「サッカーをやっていれば、やはりこういうゲームというものはあるものだなと感じました」。ひとつ上のカテゴリーであるJ1の仙台を撃破して、熊本の高木琢也監督は率直な感想を述べた。
熊本にとっては、2006年の天皇杯3回戦、そして2008年と2009年のJ2における6度の対戦を経て、これが仙台に対する初勝利。2011年に熊本でプロ生活をスタートさせた齊藤和樹にその話を振ってみると「新しく記録に残る結果を出せて良かった」と返ってきた。
そして齊藤は「今、自分たちが取り組んでいるスタイルに自信を持って続けていきたい」と、これからのJ2や天皇杯に向けた意欲をコメントした。熊本にとってこの歴史的勝利は、現在の戦い方にリーグ戦での勢いを加えたところから生まれていた。
熊本はJ1の仙台に挑むにあたって、特別に仙台の長所を消すような戦い方はしていなかった。7日のJ2前節から中二日の準備期間で高木監督は「コンディションを戻すこと、あとは『普段やっていることをやるしかないんじゃないか』という話をしました」として選手たちをユアテックスタジアム仙台のピッチに送り出した。
仙台は6日のJ1第28節から先発メンバーを7人入れ替えていたが、サイドから熊本の守備組織を崩す力は持っていた。しかし熊本は「普段やっていること」であるサイドでのコンビネーションとクロスで逆に仙台の裏を取り、チャンスを作る。「もっと積極的に仕掛けたかったが、自分たちのペースにならず、入りが悪かった」と仙台の渡辺広大は後に反省した。シュート数は前半終了時点で7対2と仙台優勢だったが、スコアレスのまま試合は進んでいった。
そして48分に試合は動く。熊本の右サイドバック・藏川洋平からのクロスを仙台DF鎌田次郎が処理ミスしたところに、齊藤が飛び出してシュートチャンスを迎えた。背番号17はこれを確実に決め、熊本が先制した。
仙台も太田吉彰と中原貴之という攻撃のカードを62分に同時に切り、攻勢を強める。前半はなかなか拾えなかった中盤でのこぼれ球を拾って前への圧力を強めて、62分にセットプレーの流れから渡辺が太田のクロスに合わせて同点に。なおも攻め立てるが、組み立てでミスが続いたこと、そして熊本が養父雄仁と原田拓のボランチも気の利いたカバーを見せてサイドの守備を引き締めたことから、追加点は奪えず。試合は延長戦にもつれた。
延長戦は次第に互いのサイドのスペースが空き始めるオープンな展開となったが、ここで試合交代のカードを残していた熊本が勝負に出た。高木監督は「仙台さんのサイドの選手のキレが悪くなっていたので」と、大迫希と田中俊一にサイドでの攻撃の仕掛けを要求してピッチに送り出す。この圧力も加わって、延長後半も終わろうとする119分、相手のサイドの戻りが遅れたところを齊藤が突いてクロス。走りこんできた養父がフィニッシュして、熊本が勝ち越した。
「流れをつかめないまま試合が終わってしまった」と桜井繁は反省した。天皇杯敗退により、仙台にとって今季の公式戦はリーグ戦の6試合を残すだけになった。J1優勝に目標を絞り、ホームで負けたこの日の悔しさを生かし、自分たちのスタイルをさらに磨いていくことが求められる。
一方の熊本は大きな自信を胸にシーズンの残り試合に向かう。養父は「自分の力がどこまで通用するのか試す場だと思うので、どんどんこういう相手と試合をしていきたい」と天皇杯でのさらなる勝ち上がりに意欲を見せるとともに、「これをリーグ戦でも続けて最後までいきたい」と、現在4連勝中のJ2での健闘を誓った。
大きな悔しさを味わったJ1のチーム。大きな手ごたえをつかんだJ2のチーム。対照的な表情を見せた両チームは、今季の残り試合でこの夜の経験を生かしていくことが求められる。
以上
2012.10.11 Reported by 板垣晴朗
J’s GOALニュース
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