10月の札幌市内の夜はもう肌寒く、この日の厚別競技場もとても寒かった。前後半90分と延長戦を含めて120分。さらにPK戦はGKを含めて両チームの11人全員が蹴るという、まさにフルコース。体は完全に冷え切った。だが、グラウンド上で行われていたのは、双方の特徴がハッキリと表れた好ゲーム。熱戦と呼ぶにふさわしいものだったのだ。
2回戦で札幌を下したAC長野パルセイロ(以下、長野)は、しっかりパスをつないで攻めるチーム。後方からサイドバックも絡めながらビルドアップを行い、アタッキングサード付近では向慎一を中心に前後にパスを動かして相手守備を崩していく。宇野沢祐次のドリブル突破もアクセントとしながら、チーム全体がボールに関わりながら攻め上がっていく攻撃的なスタイルだ。
一方、F東京を撃破して勝ち上がった横河武蔵野FC(以下、武蔵野)は、全員で粘り強い守備をするチーム。攻撃時には中盤をダイヤモンド形にして攻撃に変化をつけていくが、基本的にはスリーラインを作って相手を跳ね返していた。少なくとも2回戦のF東京戦とこの試合においては、そういう戦い方を徹底していた。まずは失点をしないこと、そのプランがハッキリと見てとれる。
率直に言ってしまうと、チームとしてのクオリティはJFL2位の長野のほうが同13位の武蔵野よりも上である。実際に武蔵野の遠藤真仁が「長野は強いので、相手をリスペクトしたうえで、しっかり守備から入ろうとみんなで話していた」と口にしていたし、勝利を決めるPKを蹴ったGK藤吉皆二朗も「押し込まれるのはわかっていた」とストレートに振り返っている。
こうして武蔵野の選手本人たちが認めるように、チームとしての質や成熟度では長野が上回っていた。だが、それを埋めるべく見せた武蔵野の体を張ったプレーは賞賛に値するものだった。空中戦では臆することなく飛び込んでいくし、セカンドボールを拾うことよりも、常にファーストボールに強くいく。ボール保持者に対しても常にハードに当たる。そうやって見事に勝利を手にしたのだ。
サッカーにおいて、パスをつないで攻めるチームというのは得てして、それを邪魔するハードなフィジカルコンタクトを嫌うもの。この試合でも多くの時間を長野がパスを動かして戦っていたが、そうした接触プレーを重ねていくにつれて、少しずつではあるが、パスワークがぎこちないものになっていった。バイタルエリア付近でなかなかアイデアを出せなくなってきたのである。なるほど、同じようにパスをつないで戦うF東京が武蔵野に苦戦したのもうなずける。
そうして立ち上がりから非常に守備意識の高かった武蔵野だが、その要因は相手が長野だったからだけではなかった。4日前に戦ったリーグ戦の対Honda FC戦で0−7というスコアで大敗しており、「その反省から、この長野戦ではしっかり守備をしようと思っていた」(遠藤)のだという。サッカーの試合展開や結果には、さまざまな要因が存在しているものである。
いずれにせよ、そうして武蔵野が延長戦も含めた120分を無失点で守り切っている。チームとしての狙いを着実に遂行したという意味では、武蔵野が最終的な勝者になったというのは内容を反映した妥当な結果だと言っていいのかもしれない。
3回戦唯一のJFL勢同士の対戦は、武蔵野が勝利し、4回戦への切符を手にしている。次のラウンドでは再び、Jクラブにチャレンジすることになる。
以上
2012.10.11 Reported by 斉藤宏則
J’s GOALニュース
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