「リーグ戦と使っているボールが違う。それで少し強めに蹴ることを意識してカーブをかけた」
FK職人、中村俊輔らしい言葉。天皇杯仕様のボールにアジャストさせて蹴った2発で、試合を決めてしまった。
特に度肝を抜かれたのが、25分の1点目。ゴールからの距離は約25m。シャープに左足を振り切ると、ボールは壁を越えて左ポスト下を叩き、ネットイン。その刹那、相手GK関憲太郎は、猛烈なシュートスピードによるブレ球に躊躇したのか、一歩も動くことができなかった。48分の2点目は、コースはそれほど際どくなかっただろう。ただ、1点目とは逆の右上へ蹴る駆け引きにより、関は一瞬遅れてダイブしたため、間に合わなかった。
約5年ぶりの「横浜ダービー」という晴れ舞台。しかし、3日前に試合を終えたばかりの横浜FCは、やはり盤石な状態で臨むのは難しかった。7日のリーグ戦からGKを含めて、9人のメンバーを入れ替えた。片や横浜F・マリノスは、13日のリーグ戦のスタメンから1人を変更しただけ。しかもその一人は公式戦3試合ぶりの出場となるマルキーニョスだ。
よって、個の能力の差がくっきり出た。マルキーニョス、小野裕二、齋藤学がボールを持つと、横浜FCは一発でボールを奪い切ることがなかなかできない。1人に対し、2人がドリブルに引っ張られてやっと防ぐという状況が続く。必然的に序盤から横浜FMがペースを握る。しかしながら、流れの中から得点できず、横浜FCへ引導を渡すことはできなかった。
一方、多くの時間帯を、劣勢の中で過ごしていた横浜FC。だが、守備が決壊することなく、4−4−2のスリーラインをきれいに保ち、ボールを奪うまではある程度「狙いどおりだった」(山口素弘監督)。
15分を過ぎからは単発ではあるが、小気味いいパスワークも見られ、右サイドを起点に攻め出す。29分に小野瀬康介が左足ミドルでゴールを強襲。GK榎本哲也の横っ飛びに弾かれた。58分には途中出場、カイオのFKが渡邉将基の足に当たり、シュートの軌道は直線から曲線へ。弧を描きながらゴールへ吸い込まれ、横浜FCが1点差に追いすがる。
後半、横浜FMは少なく見ても5本は決定機があっただろう。青山直晃がFKから放ったヘッド2本、終盤マルキーニョスがゴール前で放ったシュート2本(1本はポスト)などがあったが、決めきれない。
「流れの中で3点目を決めておかなかったことからも、相手にイケると思わせてしまった」(中澤佑二)。
それが試合を面白くさせてくれた理由と言える。横浜FCのシュート数は後半だけで8本。この日のメンバー構成、J1の中堅相手ということを考慮すれば、この数字は悪くない。「自分たちがJ2で(自動昇格できる)2位に入れば、来年また同じ舞台で(横浜FMと)戦える。今はそれを一番の目標にしている」(大久保哲哉)。来年、同じ条件下で戦う“真”の「横浜ダービー」を見ることはできるだろうか。
以上
2012.10.11 Reported by 小林智明(インサイド)
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