東京クラシックの“第一楽章”は静かな調子だった。FC町田ゼルビアは「守備から入ろう」(下田光平)というゲームプランで、立ち上がりはロングパスを多用。FW北井佑季を盛んにDFラインの背後へ走り込ませる。「DFラインを下げさせて、中盤との間にスペースを作る」(北井)という狙いがある程度まで奏功していた。決定的なチャンスがあったわけではないが、試合の流れは町田の意図したとおりだった。
前半も残り10分に至った頃から、ようやく試合が温まる。“超”のつく決定機は前半のアディショナルタイム。東京Vは中後雅喜がリスタートを右サイドに出し、森勇介は浮き球で折り返す。高橋祥平がファーから放ったヘッドはGK修行智仁の指をかすめてバーに跳ね返った。更に飯尾一慶がこぼれ球に詰めた“2発目”のダイビングヘッドは田代真一がブロック。中島翔哉が“3発目”を左足で狙って、イ ガンジンにクリアされる。町田は波状攻撃をしのいで、8/22の鳥取戦以来7試合ぶりに前半を無失点で終える。
東京Vは猛攻の勢いそのままに、後半開始から優位に試合を運んだ。49分にはアレックスが右クロスからヘディングを合わせ、GK修行のブロックしたこぼれを飯尾がエリア左にラストパス。土屋征夫が狙ったシュートは、惜しくも枠の上に外れる。東京Vが攻撃の厚みとアイディアを見せた先制点は50分。アレックスが右へ開き、西紀寛が縦にドリブルで抜けると、アレックス、飯尾、中島の3人はエリア内に走り込んでいた。しかし西の選択はボランチの位置から飛び出していた梶川諒太。「西さんが良いボールを入れてくれたので、決めるだけでした」(梶川)というマイナスのクロスを、梶川は右足のボレーで流し込んだ。
東京Vは57分にも中島のシュートで決定機を迎えるなど、2点目も時間の問題と思われる流れだった。これを食い止めたのが東京V育ちで、今季から町田に加入した平本一樹。「中盤にスペースが空いていたから、前を向いて勝負しようと思っていた」という思惑どおりに、平本が果敢な仕掛けを繰り返す。東京Vの飯尾は「前がかりになってくることへの対応で焦りが出てしまった」と分析し、ベテランCBの土屋は「少しボールが相手にわたりだしたところで、1人1人がもっと考えて、どういう時間帯なのかを意識しながらプレーしなければいけない」と反省する。「平本が入ってからとその前とでは、違いを感じました」(アルディレス監督)という町田が、東京Vを受身に立たせた。攻守の構図が、入れ替わり始める。
75分にはその平本が、挨拶代わりの初シュート。83分にはパワフルなドリブルで土屋のイエローを誘う。本日最大の殊勲は84分のPK奪取だ。田代のロングフィードから平本が右サイドに抜け、エリア内へ切れ込む。「左利きの選手だったので、中に行かれないように警戒した」という中後の思惑と逆に、平本は縦へ切れ込んだ。中後は足を出してしまい、痛恨のPK献上。町田にとって今季のリーグ戦で初となるPKは「取っても蹴らないというのが僕のポリシー」という平本でなく、ディミッチが狙って成功し85分、町田は同点に追いつく。
東京Vが87分に長身FWジミー フランサを投入すると、町田はすかさず88分にCB 薗田淳を起用し3バックに切り替えた。すると東京Vは89分、スピードのある木島良輔を起用する。しかしベンチワークの応酬では試合が動かず、味スタに8,645名が来場した東京クラシック第2弾は、1-1でタイムアップを迎えた。東京Vはリーグ戦3試合連続となる引き分けで、プレーオフ圏外の7位に落ちてしまった。町田も21位・富山が鳥取を下して20位に浮上し、上位との勝点差を縮められず。しかし「これで負けていたらゾッとしますね」(平本)という試合を終盤の粘りで追いつき、最低限の勝点1を手に入れた。
以上















