「ホーム連戦(徳島、湘南)を連勝すれば文句なくJ1昇格決定」という場所までたどり着いた甲府。あっさり連勝するのか、ここから苦しむのか、両極端な予感が頭の中を巡ったが、芯の部分では(大丈夫)という思いがあった。
第1クールの対戦時よりも前線のパワーが増している徳島は、甲府のスカウティングに反してシンプルにクロスやロングボールをツートップのドウグラス、ジオゴに入れてきた。そして、それは効果的だった。3分にはドウグラスのヘッドのチャンスに、ジオゴが後ろから味方潰しヘッドを被せてくるという気合入り過ぎのシーンもあったが、2人の強さは効果的に発揮されていた。ここで徳島が決めていれば甲府のゲームプランを崩すことに成功したかもしれない。25分には長い縦パスの処理を津田琢磨がミスして、それを拾ったドウグラスが決定機を迎えた。しかし、前に出るGK・荻晃太の後ろから津田がカバーに戻ってドウグラスのシュートを身体で防いだ。甲府の30代センターバックコンビ(津田、盛田剛平)は、大きなフィジカルアドバンテージが有る訳ではないが、正確な判断とカバーリングの粘りと根性で「守備の安定感」をモノにしている。甲府にはケガから復帰したばかりのドウグラスというディフェンダーがいるので、徳島のFWドウグラスと甲府のDFドウグラス対決を公共放送NHKとスカパー!のアナウンサーがどう実況するのか聴き比べをしてみたかったが、こっちのドウグラスは、今は津田と盛田のコンビに割り込めない。
サッカーは最初から最後まで90分間一本調子では戦えない。徳島が決めきれずに徳島タイムのターンが終わると、フェルナンジーニョが主役の甲府タイム。徳島の強度にも慣れてきて甲府らしさが出始める。フェルナンジーニョが諦めずに走って徳島陣内の右サイド深くで拾ったボールを起点に、福田健介がペナルティエリア内からダヴィにつないだマイナスのボールが永里源気に渡ってシュート。体勢が悪かったダヴィがスルーすると思っていた永里は、ワンタッチで打つ入り方をしていたがダヴィがトラップして「びっくり」だったそうだが、打てないと判断したダヴィが出したボールをファーストタッチでターンしてシュートを打つスペースを作って決めた「巧いゴール」。「流れが良くてあとは点を取るだけの展開だったけれど、取れなかったら苦しい流れになっていたと思う」と永里がいうように、このゲームの主導権が甲府にあることを徳島に見せつけた32分の先制ゴールだった。
39分にはダヴィが右サイドで粘って上げたセンタリングを、ペナルティエリアに走り込むスピードとタイミングを調節していたフェルナンジーニョが合わせてワンタッチシュートで追加点。攻撃の起点となり貢献度は高かったものの、なかなかゴールが決まらなかっただけにみんなが喜ぶゴールとなった。記者席の後ろにあるファミリー席に座っているブラジル人選手の家族軍団もサンバを踊りそうな勢いで大喜び。40分には徳島が1点を返したかと思うゴールがあったがオフサイド。甲府が2点リードで迎えた後半、50分に山本英臣のクロスをダヴィがヘッドで決めて3−0と甲府が着実に勝利の可能性を高めていく。ただ、直近の2節は劇的な勝利が続いていて、安定した勝利を迎えそうな展開を楽しむことに慣れていない。ピッチもそうなのかもしれない。柏好文はゴールブームに乗ろうとして積極的というかいつもより強引にゴールを狙いに行っているのに対してフェルナンジーニョはちょっと運動量を落としてウォーキング。記者席の後ろのブラジル人家族軍団も競った展開だとポルトガル語でダーリンたちを叱咤激励しているのだけど、3−0になってからは「リッキー・マーティンはどうしたのかしら」なんて、主婦の雑談という感じの会話のテンションだった。
徳島は両サイドバックをベンチに下げ、FWを1枚増やして3バックにしてより攻撃的になっていて、(1点くらいは返されるかも)という予感の働く流れだった。甲府の選手が手を抜いたり気持ちが入っていないわけではないが、主導権を取っている流れで3−0というスコアになればどうしても安心感は出てしまう。心で動く人間がプレーしているのだからシーソーが少し動くことはありうる。徳島が素晴らしかったのは、0−3でも気持ちを切らさずにもう一回リセットして挑んだこと。ハーフタイム、ロッカーに戻ってくるときは負けたような表情をしていた選手もいたが、選手交代でリセット出来たのだろう。66分のゴールはCKの流れから混戦の末に甲府の オウンゴールになったので「???」って感じで、よくわからなかったがこの1点が徳島の選手の気持ちを引き止めた。甲府はダヴィを下げて高崎寛之を投入した直後の失点だったので「ダヴィがいないと…」と言われそうだが、容認できる失点でもある。
甲府はトドメになる4点目を狙っていたったが、前線にボールが収まる回数が減ってシュートも減った。85分に徳島のDF橋内優也がレッドカードで退場になり、甲府が戦いやすくなるかと思われたが、その3分後にゴールを決めたのは徳島。88分で3−2と、スコだけ見れば好ゲーム。甲府から見れば、3点リードしながらも1点差に追い上げられてしまったのだが(このまま勝てるだろう…)と妙に安心感のある雰囲気でもあった。4分間のアディショナルタイムには徳島のFWドウグラスが2枚目のイエローで退場になり、ピッチ内は妙に盛り上がってしまったが甲府がきっちりと勝点3を積み上げた。これで甲府は次節、ホームで湘南に勝てば自動昇格の2位以内が決まる。05年の昇格は3位に最終節で滑り込みで入り、入れ替え戦に勝って昇格し、10年は2位で昇格。今回は優勝で昇格というカウントダウンに入った。もう、次節の湘南戦は山梨中銀スタジアムを満員にしてライバル湘南を迎え撃つだけ。
徳島は去年は最終節まで札幌と昇格を競い合った末、アウェイで岡山に敗れて昇格を逃した。多くのことが変わった今年はリスタート。
「やっぱり最後まで昇格争いに絡んで戦いたい。去年は本当に楽しかった。今年は少し気持ちが沈みそうになる部分はある。でも、小林(伸二)監督はどんな状況でも熱く引っ張ってくれるので、まずは天皇杯・川崎F戦で徳島をアピールしたい」という三木隆司。チームは徳島に帰らずに神奈川県内に残って天皇杯の準備をする。最後まで応援してくれるサポーターのためでもあり、来年に向けて自信を高めるためにも川崎F相手に、徳島のストロングポイントを出さなければならない。
以上
2012.10.08 Reported by 松尾潤















