試合開始と同時に、ふとゴール裏のカメラマンの数が気になった。サンフレッチェ広島GK西川周作の後ろには4人、横浜FMのGK榎本哲也の裏には約20人が座っていた。多くのカメラマンが、佐藤寿人を擁する首位・広島のゴールを被写体として狙っていたのだろう。しかしながら、この試合ではそのシャッターチャンスは訪れなかった。
とりわけ前半は“静かな”印象を受けた。シュート数は横浜FMが3本、広島が2本、決定機の数はお互い「0」という数字もそれを物語る。
試合の序盤からお互い慎重で、両チームともブロックを敷いて臨んだため、重心が後ろにかかり、攻撃の際に迫力が足りない。また、広島は普段通り、スペースと作ろうとパスを回すも、横浜FMはその誘導に乗らない。
「相手は特殊な攻撃をしてくる。ボールへ食いついて空けちゃうより、逆に動かないことが大事。相手もスペースを空けるために、ああいう繋ぎ方をしていると思うので」
広島仕様の守備について、そう解説したのは、ボランチの中町公祐。よって、広島の攻撃の生命線である2シャドーが、バイタルエリアで前を向いてプレーするスペースがなく、攻撃は消化不良。
横浜FMは守備ではプランどおりだったが、その分、両ボランチが2シャドーの見張り役に専念するため、攻撃の厚みを出せずにいた。そして“静かな”前半が終了。後半勝負の様相を呈した。
後半の頭から、お互い攻撃のギアが入る。まずは横浜FM。48分、齋藤学が後方からのパスを受け、相手DFに競り勝って抜け出し、GKと1対1の絶好のシチュエーションに。しかしシュートを右へ外す。4分後には広島が反撃。左からのクロスを佐藤らしい裏への抜け出しからゴール至近距離でヘッド。だが、GK榎本の驚異の反応に防がる。お互い決定機を逃すも、試合は「静」から「動」へとシフトチェンジしてきた。さらに広島は動きを出そうと、右サイドの縦槍、ミキッチを58分に投入。右からのクロスが上がり出した広島が、有利に試合を運ぶかに見えた。
しかしその矢先、横浜FMがカウンターからPKを獲得。キッカーはその際、ドリブル突破を図り、倒された小野裕二。ところがシュートは、無情にもバーの上へむなしく飛んだ。これを境に横浜FMの攻撃は沈黙。逆に終盤は「寄せが甘かったり、クロスの対応が悪かったりという場面があった」(中澤佑二)ため、再三ピンチを迎える。48分には中央突破した石原直樹のシュートを、青山直晃が体を投げ出してブロック。その直後にも青山は、相手の危険な縦パスを鋭いタックルでクリア。出場停止で不在の栗原勇蔵の穴をカバーする働きを見せていた。
試合後、広島の選手たちは「アウェイで引分けでも良し」と、凛とした態度で囲み取材に応じていたのが印象深い。どの選手も同じ方向を向き、ブレがない。首位の貫録がそこにはあった。
一方、横浜FMで誰よりも多くの記者に囲まれたのが小野。虚ろな目、声の語気は弱いが「自分のメンタルの弱い部分が出てしまったからだと思います」と、PK失敗を真摯に受け止めていた。まだ19歳、この経験は決して無駄ではない。
以上
2012.10.07 Reported by 小林智明(インサイド)















