわゆるゾーンに精神状態を持ち込みたい。今季のテーマのひとつであるメンタルコントロールができるか否かが、大一番での勝敗の鍵を握ることになるだろう。昇格争いに絡めている現状は、間違いなく自分達で作り出した。これほどワクワクする状況を楽しまなければ絶対に損だ。
「こっちが先手を取れれば相手が疲れるだろうし、逆に相手が先手を取ればこっちが疲れるゲームになる」
ポゼッションと前線からのハイプレスを軸とする京都との一戦を、松田監督はそう展望する。栃木が主導権を握るためには定石である3バックの両端、1ボランチの両脇のスペースを突くことはもちろん、変則的なシステム故に生じるギャップを見逃さずに使うことが求められる。京都は攻撃的な陣形だけに、後手に回れば綻びが目立つ。上手くハイプレスを掻い潜り、2トップに攻撃のスイッチとなる縦パスを入れ、高速カウンターを発動させたい。そして、フィニッシュのシーンでは精度と質をとことん追求したい。仕留め損ねた甲府戦の失敗を京都戦で生かさなければ、高い授業料を払った意味が無くなる。
栃木の選手の背中を取り、ギャップに入り込みながらパスを繋ぎ、その間に2列目から果敢に追い越しをかける。絶好調の中村充孝を筆頭に、技術に優れた中盤が機能すれば、京都の勝機は一気に高まる。35節の水戸戦では堅固な守備ブロックを突き破り4ゴールを叩き出したが、果たして水戸以上に堅牢な栃木の守備ブロックを崩せるのか。ここまで京都が積み重ねてきたモノが試されるはずだ。4連敗後に2連勝を飾り、勢いそのままに自動昇格圏内へ突き進みたい京都。消化試合がひとつ少ないアドバンテージを生かし、2位・湘南にプレッシャーをかけるためにも、栃木からの勝点3が必要不可欠になる。
確たるスタイルと独自のサッカー哲学を持つ、松田監督と大木武監督。圧倒的な機能美を誇る組織的な守備からのカウンターか、それとも華麗なパスサッカーか。両監督のサッカー観が激突するこの一戦は、興味が尽きないし目が離せない。
34節は岐阜に、そして36節は甲府に敗れた栃木だが、他チームも躓いたことで6位との差は大きく開いていない。そう考えれば、栃木にはまだまだ運が残されていると言える。だが、このあたりでプレーオフ進出ラインに肉薄しておかないと、肝心のプレーオフまでに運が突きてしまう。他所の足踏みに付き合うことなく、勝点3を積み上げることで、6位と7位の間にあるラインを越えていきたい。
以上
2012.10.06 Reported by 大塚秀毅
J’s GOALニュース
一覧へ【J2:第37節 栃木 vs 京都】プレビュー:組織的な守備からのカウンターが武器の栃木か、それとも華麗なパスサッカーの京都か。自分達のスタイルを貫き通し、栃木は直接対決を制したい。(12.10.07)















