今日の試合速報

開幕招待
開幕招待

チケット購入はこちら

J’s GOALニュース

一覧へ

【第92回天皇杯 3回戦 大宮 vs 福岡】レポート:渡部大輔、躍動! 大宮が苦しみながらも“鬼門”福岡を越える(12.10.11)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
一瞬の集中力が明暗を分けた。前半終了間際、大宮の右コーナーキック。クリアボールを拾った下平匠が、両チーム入り乱れる福岡ゴール前へ第二波を送る。利き足でない右足によるふわりとしたロビングに、第一波をはね返すまでは張り詰めていた福岡の緊張の糸が、一瞬緩んだ。選手はボックス内に数多く残っていたが、ラインを押し上げられず、人に付き直すこともできない。混戦の中、右足でトラップしながら振り向いた長谷川悠が身体を投げ出しながら押し込んだボールは河田晃兵の右を抜け、大宮が先制。「あのまま前半を0−0で終われていれば…」と、試合後、鈴木惇は唇を噛んだ。

天皇杯、大宮にとって“福岡”は鬼門だった。一昨年は当時J2のアビスパ福岡に延長後のPK戦で破れ、昨年は福岡大学と同じ熊谷陸上競技場で延長後PK戦敗退の失態を演じ、2年連続で下克上の犠牲者となっている。
三たびの下克上――前半、その雰囲気は色濃くはないが、漂うものはあった。立ち上がりは互いに守備では前線から積極的にプレスをかけたことで、攻撃ではロングボールを蹴り合う慎重な展開。次第に大宮が主導権を握って押し込む時間が長くなるが、ボールサイドに人数をかける福岡の守備をなかなか崩せない。22分、青木拓矢の縦パスから長谷川が振り向きざまにボレー。33分、渡邉大剛が中央で粘ったボールを受けた東慶悟がミドルを放つなど、シュートはいずれも遠いレンジからだった。
福岡も悪くはなかった。大宮に決定機は作らせていなかったし、防戦一方ではなく、攻撃にもある程度人数をかけることができた。成岡翔がフリーになる場面が目立ち、最終ラインの裏へのパス、あるいは自らペナルティエリア内に飛び込みチャンスを作ったが、最終的にシュートはこちらもミドルレンジが多かった。

互いにシュート数少なく、決定機を作れず、大宮が優勢ながら煮え切らない展開。このまま前半が終わっていれば、後半も0−0の時間が長く続いていれば、確かに試合はどうなったかわからない。下克上の起きそうな雰囲気を覆すに至ったのは、この日、久々のスタメン出場を果たした若武者の気迫だった。
44分、左サイドから下平のクロスがファーに流れたところに突っ込んだ渡部大輔が河田と競り合い、粘り、コーナーキックを勝ち取った。チームを救ったとまで言うと大げさだが、結果的に先制点につながったこの気迫のプレーは賞賛されてしかるべきだろう。

後半、福岡は開始から前がかりに圧力をかけ、59分には右コーナーキックから高橋泰のニアで合わせたヘディングがポストをたたいた。大宮は受け身に回ったが、「バランスが崩れてしまった」(鈴木)ところにカウンターを浴びせる。54分、左サイドで2人に囲まれながら粘った長谷川が東に股抜きパスを渡すと、スピード、カーブともに素晴らしい左足のクロスがゴール前に送られ、飛び込んだズラタンが突き刺した。
「リズムに乗りかけたところで失点してしまった」(前田浩二監督)、しかも2点差となったことで福岡の攻撃に目に見えて焦りが生じ、前線の動き出しと中盤からのパス出しがチグハグになった。59分に福岡は「背後のスペースをねらい、その動きで空いたバイタルエリアで仕掛ける」(前田)交代を行い、坂田大輔とオズマールの2トップに、石津大介が左サイドに入った。オズマールのスピードは大宮に脅威を与え、66分に菊地光将から北野貴之へのバックパスに猛然と詰めて1点を返すことに成功する。
勢いづく福岡。100人にも満たないがゴール裏から勇ましく「えいさー! ほいさー!」と山笠が後押しする。2匹目のドジョウをねらってバックパスに襲いかかり、さらに71分には大宮から期限付き移籍中のスピードスター木原正和を投入し、スピード勝負を仕掛けた。75分、76分とオズマール、坂田がペナルティエリア内でドリブル突破。78分には木原が右サイドでボールを奪ってドリブルからシュートを放ち、こぼれ球がファーに詰めていた石津まで抜けた。大宮はリードしているにもかかわらずバタバタし、オープンな撃ち合いに持ち込まれてしまった。あわやPKの場面もあったし、ここで追いつかれていればそのまま試合を持って行かれていたかもしれなかった。

しかしこの日、豊富な運動量で素晴らしい活躍を見せていた青木拓矢がいち早く落ち着きを取り戻す。福岡のプレスをいなすサイドチェンジから右サイドのズラタンがクロスを入れ、62分に長谷川に代わったノヴァコヴィッチの頭に合わせた。さらに80分に投入されたカルリーニョスが持ち前のキープ力と展開力を発揮してゲームを落ち着かせると、福岡の勢いが衰えた。前田監督の「下がるな! 下がるな!」との叫びも空しく、ボールを奪えないまま最終ラインがズルズル下がり、再び大宮に押し込まれる。そして87分、下平匠のクロスからペナルティエリア外でクリアを拾った渡部が突進し、シュートを放つ。DFの手に当たったようにも見えたボールがゴール左へ転がるが、渡部はハンドのアピールもせず、がむしゃらにボールに突っ込む。その勢いに気押された和田のクリアがゴール前のノヴァコヴィッチのほうに飛んでしまい、完全に勝負は決した。本人のゴールこそなかったものの、試合を動かしたのも、終わらせたのも渡部だった。

スコアで見るほどの余裕があったわけではないが、ともかく大宮は苦しみながらも鬼門を越えた。これでリーグ最終節が終わっても、まだシーズンは続く。しかし今は勝利の余韻に浸る暇はない。10日後には残留争いの大一番となる新潟戦が控えている。この試合で長谷川、ズラタン、ノヴァコヴィッチとFW3人がそろって得点したことは明るい材料。ただリーグ戦で、26節札幌戦では10人になった相手に5得点を挙げたが、その後2試合連続でノーゴール。11人そろった、同じカテゴリーのチームに対して、今日のような攻撃力が発揮できるのか否か。15位に付けているが、16位と17位が猛然と追い上げている現状では、守りきっての勝点1ではなく、攻めきっての勝点3を得なければならない。これからが正念場だ。

以上

2012.10.11 Reported by 芥川和久
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

旬のキーワード

最新動画

詳細へ

2025/12/21(日) 10:00 知られざる副審の日常とジャッジの裏側——Jリーグ プロフェッショナルレフェリー・西橋勲に密着